私の仕事の現実を、1日の流れに沿って書いてみる
私が現在やっている仕事は保険会社の事務システム企画だ。
ユーザーとエンジニアの間に入りながら、よりよい事務構築のために日々脳みそに汗を流している。
そんな私の1日と、仕事を通じて考えていることを書いてみよう。
トラブルでおはよう
その日の朝、私は立て続けに起きるシステムトラブルに出迎えられた。いずれも、これまでにみたことも聞いたこともないエラーだった。
そのうちの1つは再現性がなく、理由が不明だが何だか分からないうちに収束した。この仕事を始めるまで、私はシステム開発の現場がロジックで見事に貫かれた仕事だと思っていた。
しかし、現実には原因究明が困難すぎて、様子見をしているうちに解消する問題も一定数ある。真実への探究をサボっているとみられるかもしれないが、「なんとなく大事にはならなさそう」という直感がその裏には隠されている。
システムの仕事には大きく分けて「トラブルシューティング」と「開発」というものがある。前者は突発的なエラーや不具合への対処、後者は長期的な目線に立った新しいシステム構築である。
トラブルシューティングは若手の人間がまず修行の場として投入されるのが一般的だ。
多種多様な事例に触れられる、問題解決のスピード感を育める、自分たちの作るシステムの手触りを実感できる、小さな成功体験をたくさん積めるといった、教育上のメリットがたくさんあるからだ。
この日も若手が精力的に対応してくれていたが、どうしても対処の難しいものは私のような中堅層の社員の出番である。この日は有識者が休みだったため、次の営業日にバトンタッチできるように急場を凌ぐのが私に科されたミッションである。
緊急を要するかつ他に手段がなければ休日にもかかわらず電話をしなければならないが、今度は自分が休んだ時に呼び出される可能性が高まる。自分で自分の首を絞める行為はなるべくしたくない。
初見ではあったが、残された開発資料を漁りながらなんとか凌ぐことができた。
こうしてみると、システムのトラブルシューティングの現場は急性期の患者を相手にする医療現場とそっくりだ。
私は基本的に刺激ジャンキーで、アドレナリンが出まくる緊急性の高い対応は性に合っている。とはいえ、私が緊急対応を独占してしまっては後進が育たない。
徐々に力点を長期的目線に立つ開発の方に置こうとしているのがここ最近の傾向である。
結局、午前中はトラブルシューティングの確認と指示出しと、1件のミーティングで終わった。
午後のミーティングラッシュ
午後はうってかわって開発に関連するミーティングだらけである。
企画職というのは残業が多くなりがちだが、理由は簡単で、全ての工程を俯瞰で見なければいけないからだ。
1工程のことだけを深く理解すればよい事務担当者と違い、10個も20個もある工程を全て見渡して「どこまでリソースを配分するか」を考えていたらあっという間に日が暮れてしまう。
長時間労働というとひたすら苦行に耐えるようなイメージを持つかもしれないが、現実はむしろ「気がついたら夜の9時だった」という感覚だ。辛いという感情を抱く暇もなく、ひたすら没頭しているうちに時間が過ぎていくのである。
なお、現実には20個以上ある工程を全て深く理解するのは不可能で、誰かの知恵を借りなければ回らない。そのため、企画職は常に「全てを自分で解決しきれないモヤモヤ」を抱えながら仕事をしていかないといけない。
全能感とは無縁なので、謙虚で穏やかな人が多い。傲慢さが見え隠れする人間が淘汰された結果かもしれないが。
非定型業務だらけの仕事なので、「見たことも聞いたこともない課題を前に、自らの力で開拓しながら解決に当たれる」人材が求められる。
マニュアル通りに仕事を捌くことしかできない人間は、長くはいられないだろう。
育成について思いを巡らす日々
「嵐の中をもがき苦しみながら乗り越える力」というのは、数あるスキルの中で最も育成が難しいものの一つだ。入社したてで既に体得している人間がいる一方で、高年次でも身に付いていない人もいる。
私もいろいろ考えながら実践しているが、相手からはなかなか「言われたこと+α」が返ってこなくて悩む日々である。
私が若手の頃はやたらめったら仕事を振ってくる上司を煩わしく思っていたが、逆の立場になってみると自分でやったほうがずっと楽だと思うようになった。任せるには部下の進捗度に目を配る必要があり、すぐには口を出さない忍耐も求められる。
上司たちはこんなに大変でしんどくて嫌われ者になることを将来の投資のためにやっていたのだなぁ、と時間差で尊敬の念が生まれてきた。
大変なことも多いが、トータルで見るとダイナミックで知的刺激が多いこの仕事は意外と嫌いではない。
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