見出し画像

生命保険会社でスタートしたキャリアは、その後どのように分岐するのか?

大手生命保険会社に入社した人間は、その後どのようなキャリアを歩むのだろうか。私の知る範囲で紹介してみたい。

生命保険の事務システム部門からだと転職先はどこが多い?

圧倒的一位がコンサルだ。生命保険会社から移っても更なる給与アップが見込めることと、業務にやり甲斐がありそうなのがその理由だろう。

ただし、転職でコンサルに入るならば保険セクターに割り当てられる可能性が高い。前職の人間と立場を変えて再会する展開もザラだ。なぜなら、日本の保険会社は数が限られており、しかもコンサル料を払えるぐらい財務的に余裕のあるところとなるとさらに候補が絞られるからだ。

会社を変わっても、広い意味での「保険村」からは抜け出せていないことが多い。転職時に喧嘩別れをするとモロにダメージを食らう(営業できる会社が一社減る)ので、細心の注意を払うべきだ。

特にコンサルでマネージャー層として生き残ろうとするならば、自分で仕事を掘り起こせない人間は容赦無く淘汰されてゆくので、営業先の確保に繋がる人脈は生命線である。

第二位は同業他社の生命保険会社である。今までの業務で身につけた知識を活かせば当然ながら転職はしやすい。

私が見た中での成功パターンを紹介しよう。

鶏口となるも牛後となるなかれ
前職が大企業で優秀な人間が大勢おり、100人中70番目ぐらいの人材だった。しかし、中堅の会社に移ってトップ10に入る人材になれた。

これであれば、社内で裁量を得られるし待遇も改善する可能性が高いし、なにより承認欲求が満たされて精神衛生上も良い。

業界順位の低い会社に移ることになるので、対外的なネームバリューという意味では後退しているかもしれないが、本人のモチベが第一なのでこれはこれで幸せな転職の形だ。

仕事・転勤の範囲を絞る
全国転勤を選択して「どこでも行きます、何でもやります」という契約で入社したにも関わらず、その後「この仕事・地域じゃなきゃ嫌だ」と言い出す人は一定数いる。(特に女性で首都圏にこだわる人は凄く多いと感じる)

特に事務部門配属の人間で「営業の仕事は絶対嫌だ」と言う人は多い。そこで、同業他社のバックオフィス系部署に転職し、仕事内容を完全に固定化するというケースである。(事業所の場所によっては引っ越し範囲も限定される)

大企業だと仕事内容・転勤範囲を限定した人間はそうでない人間と比べて給料が安くなるが、この転職方法ならば高い給料を確保しつつ希望の転勤範囲・仕事内容が手に入る。

新しい環境に適応する苦労を買ってでも、意義があるといえるだろう。

第三位はSEである。事務部門はシステムと関わる機会が多い。そこでSEとしての適性を見出した人間であれば、有力な選択肢だ。よくある「取引先の業界に可能性を感じて転職する」というパターンである。もちろん、過去の知見が活かせる保険会社の開発に携わる可能性が極めて高い。

また、お金を出す立場(生命保険会社)から仕事を請け負う立場に変わることを意味するので、かつで自分が言っていた無理難題を浴びる覚悟は持たないといけない。

請負の立場で、決定権を持つ保険会社の旧態依然とした慣習を打ち破るのはほぼ不可能である。新しい構想を描くよりも、ものづくり職人としての矜持を重視する人であれば良い選択肢だろう。

第四位は国家公務員である。保険会社は規制産業で閉鎖的な環境だが、試験という参入障壁がある公務員も性質が似ている。前述の3パターンよりもさらに保守的な人間が採る選択肢である。

給与水準は一般的には金融機関より劣る。このパターンの転職で成功しているのは、仕事内容が合っているか、前述の「鶏口となるも牛後となるなかれ」に当てはまる場合だと感じる。

世界で勝負するなら国際事業部と資産運用部門が最有力

国内の縮小傾向が避けられない以上、世界を相手にしたビジネスをしないと「上昇気流に乗った」状態でキャリアを積み重ねることはできない。

上記以外は基本的にドメスティックな事業なので、人口縮小局面ではゆるゆるとした撤退戦を余儀なくされる。

商品開発は日本の社会保障制度や発生率の統計を前提としている。営業は言葉の壁がある。事務部門も国内事業をスムーズに進めるための仕組みづくりが仕事だ。

残存者利益を狙って社内で小競り合いをすることになるので、年次が上がるごとに「自分の仕事は社会や会社に役立っているのか?」という疑問と閉塞感が深まってゆく。

仕事で突き抜けた成果を出して自己実現を目指す人であれば、やはり世界を相手に勝負できる仕事をするべきだ。

生保の海外事業は、大きく分けると「買収先の選定・交渉」と「現地の運営を成功させるための施策立案」という二つの役割がある。資産運用部と国際業務部でどのように役割分担がされているかは会社によるので、調べた上で「自分はどちらが好きか」で狙いを定めるのが良いだろう。

もちろん、入社していきなり国際業務部や資産運用部に配属される可能性はかなり低い。そもそも人気の部署なので、「今の所属で圧倒的な成果を出す」は必須要件である。

加えて、これらの部署においてプラスになるような取り組みを自助努力で進めておかないと、狭き門には入り込めないだろう。

ちなみに、資産運用部門や国際業務部希望と言いつつ、会社の制度に文句ばかり言っている人間はまず希望が叶っていない。

「今の所属で圧倒的な成果を出す」と「自分の希望に説得力を持たせるための個人的な取り組み」の両方を実現しようと思ったら、文句を言っている暇なんてないからだ。

愚痴と中途半端な格好付けにエネルギーを費やすぐらいならば、「内向きなまま会社にしがみついてやる」と覚悟を決めて全力を尽くした方が予後は良い。

入社してみて「やっぱりこの仕事は違うな」と思ったら

生命保険と全く違う業界に行きたいと思うのであれば、入社5年目まで(具体的には28歳まで)に転職した方が良い。既に書いたが、保険村にドップリつかると、転職したとしても結局似たような顔ぶれの人たちと仕事をする可能性が高いからだ。

その場合、スキルゼロからのスタートなので一時的な給料ダウンも呑まなくてはいけない可能性が高い。

それでも保険業界に見切りをつける人の理由第一位は間違いなく「旧態依然として変わらないこと」だ。

これは規制産業の宿命だし、歳をとった人が多い人口逆ピラミッド型組織の宿命でもある。右肩下がりなのが分かりきってるのに、見て見ぬ振りをしながら国内事業に従事している人たちが大半なんだから、そりゃあそうなるわって感じだ。

転職先は千差万別すぎてここでは書ききれない。「自分が古臭さをどこまで許せるのか」は胸に手を当ててしっかりと問うた方が良いだろう。

なお、私はというと、斜陽と言われる国内事業の事務部門で、ニッチな分野の専門家になってそこそこ自己肯定感も経済面も満たされてる。ニッチだからこそ、自分の立場を脅かす代わりの人材も今のところいない。

自己実現は仕事と趣味では5対5ぐらいでできている。これを足がかりに活躍の場をどんどん広げていって、さらに確固たる地位を築いてゆくのが私の目下の課題である。

前半は青天井な上昇志向を持つ方向けに書いたが、規制産業は生き残りやすいニッチな分野がたくさんある。キャリアに格好よさを求めない方は、古臭さをガン無視して残り続けよう。

他人の目は関係ない。キャリアで最後に笑うのは、自分の心の声に素直になり、辻褄の合った努力ができる人間なのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?