見出し画像

妻と「友だちとして最後の日」に食べたカレー

妻との結婚を意識したきっかけは、一緒に囲む食卓でした。

この人と一緒に食事をする時間が幸せだ!」と思えたからです。

なれそめ


妻と僕が交際を始めた2015年の夏は、僕の約40年間の人生の中でも1位、2位を争うくらいに暗い時期でした。この年の6月、僕は意気揚々と転職をしたものの、入社後まもなく体調不良に苦しみ、出社ができなくなりました。体を一番に考え、転職後わずか3週間で退職をしました。31歳、無職。将来には不安しか見出せませんでした。

近所の顔見知り程度だった妻と仲良くなったのは、僕が退職をして悶々としていた時期のことでした。ちなみに、妻と出会ったのは、商店街にある行きつけの喫茶店。妻も僕も、そのお店の常連客だったのです。

妻と僕がよく通った、新丸子の喫茶店「SHIBA COFFEE

近所に住んでいたとはいえ、当時の僕は仕事や趣味でほぼ1日中外出しており、家にいるのは夜だけの生活を送っていました。そんなことから、妻と僕との間に接点はほとんどありませんでした。ところが僕が療養をしていたことで家にいる時間が増え、必然的に地元で過ごす時間も増えました。このことが、妻と僕との距離を縮めることになりました。

体調が良いときには近所を散歩したのですが、その際に不思議なくらい、妻とばったりと会いました。信号待ちをしていたとき、100円ローソンに行ったとき、商店街を歩いていたとき、あらゆる場所で妻と会うんです。そのときは妻の連絡先すら知らなかったので、待ち合わせなどできません。こうした偶然の接触を機に、妻とだんだんと会話をするようになりました。僕の体調も良くなってきて、ひとり暮らしの僕の部屋で一緒に食事をする仲に発展したのでした。

近所の顔見知りだった妻と一緒にごはんを食べるようになった


2015年、僕の趣味は料理で、よく自炊をしていました。会社員のかたわら、「料理研究家」を名乗ってブログにレシピを載せていましたから。

それまでは、自分のために料理をしていたのに、「これからは、妻のためにごはんを用意できる」。そのことが嬉しくて、たまりませんでした。「喜んでくれるかな」と妻の笑顔を思い浮かべながら買い出しに行ったり、キッチンに立ったりする時間は、僕の癒しでした。人のために何かをしようとすることが、こんなにも気持ちの良いことだなんて…。こうして妻と僕は、食卓を囲むようになりました。

当時、僕が妻のために用意した夜ごはんの写真です。

献立は、ごはん、おみそ汁、鮭のムニエル、サラダなど。鮭は、地元の食料品店で購入しました。

みそ汁にみそを入れすぎて、しょっぱい。

ローストビーフやたきこみごはん、プラムゼリーなど、ほかにもさまざまな料理をつくりました。

プラムゼリー

妻との食事を通じて、「幸せとは何か?」を考えるようになった


はっきり言って、僕にとって何を食べるかはさほど重要ではありませんでした。妻と食べることのほうが、100倍、1000倍、僕にとって大切でした。

食事を一緒にできる人がいる喜びよ!

妻との食事を通じて、僕は人生における幸せとは何かを見つめ直していました。

「どこどこ会社」の自分、「一等地で働く」自分、「いくら稼ぐ」自分など、僕は自分を形容する言葉ばかりを求めていました。どこか強がって生きていたし、ありのままの自分を出すのが怖かったのです。

ところが、病気になって会社を辞めた以上、素の自分で生きるかありません。強がろうと意固地になっていた僕の気持ちを和らげたのは、妻との食事の時間でした。

妻と「あーでもない、こーでもない」と他愛ない会話をしながら、ごはんを食べる。たったこれだけのことなのに、どうしてこんなにも満たされるのだろう。

妻と知り合い、仲良くなり、ともに食事をするうちに、僕は「○○の」といった自分を飾る事柄を取り払い、素の自分をさらけ出せるようになってきたのです。この頃には、将来への不安が和らいで、希望に満ちあふれていました。

無職だし、体は本調子ではないし、仕事や生活がどうなるかわからない。

この状況でなぜ希望を持てるかが不思議です。それでも僕が幸せを感じることができたのは、妻の存在があったからでした。

この人との食事の時間が、この先もずっと、ずっと続いたらいいのに


そして、僕はこう考え始めました。

この人との食事の時間が、今だけではなく、この先もずっと、ずっと続いたらいいのに

食事を通じて、僕は密かに妻に恋心を抱いたほか、妻との結婚も意識していました。まだ、交際すらしていなかったのに。仕事も、どうなるかわからないのに。

その後、妻と僕は交際をスタートし、2015年の12月に、籍を入れました。交際4ヶ月での結婚でした。

友だちとして最後の日に食べたカレー

思い出すのが、妻との友だち時代最後に食べたカレーの味です。この日、妻が自宅でカレーをつくり、僕の家まで鍋ごと持ってきてくれたのです。

カレーにゆで卵をつけるのが、妻の食べ方

僕はあまりカレーが好きではなかったのですが、この日のカレーは美味しすぎてお代わりしました。妻が半熟の卵をトッピングしてくれたので、とろーりとした黄味とカレーを混ぜていただきました。このカレーを一緒に食べた後、僕は意を決して妻に「好きです」と伝えたんだっけ。とても、緊張しました。甘酸っぱい思い出です。

結婚後も、カレーはよく食卓にあがります

子どもたちのにぎやかな声を聞きながらの食事も、いいものだね!


結婚後の2016年冬、妻が長男を妊娠しました。妊娠中も、子どもが生まれてからも、妻との食事の時間はかけがえのないものです。

妊娠中の食事
ワンプレート

2023年4月、我が家には元気いっぱいな息子たちがいます。僕の部屋で一緒にごはんを食べていたときは2人だけだったのに、いまでは家族が4人になりました。

さすがに夫婦2人だけの食事は前のようにはとりづらくなりましたが、子どもたちのにぎやかな声を聞き、床に散らばったおもちゃを眺めながらの食事も、いいものです。

お読みくださり、ありがとうございました。

そのべゆういち

charoma0701@gmail.com

■なれそめは、ブログにも綴っています。


ご支援をありがとうございます!いただいたサポートは、子育てをテーマにした企画や取材費に充てさせていただきます。