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(サッカー)2023.11.11_J1_アルビレックス新潟×FC東京@デンカS


introduction

この週末の日本列島は、シベリア高気圧の勢力が一気に強まる影響を受け、全国的に季節が一斉に進むという。特に日本海側は冷えこみが厳しくなり、寒さ対策はマストなのだそうだ。関東民にとっては「ふーん、そうなんだ」で済んでしまう予報だが、この週末の自分に限っては他人事ではない。まさにこの週末、我らがFC東京はアルビレックス新潟とアウェイでのリーグ戦を控えているからだ。家庭の都合で遠征が厳しい中、このアウェイ・新潟戦は、出発が早すぎず、帰宅も遅すぎない条件で日帰り可能なギリギリの範囲。そんなわけで、この新潟アウェイの週末だけは今季の日程発表時から押さえてあったのである。11月ともなれば冬の到来は覚悟の上。寒さ対策をした観戦装備を整え、いざ新潟へと向かうことにした。

今日は乗車券に「週末パス」を使えるため、使い慣れた新幹線eチケットではなく特急券を別途調達。少しでも料金を節約するべく、上越新幹線には大宮から乗車だ。自分が利用する「とき」は大宮を出たら新潟まで止まらない速達タイプで、大宮の自販機で買ったペットボトル飲料を飲み切らないうちに新潟に着いてしまう。試合までは時間に余裕があったので、まずは「ぽんしゅ館」で日本酒を味わい、続いて万代シテイバスセンターまで歩いて名物のカレーを食して時間を潰した。ちなみに、どちらも東京ファンでごった返していたのは言うまでもない(笑)。

再び新潟駅へ戻り、北口から南口まで地上を歩いて抜けられるようになっているのに驚きつつ、シャトルバスに乗ってデンカビッグスワンスタジアムへ。ここに来るのは2015年シーズンのアウェイ戦で来て以来、8年ぶりだ。バックスタンド上層の自由席のアウェイ寄りに腰を落ち着ける。どれほど寒いのかと身構えていたが、雲間から青空が覗く好天となり、寒さ対策をしっかり準備してきたこともあって快適に観戦することができた。

J1リーグは今節が第32節で、残りは3試合。我らがFC東京は現在勝点「39」の11位だ。10月の中断期間開けは横浜FCに0-1、サンフレッチェ広島に1-2と連敗を喫しており、昨年以下の成績に終わることが確定している。チームとして何を目標にして、どのようにモチベーションを維持するのか、選手もやりにくいだろうし、観る側にとっても難しさを感じる試合だ(無論、それは覚悟の上で新潟に来ている)。今節は前節退場となった仲川と、警告累積のエンリケが出場停止。代わりに渡邊が右のウイング、木本がCBに入るようだ。俵積田がベンチスタートとなり、展開次第では交代カードの切り方も重要になるだろう。

対するホームの新潟は勝点「40」の10位。J1復帰シーズンながら、ここまでは10勝10分11敗とほぼイーブンな戦績でシーズン終盤を迎えている。夏の移籍市場ではチームの中心的存在でもあった伊藤がベルギーへの海外移籍でチームを離れ、成績への影響も懸念されたが、8月の中断期間明け以降も目立った不振に見舞われることはなく、特に9月以降のリーグ戦は3勝3分で6戦負け無しと好調。前節はアウェイで京都サンガF.C.を1-0で下している。東京にとっては前節に順位が入れ替わったチームとの直接対決であり、今節勝利して再び10位浮上を狙いたいところ。4月の味スタでの試合では2-1でどうにか勝利しているが、アウェイでのリターンマッチとなる今節は、新潟サポーターの作る雰囲気もあって難しい試合になるだろう。

1st half

立ち上がりからチャンスを作ってきたのはホームの新潟。7分に左サイドを起点にした組み立てから中央で高がミドルを撃ちチャンスを作ると、直後の8分には右サイドからのクロスが流れたのを谷口が回収してハーフスペースの狭い角度からパワーシュートを狙い、野澤がCKに逃げてどうにか凌ぐ。東京もボールを握れる場面はあり、ポゼッション自体は50:50の互角に近い展開だが、ゴール前での形を作れるか作れないかの違いが出ている。18分には新潟が右サイドで組み立て、ハーフスペースからの折り返しに谷口がダイレクトでシュートへ持ち込むが、これも僅かに右に外れて事なきを得る。

25分、東京は渡邊が前に出ていき新潟のバックラインに圧力をかけ、GK・小島のエラーを誘うが、あと少しのところでボールを引っ掛けられず。これを契機に東京がボールを支配。東京はいつもどおりにサイドからボールを運んでいき中へボールを差し込むチャンスを窺うが、新潟の中が堅く、肝心のディエゴにボールがなかなか収まらない。東京はまずはハーフスペースまで進出したいが、新潟の反撃を警戒してのことか、攻撃に人数をかけられずに跳ね返される時間が続く。

互いにこれといったチャンスを作れないまま淡々と時間が過ぎていき、気がつけば0-0のまま前半終了。前半の終わりごろは新潟が押し返す流れになり、東京としてはほとんど何もさせてもらえなかった印象の強い内容だった。ここ最近の試合でバロメーターにもなっているアダイウトンの内側レーンへの侵入が少なく、ディエゴも相手を背負ってのプレーが大半で、相手のミスをきっかけにしたカウンターくらいしかチャンスの無さそうな雰囲気がある。無失点で済んでいることだけが良いことだが、後半はどうなるか。

