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差別化の努力がかえって戦況を悪くする話と、保険比較の動線設計について

健康診断結果でビビる

健康診断で肝臓の数値に異常が見つかった。

振り返ると、毎日夜10時近くまで働いて、夜6時ぐらいに菓子パンを間食で食べ、帰った後もコンビニ飯を食べる。1日4食で完全にオーバーカロリーだ。

糖分摂取量をおさえるために、無糖のコーヒーと市販の牛乳を混ぜて飲んでいたが、牛乳も結局のところ脂肪を含んでいるので、カロリーをとっていることになる。ダメ押しで休日のグルメ散策。ちなみに、酒は月に1,2回ぐらいしか飲まない。

人間の舌はカロリーの大きいものを美味しいと感じるようにできている。味覚の指し示すままに食べて飲んでを繰り返していたら、自然とカロリー過多になるのだ。

詳しくは検査結果を待たないといけないが、医師によれば脂肪肝の可能性があるとのこと。もし脂肪肝だと診断されたら、部位不担保や加入お断り、あるいは保険料の割増が発生する可能性がある。

ちなみに、健康診断で要検査と結果が出ているのに放置しておくと、保険に加入するときにお断りとなる可能性があるので注意だ。

若さと健康は失って初めてその存在に気づくもの。ひとまず、転んでもタダでは起きないの精神で肝臓についていろいろ調べてみることにした。

意外と少ない肝臓の保障

脂肪肝は症状がさらに進むと肝硬変、さらには肝臓癌へと発展してゆく。肝臓は体内の解毒を担う臓器なので、機能不全に陥ると他の病気も併発しやすくなる。さらに栄養の貯蔵機能も担っているので、肝臓は食べ過ぎの悪影響を真っ先に受ける臓器なのだ。

生命保険各社の商品を調べてみると、肝機能障害に備える保障は意外なほど限られていた。提供しているのは大手ばかりで、長い歴史の中で蓄積した査定ノウハウがあるから出せるのだろう。

支払事由を調べてみると、脂肪肝程度では保険金は払われなさそうだ(入院すれば入院保障では出るかもしれないが)。さらに症状がどんどん進んで、肝硬変とか肝臓癌の局面になってようやく払うかどうかのラインに乗ってくる。

この体験を通じて、私の中にはある気持ちが芽生えた。既に加入している肝臓関連の保障は極力維持し続けよう、という思いだ。健康体で加入した後に、このような気持ちになっている人は実は結構いるのではないかとみている。

そのため、新規の加入者が増えないと、保険会社の有する被保険者集団は健康偏差値の低い人が残ってゆくのである。

若年層のコスパ重視と比較の動線

最近の若い人たちは生命保険に対して極めてドライだ。結婚してなかったり、子供がいなかったら保険に入る必要はない。貯蓄性商品に入るぐらいなら投資に回したほうが良い、という考えが標準装備されている。

おそらく、さまざまなメディアでインフルエンサーが発信している保険不要論を吸収したのだろう。学校では教育していなくても、就活で業界研究をしていたら自然とその手の情報には触れることになる。

今の20代は保険に加入を考える場合も、乗合代理店ですら複数訪れて比較しながら決めてゆく。さすがタイパ・コスパを重視する世代である。ちなみに、前述の通り肝機能障害に備えられる保障はごく一部しかないのだが、乗合代理店を訪れた時に肝機能にフォーカスして見比べる人間が果たしてどれだけいるだろうか?

2016年の改正保険業法で、画一的な質問で顧客の意向を確認しつつ、複数の商品を比較しながら提案する手法がルール化された。顧客の意図に反して手数料が高い商品ばかり勧めるのを防止するためだ。

これにより「マニアックな商品は比較ができないから質問項目から外そう」なんて展開になりかねない。

漫画とかアニメだったら、オンリーワンな要素は差別化のために絶対に必要である。ところが、生命保険はつまるところお金のやり取りでありエンタメ性がないので、「3つの中から比較できるこの商品は納得感があるけど、こっちのオンリーワン商品はぼったくられている不安がぬぐえない」という心理である。

差別化だと思っている努力が、実は比較対象からこぼれ落ちる原因を作ってしまう自殺行為だったりするのだ。

ちなみに、画一的な質問をして選別するだけだったらチャットボットのほうが安上がりだし、足を運ぶ必要がなくて共働き家庭にとっても助かる。チャットボットで質問して、どうしても突っ込んで聞きたいことがあったらビデオ通話で相談する展開が今後の主流になるのではないだろうか。

今後、生保業界の人間は商品開発をする際に、顧客になりきって訪れるサイトや、その中でどんな情報を拾って見比べるかなどといった「比較の動線」を考慮しないと戦えなくなるだろう。

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