出会って付き合うこと

初めて恋愛をするまでは、自分という輪郭がとても曖昧だったし、本当の優しさも思いやりも、辛さも裏切りも知らなかった。ある意味でとてもピュアで、言い換えれば自分の境界線を越えたことのない人間だった。

若いうちは恋愛をすべきと、よく本に書かれているし、大人たちは言うし、私自身も本当にそう思う。

10代から20代前半の、まだ未熟な頃。
恋愛をすると、自分以外の人間を真正面から見ることになる。逆に相手に、真正面から見られることになる。楽しいことがたくさんある。これまで1人でやっていたことを2人でする。知らない考え方を知る。自分がコンプレックスに思っていたことを相手が褒めてくれて、なんとも言えない幸せな気分になる。逆のこともある。相手がコンプレックスだと思っていることが、自分にとっては愛おしい特徴だったりする。そうやってかけがえのない時間をシェアしながら、互いに曖昧だった輪郭をはっきりさせていく。

しかしそんな2人も別れを迎える。それまで築いてきたかけがえのない時間がピタッと止まって、これまで自分の全てを見せてきた大切だったはずの2人が、誰よりも遠い存在になる。そのきっかけは諦めだったり飽きだったり裏切りだったり失望だったり、色んなことが複雑に絡み合って起きる。

どんな理由であっても、かつて愛した人と離れるのは辛い。胸が引きちぎられるような涙が目に染みる。

しかしその時に学ぶことがある。自分自身の暖かさと冷たさと打算。相手の暖かさと冷たさと打算。人を心から信頼することと、一方でそれが永遠でないことを知る。諦めを知る。

そして、どうせまた別の人のことを好きになる自分を知る。

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