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部活動が道楽だと思う絶滅危惧種教師のつぶやき

時代の流れと逆行しているかもしれませんが、
15年間(現在進行形で)務めている
陸上競技部の顧問に加え、
今年度から、新設の部活の顧問をやっています。

漫画「ちはやふる」で流行した
百人一首かるたです。

もともと国語の授業の中で、
隙間時間があると、
百人一首のかるた遊びをしていました。

僕自身、百人一首の歌が大好きで、
講習などで扱うことも多かったので、
学校内に、少しずつ、かるたファンが増えて、
去年から「かるた部をつくりたい!!」と
声をあげる生徒が現れたのです。
当然、「枝瀬先生、顧問やってください。お願いします!」とやってきました。

おいおい勘弁してくれ、と思いましたが、
生徒たちも粘りに粘って交渉してくるので、
彼女たちの本気を買って、
引き受けることにしました。

部活動を立ち上げる、
しかも陸上部と兼任でやります、と言ったら、
職員会議でも反対に遭いましたが(苦笑)。

もともと、僕は、陸上が専門ではありません。
百人一首かるたもやったことがありません。
専門外の顧問を2つ掛け持ちしているのです。

和歌が好きなので、たとえば、「こぬ人をまつほの浦の夕凪に・・・」の歌があったら、作者の生き様を含め、その内容の素晴らしさを延々と生徒と語り合いたいのですが、かるたの世界は、和歌の解釈とは別次元で、ただただ上の句の「こ」の一音だけが重要です。かるた取りでどうすれば勝てるか?というのは僕にとっては全く未知の世界でした。

そんな、ど素人でも顧問が務まるのは、
部員たちの自主性を阻害しないよう
意識しているからです。

「かるたがやりたい!」と言って集まってきて、
部活動を立ち上げるまで行動する生徒たちは、只者ではありません。彼女たちと共に部活動を盛り上げていくことは、僕の仕事のモチベーションにもつながるな、と直感しました。

実際、部員たちのかるたにかける情熱と行動は目を見張るものがあります。

7月の初めての大会では、全員初戦敗退。
学校の百人一首大会とは段違いにレベルの異なる競技かるたの洗礼を受け、落ち込むかと思いきや、ある部員が、専門的指導者の教えを乞うべく地域のかるた会に入会しました。

たまたま、その指導者が県の高校強化専門部に所属している方だったので、僕にも連絡をくださって、そのご縁から、部員たちを定期的に指導してくれることになりました。

これが転機でした。

どのように札をならべるか?
敵陣をどう攻めていくか?
お手つきをなくすためには?
あるいは、相手のお手つきを誘導するためには?

具体的な戦略、戦術を叩き込まれ、部員たちはみるみる上達していきました。

2回目の大会では、早くも一人が優勝、もう一人が準優勝しました!
すごいすごい、なんて呑気に浮かれていたら、準優勝だった子は翌日、保健室に駆け込んで泣き腫らしています、という報告。おいおい、どんだけ悔しいんだよ、と思って、彼女たちのかるたへの打ち込み方に感心しました。かるたって体育会系なんです!

練習では強いのに、大会になるとどうしても勝てない、それで自信を失いかけている部員もいました。でも、その子は、下級生とのコミュニケーションが抜群に上手で、後輩に慕われています。ミーティングをしたら、案の定、彼女が次期部長に選出されました。

そしたら、その部長が、もう一人の2年生と一緒になって次々と企画を考えるのです。
アイデアマンとしての才能を開花させました。

先生!クリスマスに学校全体に呼びかけて、かるた大会をしたいです!
来年度の部員集めにもつながると思うので!!

先生!合宿やりたいです!
え、学校ではムリですか・・・。
そしたら・・・、わかりました、わたしたちだけで、プライベートで集まって合宿します。
民宿さがしてみます!!

やる気スイッチの入った
高校生の勢いたるやすさまじい・・。

僕は「できること」「できないこと」の線引きを明確にしていますから、ダメなこと、ムリなことは、はっきりそう伝えます。決して自己犠牲的な働き方はしていません。自分の時間を削って消耗することには懲り懲りしていますから(苦笑)。

彼女たちは「できる範囲」の中で、創意工夫して、いかに強くなるか、いかに楽しむかに貪欲にチャレンジしていくんです。「できる範囲」がしっかり制限されている方が、かえって頑張り甲斐があるみたいです。
顧問は、感心しっぱなしです。

先日の3回目の大会では
優勝2人、準優勝2人出ました。

繰り返しになりますが、
僕は、かるたの素人です。
専門的指導は皆無。

でも、生徒の自主性を大切にして、一
人ひとりの役割を尊重する態度を示すことで、
勝手に彼女たちが行動し結果を出していきます。

マンガ『スラムダンク』で
安西監督が心のなかでつぶやいていた言葉が
あります。

日一日と、成長がはっきり見てとれる、
この上もない楽しみだ。
道楽だ。

僕は、この感覚がよくわかります。

部活動マネジメントの方向性さえ間違えず、生徒たちの自主性を伸ばしさえすれば、子どもたちは、みるみる変わっていくのです。成長していくのです。これは道楽です(笑)。
その場に隣で立ち会えることは、こんな幸せな仕事はない!と本気で思えます。

生徒たちの目がきらきら輝きだしますからね。ある部員は遅刻常習犯でしたが、かるたが軌道に乗りだしてから、遅刻ゼロ、成績も伸びています。

でも、じゃあ、
お前は部活動推進派なのか??と
言われたら、
簡単に首を縦に振ることはできません。
初任者や教員経験が浅い先生には
まずオススメできないでしょう。

生徒や専門的指導者に
恵まれたところが多分にありますし、
陸上部とかるた部の顧問を兼任することは
(正直)負荷も大きいです。

クラス経営や委員会指導を何年も経験してきて、
周りからの支援も上手に求められるようになって、一人で仕事を抱え込まないよう細心の注意を払って、はじめてこんな部活動マネジメントができているのです。

また、僕が負担する労力以上に、見返り(生徒の成長と僕のやりがい)が得られると確信しているから、できるのです。

確信のないところで部活動経営を受身でやらされたら、良心的な先生ほど心身が疲弊していくでしょう。相当な勉強と鍛錬と経験値を積まないと務まらないです。

昨今の部活動をめぐる世論は、部活指導の実態を知らないで発言しているケースもあるように思えます。

部活動が道楽で、そこで働きがいや生きがいをもっている先生方も多くいます。その道楽を十把一絡げで奪い取るようなことは避けていただきたい。
だけど、道楽は道楽なんです。本業(授業や生徒指導)に加えて、無理強いさせるようなことも決してしないであげてください。

結局、一人ひとりの教員や保護者、生徒が部活動にどう「意味づけ」していくか、というお話です。

「意味づけ」をお上や他人に任せてはダメです。
「意味づけ」は個人でしていくしかないんです。

今日はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました。これを読んでくださったあなたの少しでもお役に立てれば嬉しいです。

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