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美女たちの抱える裏の顔

マドンナの秘密とは

「〇〇ちゃんは俺が守る!」

サークルの部長が後世に残る名言を残した。そこで名指しされたのは、つい最近入ってきた新入生の女の子だ。愛くるしいルックスと甘え上手な振る舞いで、あっという間にサークル内の先輩男子たちの心を鷲掴み。

実は私もLINEで男心をくすぐる「さしすせそ」を連発されていて、密かに浮かれていたところだった。ところが、部室に集まった男たちの雑談で、冒頭の部長の言葉が飛び出し、みんなに対して同じことをやっていたのが分かったのだ。

つまり、みんなが夢中になっていたその女の子は「サークルクラッシャー」だったのである。知らない人のために言葉の意味を解説しておくと、「同じサークルの男たちを夢中にさせて恋の紛争を引き起こし、組織を崩壊させてしまう人」のことだ。

LINEは1対1のやりとりがメインのツールなので、「自分だけに言ってくれている」と思わせるには格好のコミュニケーション手段である。それを全ての男に対してやっているのだから、明らかに確信犯だ。

一方、サークル内の女性陣は言葉には出さねど、マドンナへの嫉妬と、振り回される男への憤りが節々から感じ取られた。

その後、マドンナはサークル内の男と付き合い始めたのだが、ほどなくして別れた。なんで別れたんだろうと周辺の人間に聞いてみたところ、みなまでは書かないが「体力がもたないから」らしい。

その話を聞いて、あらゆる男を夢中にさせようとする言動や美意識の高さに合点がいった。人類は加害者・被害者の二項対立が大好きだが、現実はもっと複雑だ。もしかしたら、本人もコントロールしきれず困っているのかもしれない。

卒業した後、なんとはなしにFacebookを覗いてみると、例のマドンナが結婚式の写真を上げられていた。

しかし、タキシード姿の旦那さんは明らかにゲッソリしている。普通、タキシード姿の男は人生で一番キマった顔をしているはずなのだが、このやつれぶりを見る限り、結婚生活は大変そうだ。

薔薇の花には棘がある。美への並々ならぬ執念は、何かと引き換えに生まれているものなのだ。

天真爛漫な女神の過酷な生活

中学生時代、タレント学校に通っている同級生の女の子がいた。生徒会とソフトボール部に所属し、可愛らしい容姿に天真爛漫な性格があわさり、輝いていた。

会話する機会もそれなりにあったのだが、当時の私には上手く恋愛に発展させるスキルも度胸もなく、何も進展ないまま卒業を迎えることになった。

その後、大学進学して上京したところ、mixiでアカウントを見かけたので、懐かしさもあってメッセージを送ってみた。どうやら彼女も上京して、バイトを掛け持ちしながら活動を続けているらしい。「今アイドル投票をやってるから、もしよければ1票お願い!」と二言目で返事が来た。

投票のために掲載されている写真を見ると、大人になったことで容姿はかなり変化していた。

「1人で上京してバイトをしながら頑張っていて、君は強いね」と私が送ると、「そんなことないよ」と即座に返ってくる。今思い返すと、年齢のカウントダウンを背中で感じながら挑戦するアイドルの卵には、あまりにも決めつけがすぎる無神経な発言だったと反省している。

その後も、あの子がどこかで脚光を浴びているという話は聞かない。高校卒業後もアイドルを目指し続けるのは、人生を賭けた大博打だ。学歴も職歴もないとなると、たどり着く先は場末のスナックや、不安定なフリーランス。

職業に貴賎はないが、立場の強い・弱いは厳然たる事実として存在する。経済的には人生ハードモードかもしれないが、どうか納得いく人生であってほしい。

若い人から「今のうちにやっておいた方がいいことはありますか?」と時々尋ねられることがある。私からの答えは「美男美女に振り回されて現実を見ておけ」である。

特に当事者として傷つくことが一番重要だ。遠くから眺めるだけの憧れは、美しい思い出になる場合もあれば、時間の経過とともに発酵して臭気を発し、判断を誤らせるもとにもなりうる。

大人になってからコロッと騙されると、色々と洒落にならないのだ。

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