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ローファイと呼ばないで

SNSで知ったRocket or Chiritori「Tokyo Young Winner」にハマってます。1997年に高校生が作った作品です。

たぶん4トラックのカセットテープMTRで録音されています。
当時、デジタルストレージのMTRが発売され始めた頃でしたが、ただの4Tr.MTRのカセットテープがデジタルストレージになっただけのものでした。

私はその頃データMDという、今となっては「そんなのあったの?」というデジタルストレージメディアの4Tr.MTRを使っていました。
1998年に革命的な本格デジタルMTR、Roland VS-880が発売されるのですが、それまでは、この作品の音質クオリティが普通でした。

今のような波形編集なんてできませんし、カセットテープだと録音もやり直すたびに音質劣化します。パンチイン/アウトすら楽ではありません。

でもだからこそ、良いと思いませんか。
演奏の一生懸命や楽しさがあるし、「無駄なすごいこと」ができないし、DAWで作った作品では得られない音楽の煌めきがあると思うのです。

ただ、困惑しているのは、「ローファイ」というSNSで紹介される時につけられるタグです。
確かにローファイなのですが、誰もがローファイな音にしたかったわけじゃないのです。たぶんRocket or Chiritoriも狙ってないです。
今で言うアウトボード類やちゃんとしたマイクを持ってないとこうなります。
今とは違い、当時の安いアマチュア向け機材は音やせ(痩せ)します。
だからローファイになります。
当時は準プロ的な高級機材でも、高校生がバイトして揃えられるものではありませんでした。
また知識もなかったのです。教えてくれる人なんていないし、ネットもなかったので。「Saund and Recording Magazine」くらいしか情報源がありませんでした。
それに自宅録音マニアは別として、バンドマン=録音好きなわけではないですから。
その辺りの事情もあって、ローファイになってしまうわけです。

逆に言うと今の機材はすごく良いです。
オーディオI/Oについてるプリアンプだけの方が安いプリアンプ通すよりも良いです。同じ価格帯ならどんぐりの背比べ。
知識だってネットですぐ調べられます。

そして、ものすごく怖いのは、「カセットテープはローファイ」という誤解が生まれそうなことです。
カセットテープの音は悪くないです。
悪いのは当時のアマチュア向け録音機材です。
これ、たぶん言える人が少ないです(当時から音楽をやり続けている人が少ないから)。
誰もが自身の青春の終了と共にやめていく趣味ですから。

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