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24 レコードの楽しさと

リリース前から話題になっていた、山下達郎のニューアルバム「Softly」。11年振りの新作ということ、そして昨今のCityPopブームと相まって盛り上がりを見せている。メディアへの露出も含め、新作への期待感が否応なしに高まる。

そんな私もニューアルバムを買った。でもCDでは買いたくないとも思っていた。CDは音もクリアだし取り扱いも楽なので、重宝するメディアではあるのだけれど、何とも触手が伸びない。何とも聞く気がしなくなってしまった自分がいた。ただ買うだけ。そんな感覚になっているので、それなら!ということで今回は、アナログ盤を購入した。これが意外と入手するのが難しかった。

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昨今のレコード熱の高まりによって、レコードの需要が高くなっている。一説によるとCDよりもレコードの方が売れているとも。そんな中でのリリース。私は発売日を勘違いしていて7月だと思っていた。が、6月22日ではないか。そのことを当日知った。ネットでの検索でももうすでに売切で注文できなかった。なので慌てて大手CDショップへ。発売当日なのにも関わらず、(予想はできたが)すでに売切。何件か行ってみたのだけれどどこもダメ。失意の中、ダメ元で地元のレコ屋へ。そしたら何と売っているではないか!嬉しさのあまりすぐに手に取り買うことができた。入手が難しいという渇望感もあり、手にできた時は何とも言えない気持ちになれた。

自宅へ戻り、早速レコードで聞いてみた。何とすごい瑞々しさを湛えた音なんだろうかと。音の粒がこんなにも聞き手に入り込んでくるような感覚は久しぶりだった。今のレコードと80年代までのレコードとは、録音方式やプレスに関しても違いがあるので当然かもしれないが、こんなにも違うのかと感じることができた。勿論、山下達郎の音への拘りもあるのだろうが。快感に酔いしれ一気に聴くことができた。この感覚はCDではまずない。アナログだからこそ、1曲も飛ばさずに聴く。この醍醐味があったからかもしれない。

自宅の再生環境もここ数年で大きく変化した。CDの再生は、PC外付けのCD読み込み装置のみ。自宅オーディオ、車のオーディオでCDを聴く環境はない。すでにデータもしくはストリーミングでの音楽の楽しみが主流となっていたため、CDの再生環境が整っていないことも、CDを買わないという選択肢になっていた。

レコードの再生環境はというと、久しぶりにターンテーブルを購入しじっくり聴き込むための環境が整っている。なので私にとってはレコードの方が聴く環境として整っているのだ。だからそんなこともあり、今回レコードを買った。

せっかくだから、レコードの音をデジタル環境でも聴けるようにということで、PCへ取り込みデジタルトランスファーを試みた。これがまた非常に難しかった。何が?というと音の瑞々しさの再現がということだ。最初に聞いた感動をどうしても再現したいと何度も音の調整を試み、データ化してみたが、取り込んだ音、そして音楽フォーマットの音、どれも変換に際して異なる音を作り出してしまう。どうやっても私のイメージした音にならなかった。(これには私の技術やPC環境によるものも大きいとは思っている。)

それもそうだろう、アナログとCDでは再生できる音が違うのだから。人の聞こえない音まで再生するアナログにはどうやっても追いつかないのだろう。何とか妥協できる音にしてデジタルでも聞いている。80年代以前のレコードにはない奥深さがこのレコードにはあるように思っている。

このレコードを買って嬉しかったのは、アルファムーンレコード時代から変わらぬレコードレーベルデザインだったことだ。あのレコードレーベルがターンテーブルを回っているのが好きだった。昔と変わらない絵がとても嬉しかった。

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よくよく考えてみると、山下達郎との出会いは、「RIDE ON TIME」からだ。そこからずっと追いかけてきたが、私のスタートはレコードだった。夢中になって聞いた一番のお気に入りのアルバム「Big Wave」もレコードだった。なのでレコードに回帰するは当たり前のことだったのかもしれない。

11年振りの新作で山下達郎本人も69歳になった。次の新作まで11年後と仮定すると次は80歳。もしかすると(失礼なことは十分承知の上ですが)、最後のオリジナルアルバムかもしれないという思いもよぎり、レコードで聴きたいという衝動もあった。

兎にも角にも、レコードの奥深さをまざまざと見せつけられたし、楽しさがより増したように思う機会となった。

CDのように簡単に曲を飛ばしたりすることなく、1曲1曲をじっくりと味わうような感覚を思い出すことにもなった。原点回帰。

私の音楽の始まりはレコードだったのだから。

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