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8050W こちら宇宙ステーション

最近は8050問題について、政府も対策を考えるようになりましたが、中高年の引きこもりは、ずーと前からありました。

あるおうちは、高齢のお母さんと、二人の息子さんの3人家族でした。
だから、8050ダブル。
持ち家で家賃もいらないし、外にも出かけないから、さほどお金もかからない生活をしていたのでしょう。
お母さんの年金で、お母さんが買い物をして、ご飯を作って、暮らしていました。

ところが、ある時、お母さんが脳梗塞を発症してしまったのです。
外に出たこともなかった二人の息子さん。
医者にも行ったことがありません。
でも、生活の命綱のお母さんが死んでしまっては困る。
何とかしなくてはと思い、救急車を呼んだのです。
ケータイ電話も持っていなかった息子さん。
家の電話の使いかたは覚えていました。

長男さんがお母さんに付き添って病院に行きました。
そこは見たこともないような、大きな大きな建物でした。
こんな大きな建物は見たこともない。
いったいここはどこなんだ。
ERもあるし、屋上にはドクターヘリのヘリポートもある、最新の総合病院でした。
実は同じ市内の病院でした。
こんな病院ができたなんて知らなかった。

長男さんは、目を見張るようなものばかりを見たので、頭がくらくらしたそうです。
家の中だけにいて、今浦島のような生活をしていたもので、最新式の医療機器や、医療関係者の服装にもびっくりしたそうです。

「紫色のズボンをはいていたお姉さんが看護婦さんだって。
頭に帽子もかぶってなかったので、誰かと思った。
紺色の体操着みたいの着たお兄さんがお医者さんだって。
白衣って、着ていないんだね。
知ってた?」

と、私に聞いてきました。
知ってたよ。でもそうは言いませんでした。
「へえ、そうなんだ。それはびっくりしたでしょう。」
すると、長男さんはさらに続けました。

「あのさ、今って、頭の中の写真が撮れるんだよ。
知ってた?」
ものすごく得意げです。
どうやら、お母さんの頭のCTの映像を見せてもらったようです。
お母さんの頭の中の写真を見たと大興奮していました。

知ってたよ。うちの子なんかCTやMRIなんて、何回もとってるよ。
とは思いましたが、言いませんでした。
CTスキャンが日本に導入されたのは、長女が子どもの頃でした。
その頃は、あまり台数がなく、遠くの病院まで、検査に行かなくてはならない状態で、今のように普及していませんでした。
だから、障害も病気もない暮らしをしていたとして、そのまま引きこもりになったとしたら、CTもMRIも知らないままだったのでしょう。

そうして、長男さんはお母さんの病気をきっかけに、看病と介護を始めました。
次男さんも、次第に、長男さんと一緒にお母さんの通院の付き添いなど始めました。
今まで、外の世界とつながりを持っていなかったので、二人でやっと一人分の仕事しかできてはいませんが、こうやって、親の介護が必要になって、介護をせざるを得なくなり、そのおかげで、外の世界とつながりを持ち始めたという、引きこもりのお子さんは結構います。

そして、宇宙ステーションって何かというと。
それは、彼らの住まいの様子です。
ペットボトルの空き容器が壁に沿ってびっしり天井まで積まれて、それが電球の光に照らされて、キラキラ光って、地球上の住まいに見えなかったのです。
まるで昔のSF映画に出てくる宇宙ステーションになら、こういう部屋があるかもしれないな、と思いました。
(現在のISS国際宇宙ステーションには、こういう部屋はありません。)

みなさん、いろいろ、捨てられないものがあるようで、その捨てられない物によって、いろいろなお住まいが出来上がっているのでしょう。
これは、私と違う文化の住まいかもしれないな。

断熱効果として、壁びっしりペットボトルはありかもしれません。

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