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人手不足時代の商品・販売ルート・雇用の変化

今、世の中全体で営業職の人口が減っているらしい。

インターネットの発達により、現地に足を運ばなくても人々に働きかけられるようになった。そのため、対面営業に注力してきた人間が非対面営業にシフトしたのかもしれない。

少子高齢化により人手不足が深刻化する中で、ノルマがキツいイメージのある営業職が敬遠されているのかもしれない。

理由は様々だが、営業職が減ることによって起こる生命保険業界の変化について、今回は考えてみたい。

支払場面のイメージが湧きやすい商品が増える

「入院したら」「新型コロナで陽性だったら」「がんになったら」といったように、生きている間に自分自身で受け取れる保障を各社が前面に押し出している。

支払場面がイメージしやすく売りやすいので、営業担当の人数が減っても売上を確保しやすいという側面があるのだろう。

イメージが湧きやすいということは発生確率が高めだからなのだが、その場合には「支払った保険料の何倍の保険金額が貰えるか」という倍率が低くなる。

例えば、月々2000円の保険料を払って入院日額1万円の入院保障に加入しているということは、倍率5倍である。

一方で、月々5000円の保険料を払って1000万円の死亡保障を得るということは倍率2000倍である。

自分が亡くなることよりも入院する場面の方がイメージはしやすいが、上の例だと「平均して5ヶ月に一度は1日以上入院しないともとが取れない」計算である。

倍率が低い分、貯蓄と比べたときの優位性が弱まるということだ。

余談だが、最近の入院保障は「1日でも入院したらまとまったお金が何万円も出る」ものが出てきている。

あれは倍率の観点からは物凄い発明である。何が凄いかというと、あれだけ払っても保険会社が損をしないということを統計上証明していることだ。

入院の統計自体は何百年も前からある枯れた技術だが、見方を変えるだけでこのような発明の余地があるという事実には勇気づけられる。

保険に加入する際には支払事由の分かりやすさだけでなく、「この保険の倍率はいくらで、自分がどれぐらいの症状になったらもとがとれるのか」という視点も踏まえて考えてみてほしい。

売上が減って人員削減が進む

残酷ではあるが、趨勢としては間違いなくこうなる。

そもそも辞めた人間の補充もなかなかできないぐらいの人手不足であり、人員は自然減しつつある。

さらに、営業担当者が減った分の売上低下を補うために、コストの割に成果を上げられない人間は退職勧奨をして経費を減らす動きをとるのはほぼ確定だ。

人を減らしても仕事が回るような工夫を思いつける人間は、どんどん評価が上がるだろう。

また、限られた人員で顧客の信頼を勝ち取り、成果を上げなくてはいけないので、質重視の営業になり、生保営業の悪き習慣である押し売りは減ってゆく可能性が高い。

コンサルと保険販売の分離

自社専属の営業担当者が減り、売上確保がますます厳しくなる大手生命保険会社にとって、保険代理店の重要度は近年ますます高まっている。

中でも独立系FPの人たちは保険の販売手数料とは別で、コンサルティング料(相談料)が収益源になっており、保険が売れなくてもセカンドオピニオンの需要に応えることによって稼ぐことができる。

ちなみに、ドイツでは一社専属の営業のシェアがどんどん減っているようだ。

一社専属というだけでコンサル内容にバイアスがかかっているとみなされるため、上記のような相談料をもらうスタイルと馴染まないのだろう。

大手の生命保険会社は金融庁から新商品の認可を取り、それを代理店に提供するのがメインミッションになって「卸と小売」の関係に収斂しそうだ。

「保険が売れなくても稼げる人たち」にいかにして自社の保険を売ってもらうかという悩みは、ますます増えてゆくと思われる。

以上、私の独断と偏見で営業担当者が減ることによる生保業界の変化を予想してみた。

私の今の仕事は「人を減らしても仕事が回るような工夫」を考えるものなので、引き続き業務に邁進し、新しい時代に向けたスキル向上に努めてゆきたい。

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