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【初学者向け】同志社大学法学部から司法試験に合格するための戦略 〜大学院進学を見据えた勉強〜

Ⅰ   はじめに


1 筆者の略歴

 2023年4月現在、同志社大学法学部法律学科に在学中。伊藤塾54期生。

2 この記事の内容

 この記事では、「同志社大学法学部から司法試験に合格するための戦略」について解説しています。司法試験予備試験や司法試験、法科大学院入試の勉強をするのによく使われている基本書や問題集を纏めています。
 この記事を執筆した動機は、私自身の感覚として、同志社大学では予備試験や司法試験を受ける先輩や後輩間の交流の場があまりなく、また、勉強仲間も見つけにくいためか、東大京大の学生間で流通している「期末試験の対策法・司法試験・予備試験の参考書(基本書や予備校の情報)」がなかなか出回っていないのが現状です。そして、現在予備校に通っていたり、将来司法試験の受験を決めていたり、大学院の進学を決めていたりしても、予備校を上手く使えず、又は独学でもメジャーな基本書や問題集がわからず、勉強が思うように進んでいない人が多くいるように思いました。そこで、ほとんどの単位を取り終わって同志社大学の法学部についてある程度の理解があり、伊藤塾に通いながら司法試験予備試験の勉強を約2年間した身として、同志社大学に通う新入生や初学者向けに、解説記事を書こうと思いました。私自身、2回生の夏までほとんど勉強せず、アルバイトやサークルに熱中していましたが、一回生のうちに本記事の内容を知っていたら、効果的に勉強できたと思います。DMで質問が多く来る内容も含みました。
 なお、今回の執筆にあたって、4回生で予備試験に合格し京都大学法科大学院に進学された同志社大学のOB1名から実際にお話を伺ったうえで、執筆しています。主に、予備試験の勉強法、使用すべき基本書、予備校の使い方について伺いました。恐縮ですが、この場を借りてお礼申し上げます。


Ⅱ   前提知識

1 法曹になるためには司法試験に合格しなければならない

 裁判官、検察、弁護士の法曹三者になるためには、司法試験に合格しなければならず、また、司法試験の受験資格は厳格に制限されています。司法試験を受験するには、①司法試験予備試験に合格することで司法試験の受験資格を得るか、②法科大学院を修了することで司法試験の受験資格を得るか(*大学院2年次に司法試験を受験も可能になりました。)の2つの方法しかありません。

2 司法試験予備試験の合格率は低い

 2922年度の司法試験予備試験の合格率は、受験者数13,004人に対して合格者数472人、最終合格者が3.6%でした。
 また、2022年度の司法試験の合格率は、法科大学院の修了者で、受験者数3,082人に対して合格者数1,403人、最終合格者が45.5%です。
 司法試験予備試験は受験資格に制限がないので、記念受験などが一定数含まれており、その合格率の低さも理解できますが、法科大学院で受験勉強を2、3年した受験者の半数以上が落ちることからも、司法試験が非常に難関資格であることが分かると思います。
 *合格率については、法務省のホームページを参照した。

3 死ぬ気で勉強する必要がある

 前述した通り、司法試験は非常に難関な資格になります(Ⅱ-2参照)。そのため、一般的に、合格するには、4000〜10000時間勉強する必要があると言われています。したがって、大学受験とは比べものにならないほど、勉強する必要があると理解してもらえると思います。
 司法試験合格者は、東大京大早慶ばかりなので、同志社大学でも受かるのかと心配されると思います。しかし、資格試験である以上、努力して勉強した人が合格するため、一概には同志社大学だからと合格する可能性は否定できない、と思います。もっとも、東大京大生でも毎日10時間ほど勉強しているので、アルバイトやサークル活動を犠牲にして、毎日コツコツ勉強できなければ厳しいかと思います。
 *合格に必要な勉強時間については、予備校アガルートのホームページとOBの話を参考にした。


Ⅲ 大学院進学を見据えた戦略

1 はじめに

 この章では、司法試験予備試験などの法律資格の勉強と並行して、法科大学院に進学するための具体的な対策について解説します。

2 法曹モデルを履修する

 同志社大学には、法学部を3年で卒業し、本来の4年次から2年間の法科大学院での学修を始める法曹コースもあります。1年分の学費と時間を節約でき非常に良さそうな制度です。しかし、ここで注意が必要で、この制度を使って、全ての法科大学院を受験することができるものの、実質は、同志社大学の法科大学院以外の進学は難しいです。まず、同志社大学以外の法科大学に進学した場合、学部を中退した扱いになります。また、京阪神などの大学院へ行くには当然試験があるのですが、大学の授業内容や期末試験の難易度では、到底太刀打ちできません。予備校や独学でそれ相応の受験勉強をする必要があり、1回生から勉強を初めていないと、なかなか外部のローへ行くことは難しいです。同志社大学から京大、阪大ローに行った多くは早期卒業をしていないのが内実です。
 もっとも、司法試験予備試験や法科大学院入試に内容が重複していますし、大学院進学後の勉強に役立つので、積極的に履修しましょう。勉強の進捗が良ければ、早期卒業して大学院へ進学するのも良いと思います。

