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あの人とはどうなの?

「あの人とはどうなの?」
「ダメだった。私いま付き合っている人がいる。」
「知らなかった。」

 実際の会話では実名だった「あの人」。当時の年齢や場所、どちらが私か、また相手の素性は明かさない。この会話の前後は、今となっては思い出せない。だが、あのとき感じた胸の高鳴りや、句読点の度に次の言葉を見つけるまでの「」、ヒリヒリとした心の内を、私は忘れられそうにない。

 「あの人とはどうなの?」あなたの言葉を聞かせて。もう言語化するしかないのか。

 「どうなの?」と投げかけてナニが聞き出せる?どんな言葉を発したら納得できる?あなたではなくて私が。

 「ダメだった」って?フッたでもフラレたでもない、終わったでもない。そう、終わったなんて、言えるはずもない、認めたくないから。

 「付き合っている人がいる」っていきなりナニそれ。あなたにこれ以上腹を探られたくなかったから、敢えて口にした。

 「知らなかった」ビックリした。うそ、知ってたでしょ?そっちではなくて「付き合っている人」のほう。なるほど、そっち。

 私は「あの人」が好き。私は「あの人」が好き。

 半分の虚構と半分の事実。「あの人」を頂とした三角関係トライアングルは存在したのか、しなかったのか。二人で「あの人」を語るのは、これが最後だった。

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