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ほんとうのリーダーのみつけかた

梨木香歩  岩波書店

#推薦図書

2007年に理論社のウェブページで開始された連載をもとに、2015年の講演のメモ書きの記録を文章化した本。
2020年新型コロナウィルスの蔓延による危機のなか、戦時中の隣組制度のような同調圧力が加速し、緊張や抑圧を強いられている。
このような時代にも、心の土壌をはぐくみ、のびやかな精神を持つ次世代が現れることをきたしている著者からのメッセージ。

「群れというもの」
みんなと同じ意見を言わなくてはいけないような気になって、自分はそう思っていないのに、みんなと同じと言ってしまうことがある。
群れは同調圧力をかけてくる。

「みんなちがって、みんないい」の重み
みんな同じで、みんな安心というのが今の日本の空気だが、このような言葉があるというのは、核心をついているからなのではないか。
「みんな同じになるべき」という同調圧力や「優秀なほどえらい」という能力主義が当たり前のように場を支配しているのに、指導者が「みんなちがって、みんないい」と繰り返せば、言葉が形骸し、空洞化し、陳腐で無力なものになってしまう。

「日本語について」
自分の気持ちにふさわしい言葉を、丁寧に選ぶという作業の大事さ。群れのコミュニケーションの大きな柱は、やはり言葉である。

「群れの一員としての幸せ」
仲間に入れてもらいたいと思う気持ちは、当たり前のこと。でも、自分が本当に入りたい群れや仲間でないのに、思ってもいないようなことを言ってしまって相手の機嫌を取るようなことをして自己嫌悪になることがある。
ある意味で、一番見栄を張らなくてはいけないのは、他人の目でなくて、自分自身の目。

「あなたのほんとうのリーダー」
あなたのことを一番よく知っている人、それはあなた。
あなたのほんとうのリーダーはあなた。
自分の中の目。
自分の中の埋もれているリーダーを掘り起こす。

「チーム、自分」
こんな最強の群れはない。
これ以上あなたを安定させるリーダーはいない。
これは、個人ということ。

とても簡単なことのようだが、とても難しいことかもしれない。
「チーム、自分」で生きてきた私にとっては、当たり前のことであるが、みんな同じが一番という普通の社会の価値観で生きてきた人にとっては、かなり難しいことかもしれない。

でも人の言いなりでなく、自分の言葉を選んで発言し、自分の気持ちに正直に従って生きるということは、ものすごく気持ちが楽になるものだ。
自分の心に正直でないと、とても苦しい。
私もとても苦しい数十年を経験してきた。
でも、自分の心と自分の言葉は捨てなかった。
だから、今の私がある。
これからの世代が、もっと伸びやかな精神を持つことができますように。


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