早期卒業での法科大学への進学イメージ


3 GPA3.0以上をキープする

 法科大学院の入試では、学部のGPAが評価対象になります。特に、上位ローと呼ばれる難関法科大学院では、ペーパーテストだけでなく、内申点も一定数合否に影響を与えます。そのため、GPAは、最低でも2.6ほど、出来れば3.0以上はキープしておきましょう。そうすれば、書類審査などの一次試験で落とされることがなくなります。


4 期末試験の対策をする

 授業には基本的に出席し、期末試験で単位を落とさないようにしましょう。そして、大学3回生が終わるまでに単位を取り切ってしまえるように、毎年登録限度いっぱいに授業を登録することです。早期卒業をしなければ、大学4回生のときに、法科大学院や在学中最後の予備試験の受験を迎えることになりますが、その際、単位が残っていては満足にその対策勉強をすることができません。


5 司法試験予備試験の勉強をする

  法科大学院入試では、憲法や民法などの各科目別ごとに事例問題が出題されますが、これは、司法試験予備試験の試験内容と同じであり、その勉強をしていれば、必然的に学習範囲を全て網羅することができます。
 司法試験予備試験の方が、法科大学院入試よりも難易度が高い傾向にあるため、学部中に予備試験の勉強が終わらない、又は予備試験に合格できなくても、法科大学院に進学・修了し司法試験を受験する道が残るので保険としても良いと思います。



Ⅳ   司法試験予備試験・法科大学院入試の勉強法

1 はじめに

 この章では、司法試験予備試験の勉強で、一般的に使われる参考書や問題集、法科大学院入試の対策方法について解説します。

2 予備校に通う

 最もオーソドックスな方法が予備校に通うことです。金銭的な問題がなければ、基本的に全員が予備校に通います。
 予備校では、基礎講座から論文講座まであることが多く、特に大手予備校の伊藤塾であれば、予備校だけで勉強が完結します。テキストに判例や論証も付いているため、基本書や問題集に悩む必要がなく楽です。
 有名な予備校には、伊藤塾、アガルート、辰巳法律事務所、LECがあります。伊藤塾やアガルートは100万円前後します。最近は、辰巳法律事務所、LECの比較的安価な予備校も支持されてきています。
 同志社生には、伊藤塾やアガルートが多いです。そのほかの予備校は聞いたことがありません。


3 おすすめの予備校・活用法

 ネットでは、予備校の評価が分かれていますが、基本的に勉強するのは自分なのでどこに行っても変わらないと思います。ここでは、特に有名で実績がある予備校に絞って説明します。
 まず、伊藤塾です。言わずも知れた、超有名司法試験予備校です。合格実績も高く、法科大学院への進学者も多い印象です。同志社生のほとんどが伊藤塾に通っています。金銭的に余裕があれば伊藤塾がいいでしょう。勉強が伊藤塾の教材で完結するため、効率が良いです。基礎マスター→論文マスターまで受ければ論文試験にも対応できます。同志社生限定のライングループやOB・OGとの無料カウンセリングも実施していてアフターフォローが充実しています。無料で、論文ゼミや京大・阪大ローの入試対策講座も実施していました。


 次に、アガルートです。アガルートは講義量が少ないため、適宜自分で基本書や問題集を購入する必要があるようです。特に、工藤講師の評価が良く、論文試験にも対応できるようです。アガルートに通っている知り合いは、基本書や問題集を追加して勉強を進めていましたが、特に問題もなさそうでしたので、伊藤塾とほとんど内容的に変わりません合格者も多く存在します。


4 独学で勉強する

 完全独学は厳しい印象です。ただし、インプット用の基本講座だけを安価な予備校であるSTUDYing、LECなどで受講して、基本書を読みながら問題集で復習しつつ、アウトプットを問題集や過去問ですることも可能です。


