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『水面を滑るように走る』私の理想のスプリンター・末續慎吾

私は、高校卒業後、来月55歳となる現在まで37年間、長距離走に取り組んで来ました。なぜ、そのような書き方をするかというと、高校生までは、長距離走は苦手で、特に、高校時代は、陸上部で短距離選手でした。

小学生の頃から人よりも速く走れることに気づき、いわゆる『かけっこ』が得意な人でしたので、短距離選手=スプリンターを見る目は、普通の人よりも、強い興味を持ったものであったと自覚しています。

その私が、これまでの人生の中で、「こんな風に走りたいな〜」と一番強く思ったのが、今回ご紹介する末續慎吾選手です。

私が、中学校の陸上部のコーチを始めた2003年のパリ世界陸上・200mで、日本選手初の銅メダリストとなった末續選手。以降、私の中で、常に、その動向を注目する選手となりました。

また、私が2006年から所属しているマスターズ陸上のスプリントチームが拠点としている東海大学湘南キャンパスを、彼が拠点にしていたことも、注目する度合いを高めた理由となっていました。

私が、末續選手の走りを理想のスプリントとして考えているのは、『水面を滑るように走る』と表現出来る、滑らかな走りにあります。

身体の上下動が無く、一歩一歩、バネを利かすように、水平に進んでいく。。。まさに、水面上を、水しぶきを立てずに走っていく、そんな美しい走りを目の当たりにしている感じです。

その走りが際だっていたのが、前述パリ世界陸上前に出場した2003年の日本選手権200mでの走りでした。そのレースで、今も残っている、20秒03という日本記録を樹立しましたが、後半100mの走りは、まさに、上記水面を滑るように走っている印象でした。以下にその映像を貼付しておきます。

末續選手のランニングフォームは、いわゆる、クラシカルなスプリンターの動きとは、異なっています。

つまり、『腕は前後に大きく振り、膝から上を高く上げながら、地面を強く蹴って走る』という古典的なフォームとは逆の走りになっているのです。

腕振りはどちらかというと、左右方向に振られ、膝から上を上げる意識は持たず、接地時に地面を押すように走る、というように表現出来る走りと言えます。

その為、一般の方から見たら、「個性的な走りだな〜」と思われる走りですし、私自身も、初めて、彼の走りを見た際には、そのような印象を持ちました。

しかし、その走りにも、彼が考えるスプリントの理想が、反映されていると思っています。腕振りは、身体の上下動を極力抑える為に、腰の位置でコンパクトに振り、前方向に速く進む為に、両足が地面から離れている時間(滞空期)を短くする=膝を高く上げず、接地後、後ろに移動した脚を素早く前に振り戻す、というランニング技術的な要素が、彼の走りには、盛り込まれているのです。

私が、末續選手を理想のスプリンターと思うのは、そのような走りの理屈を、常に考え続けながら、陸上競技に取り組んでいる姿勢に、深く共感する気持ちを抱いているからです。

末續選手は、今でも現役選手として、競技に取り組んでいます。その姿を見ていると、「本当にかけっこが好きなんだな〜」と思えて、「自分もひたすら走っていこう!」と、より前向きな気持ちになれます。

これからも、私の中の理想のスプリンター・末續慎吾選手に注目していきたいと思います。

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