見出し画像

仏検読解問題の解き方(1)

読解問題の時、まず始めにやるべきことは2つ:

① 文末に補足の語彙があるかどうかのチェック。あれば、先に読む。
② 問題冊子からできるだけ目を離して全体を眺める。

それぞれについて、解説します !

1. 文末に補足の語彙があるかどうかチェック。

文末に補足されている語彙は、提示されている文を読む上でこの語がわからないと文全体が理解できない恐れがある、かつ、受験者の中には、この語を知らない人がいるのではないかと考えられる語となります。

文法学習的なレベルでなく、文化学習レベルにおいての差っていうのは読解には大きく作用してくる(例えば、同じ学習時間でも、日本で勉強するのとフランスで勉強するのでは語彙の数や種類に差が出る)ので、そこでなるべく不平等が起きないようにするための配慮なんですね。

ということはですよ、

補足されている語彙が、読んでいる文章のキーワードでっす!というネタバレ

なのです。だから、文末に補足語彙がある場合、そこをチェックすることで、「あ、武器の近代化の話だな」とか、「バイオテクノロジーの話だな」とか、話題がなんとなくわかるありがたーいネタばらし欄とも言えるのです。

まずはここをチェックすることで、真っ暗闇の洞窟に明かりなしで突入するところを、とりあえず手元にあるランタンで奥行きがどれくらいあるかぼんやり把握できるぐらいになることができるのです。

ちなみに、下の写真は2015年秋の2級の過去問をひっぱり出してきたのですが、語彙欄には「vétérinaire (獣医)」と「financement (融資)」が書かれているので、「動物の健康」と「経営」に関係した話題だな、と考えられます。実際、本文はトゥールに初めてできた「猫ホテル」の経営者の話でした!


2. 問題冊子を俯瞰して全体を把握

 まずは、会話文でない長文問題について見ていきましょう。

老眼ですか?と言われるくらい、問題冊子から視線をぐっと離して全体を眺めます。何が見えるでしょうか?

見えてくるのは、黒い文字の塊です。これをパラグラフ(段落)と言います。

これだけだとあまりにも乱暴な解説となってしまうので、パラグラフをきちんと定義すると、

文頭が字下げ(スペースがある)されており、途中に改行がない複数の文の集合体のことです。

実は、日本で言うところの「段落」と欧米の「パラグラフ」には結構な違いがあり、日本の「段落」よりも欧米の「パラグラフ」の方が、その構成が厳密に規定されています。その違いについては今は置いておいて、取り敢えずやることは、

パラグラフがどんな形をしているかを眺める

です。

上の写真の問題では、黒い塊が3つ見えます。パラグラフの読み方を知っていると、一つの文書を「眺める」だけで、パラグラフの数と個々のパラグラフの大きさから、その文書の構成(話の展開)を読むことができてしまうのです。

フランスで目にする一般的な文書というのは、だいたいが決まったパラグラフの構成を使って書かれています。特に、新聞記事、スピーチ、学術文書などは、きっちりした「形式」という型によって流れが決まっており、そのパターンさえ把握していれば、中身を読まずとも大体の流れを予測することが出来てしまいます。

例えば、上の写真から特徴を見てみると、

・3つのパラグラフに分かれており、
・最初のパラグラフの文量が多く、あとの2つはそれよりも少なく、
・また2つがだいたい同じ文量になっています。

ここから予測すると、

・最初の大きなパラグラフで何かの話題や問題についての概要が書かれており(多くが時系列での説明)

・後のパラグラフでは第1パラグラフで説明された話題・問題について、2つの異なる視点からの更なる考察や新たな問題提起、または提示された問題への解決策やアプローチなどが書かれている

と考えることができます。これが「読解のあたりをつける」という作業です。

パラグラフの流れのパターンというのはいくつもあるのでここに全部書くことはできないのですが、エコールに通われる生徒さんで仏検受験を目指している方は、様々なパターンを覚えて貰って、どのパターンに当てはまるかな?というあたりをつける練習をします。

これをやらずに本文に入るのと、「あたり」をつけて入っていくのでは、読むスピードが全く変わってきます!

最初は、そんなことしている間に本文読んじゃえばいいじゃん、と思われるのですが、本文の内容はそんなにシンプルではないですし、試験では辞書が使えないために、わからない語句が出て来てモザイク状になっているということを思い出してください。

読解で失敗する原因は、わからない語句があると、その語句を含んだ文を恣意的(自分勝手)に捻じ曲げて読んでしまい、どんどん道を外れてしまってしまうところにあります。

文章の要約として正しいものを選ぶというような問題の場合、誤解を重ねた読み手に「オイデ〜オイデ〜」している罠選択があり、藁をもつかむ思いの受験者はそれに引っかかってしまいます。

そんな時、パラグラフの流れを大まかに掴んでいれば、わからない語句があったとしても、全体の流れとして「これは有り得る」「これは展開としておかしい」という判断が可能になるため、そういった罠問題にもひっかかりにくくなります。パラグラフを見るのは、こういった読み違いをカバーするための一手間です。

練習して「あたり」の読みが実際に当たるようになってくると、本文を読み進めるのが楽しくなるし、地味に嬉しかったりするのです。学習では、こういった小さなシアワセを積み重ねるって馬鹿にできないのですよ!

たとえ「あたり」をはずして本文に入ってしまっても、大丈夫。第1パラグラフを読んでいる途中で次のパラグラフの展開は予測が付くようになりますから、読みながら修正していけばいいのです。別の機会に、「読解の修正作業」の大切さについても書きたいところですが...。

ごくたまに、書き手の癖が強く、言葉の選び方がトリッキーな文書だったり、話題がニッチ過ぎたり、身近になさ過ぎて状況を把握するのが難しかったりする出題があったりしますが (2017年1級の大問4がそうでした。むちゃくちゃ正答率が低かったのは、何がどうなっているのかを想像するのが難しい話題だった)、そういう場合でもパラグラフの構成はオーソドックスなパターンで書かれていたりするので、意味のわからない語彙によってマスクされてしまった結果、自分の把握が実際の本文とは少しずれていたとしても、大きい流れを読み外さなければ、惑わされることはありません。


さて、ここまで全体のざっくりとした把握ができたところで、いよいよ本文を読み始めるかというと...

まだ読みません!

次回は次のステップ「パラグラフの方向性を見極める」というのをやっていきます。

これ、パラグラフリーディングの手法ですが、ひっくり返せば複数パラグラフがある文書(小論文など)を執筆する際の手順にもなっていたりして、結構万能なんですのよ。

( ´-`)оO ( フランスから書籍・音楽・映画のネタを仕入れるのにありがたく使わせていただきます)