5 予備試験合格者が実際に使っていた基本書・問題集

 これは次章で詳しく解説します(Ⅴ参照)。

6 行政書士試験・宅建試験を受験すべきか

 非常に勉強のモチベーションになる試験ですし、法律資格の中でも独学し易い試験です。将来、ロースクールに進学したり、司法書士や司法試験を受験しようと考えている方は、一度チャレンジしてみても良いかと思います。
 特に、まだ予備試験や司法試験の勉強を始めていない1回生や2回生の段階で、3ヶ月ほどと時間を限って受験勉強をすると、法律資格の勉強の仕方がわかったり、自分が法律の勉強と相性が良いかなどがわかり良いと思います。予備試験の勉強をしている京大生は、2回生のときに必ずといっていいほど受験しています。予備試験の登竜門的扱いです。


Ⅴ   基本書・問題集一覧

1 憲法

  • 基本書→芦部信喜『憲法(第8版)』(岩波書房・2022)、佐藤幸治『日本国憲法論(第2版)』(成文堂・-)、木下智史ら『基本憲法Ⅰ 基本的人権(第8版)』(日本評論社・-)、安西文雄ら『憲法学読本(第3版)』(有斐閣・-)

  • 短答式試験→『短答過去問パーフェクト』(辰巳法律事務所)

  • 論文式試験→判例百選、憲法判例の射程、憲法演習サブノート210問、呉先生の合格思考、スタンダード 100

2 行政法

  • 基本書→塩野宏『行政法Ⅰ(第6版)』(岩有斐閣・-)、塩野宏『行政法Ⅱ(第6版)』(岩有斐閣・-)、塩野宏『行政法Ⅲ(第5版)』(岩有斐閣・-)

  • 短答式試験→『短答過去問パーフェクト』(辰巳法律事務所)

  • 論文式試験→百選、基本行政法、ケースブック行政法、土田先生の基礎演習行政法、スタンダード100

3 民法

  • 基本書→潮見佳男『民法(全)(第3版)』(有斐閣・-)、佐久間毅『民法の基礎 1総則』(有斐閣・-)、安永正昭『講義 物件・担保物件法(第4版)』(-・-)、潮見佳男『債権各論Ⅰ 契約法・事務管理・不法行為(第4版)』(-・-)、潮見佳男『債権各論Ⅱ 不法行為法(第4版)』(-・-)、窪田充見『家族法 民法を学ぶ(第4版)』(有斐閣・-)

  • 短答式試験→『短答過去問パーフェクト』(辰巳法律事務所)

  • 論文式試験→アガルート論証集、百選スタンダード

4 民事訴訟法

  • 基本書→三木造一ら『民事訴訟法』(有斐閣・-)

  • 短答式試験→『短答過去問パーフェクト』(辰巳法律事務所)

  • 論文式試験→百選、和田先生の民訴、スタンダード100、アガルート論証集

5 会社法

  • 基本書→高橋美加ら『会社法(第3版)』(弘文堂・-)、田中宣『会社法(第4版)』(東京大学・-)、近藤光男『商法総則・商行為法(第9版)』(有斐閣・-)、早川徹『手形・小切手法(第2版)』(-・-)

  • 短答式試験→『短答過去問パーフェクト』(辰巳法律事務所)

  • 論文式試験→百選、工藤北斗の論証集、スタンダード100

6 刑法

  • 基本書→大塚裕史、十河太郎、塩谷毅、豊田兼彦『基本刑法II各論』(日本評論社・第 3 版・2019)、大塚裕史、十河太郎、塩谷毅、豊田兼彦『基本刑法I総論』(日本評論社・第 3 版・2019)

  • 短答式試験→『短答過去問パーフェクト』(辰巳法律事務所)

  • 論文式試験→主旨規範ハンドブック、百選、刑法事例演習、重要判例解説、刑法事例演習 メソッドから学ぶ

7 刑事訴訟法

  • 基本書→宇藤宗『刑事訴訟法』(有斐閣・-)

  • 短答式試験→『短答過去問パーフェクト』(辰巳法律事務所)

  • 論文式試験→百選、川出先生の判例講座刑事訴訟法(捜査・証拠編)、事例でわかる伝聞法則、古先生の青い刑訴の演習書、スタンダード100、趣旨規範ハンドブック

8 使い方 

 短答式試験は、①基本書を読む→②短答過去問パーフェクトを解きます。
 論文式試験は、①論証集を読んで書き写す→②該当の百選を読み込む→③解説部分で重要な部分を重点的に読んで百選の事案で論点がどうなっているかを把握→④分からなければ基本書で知識を補充→⑤書き込みは全て論証集にまとめる(1冊に知識が纏まっている方が復習しやすいため)→⑥あらかた論点さらったら(b論点くらいまで)、⑦スタンダード100で予備試験と旧司法試験をメインに答案
 ☆構成と論点部分は自ら論証+あてはめ→答案確認してみて相違点の確認+使えそうなあてはめ、言い回しを書き出すことを繰り返します。




ありがとうございます♪