2nd half

後半の序盤は東京が相手陣内でプレーする場面の多い時間帯。トップ下に入った松木がゴール前に積極的に顔を出してボールに絡むが、やはりシュートまで持ち込めない。52分には前線でボールを収められなかったディエゴがマークについていた舞行龍ジェームズを倒してしまい、舞行龍ジェームズは足を痛めた様子で交代となる。仕事をさせてもらえず苛立つ気持ちは分かるが、観ていてあまり気持ちの良い場面ではなかった。61分、バングーナガンデがアタッキングゾーンでボールを奪い返し、パスを受けた原川がフィニッシュを狙うが、これは小島が横っ跳びで弾き出すビッグセーブを見せ、ゴールを割らせない。

東京のこの試合最初のビッグチャンスを凌いだ新潟はここから再びエンジンをかける。62分に松田の右からの折り返しに高がヘディングで合わせたシュートは辛うじて野澤の正面を突くが、立て続けの63分にはミドルゾーンでマークの裏を返した谷口がドリブルで持ち運びGKと1vs1に。しかしシュート直前で木本がカバーに入ったことも幸いしたか、シュートはゴールの僅か右に外れ、スタンドからはここまでで一番の大きな溜息が漏れる。

良い流れのまま押し切りたい新潟は先に選手交代。松田と太田の両サイドアタッカーを下げ、三戸と小見を投入。2人とも突破力のある嫌な選手だ。一方の東京は、69分にバングーナガンデがハーフスペースからクロスを入れる際に足を痛めた様子で自ら交代をリクエスト。またしても負傷離脱となりそうな様子だ。バングーナガンデと同タイミングでアダイウトンが下がり、白井と俵積田が入る。その後は両者これといった形を作れないまま時間が過ぎ、追加の選手交代を使って試合は終盤の攻防を迎える。

85分、東京は白井の右からのクロスを途中出場の熊田が落とし、エリア外から渡邊がミドルで狙うがシュートは枠の左。90分、新潟は三戸のドリブルでの前進から東京をゴール前に押し込むと、右からの折り返しに途中出場の長倉がタイミング良く飛び込んでヘディングシュート。一瞬、やられたと思うほどのビッグチャンスだったが、これを野澤が足に当てて弾き出すスーパーセーブ。バックスタンド席の多くの新潟ファンが頭を抱えて悔しがるほどのピンチ脱出で九死に一生を得る。追加タイムも新潟が三戸のサイド突破を中心に東京ゴールを攻めたてたが、鋭いクロスはいずれもフィニッシュに繋がることはなかった。結局、0-0のまま試合終了。ホイッスルの瞬間、スタジアムは煮え切らない雰囲気のなんともいえないムードに包まれた。東京は最後は防戦に回ったものの、どうにか勝点1を持ち帰ることになった。

impressions

東京にとっては命拾いをしたといえるドローだった。試合を通じてのボールポゼッションが「58%対42%」という数字が示すとおり、新潟がゲームを支配し、ゴールにより多く迫ったといえるが、東京が最後の最後で粘った。一方、東京はカウンターなどで対抗することもできず、攻撃の迫力を作ることができなかった。10月中旬以降のリーグ戦2試合での内容があまり良いものではなかったので、正直なところあまり強い期待はしていなかった(突然見違えるように良い試合をするときもあるのが東京なので、その可能性に賭けてもいた)が、残念ながら事前の想定に近い結果となった。アウェイということも考えれば、無失点で終えられたことの方を良しとすべきなのかもしれない。

新潟は90分間を通じて良いサッカーをしてきたと思う。トップ下の鈴木がボールを収めてサイドに開き、ハーフスペースからの折り返しでチャンスを狙う意図が明確で、なおかつそれをコンスタントに遂行していた。1トップの谷口だけでなく、サイドアタッカーやボランチも多くゴール前に顔を出して迫力があったが、フィニッシュの精度だけが足りなかった。新潟の得意なサッカーは実現できていただけに、できれば勝って終えたい試合だったはずだ。0-0というスコアがスコアなだけに、新潟サポーターのリアクションはどちらかといえば「がっかり」という感じだったが、たった1つのシーズンの間ですら戦い方の安定しないチームをウォッチしている身からすると、新潟の悩みはとても羨ましく感じる(笑)。

東京は守備に関しては悪くなかった。ピンチもあるにはあったが、基本的には横から入ってくるボールに対して跳ね返すことができていた印象。エンリケの出場停止という状況ではあったが、代わりに出場した木本が充分にカバーしてくれた。ここ最近の東京の傾向として、裏のスペースを狙われると崩れやすいという特徴があるが、今日の新潟がそれほど裏で勝負してこなかったのも幸いだったかもしれない。そして何より、終盤の新潟の決定機を止めた野澤のパフォーマンスに今日も救われた。夏場からゴールマウスを守るようになったばかりにも関わらず、ここ最近の東京で最も安心して観ていられる選手の1人になった。

攻撃に関しては、今日もアイデアに乏しい内容に終わった。90分を通じての決定機といえるような場面は、61分の原川のシュート場面くらい。枠内シュート数も僅か2本に終わった。仲川が出場停止の中、渡邊を右サイドに回し、俵積田をベンチ待機とした采配は(90分トータルのマネジメント上では)良い判断だったと思うが、俵積田が途中から出てきてどうこうできるような内容でもなかった。調子が悪いときの東京にありがちな「ディエゴに組み立ての負担が掛かりすぎる問題」を未だに解決できていないのが課題と感じる。松木がゴール前に入っていってフィニッシャーの役割を果たそうとしてくれてはいたが、松木の本職はそこではない。今のシステムに合ったスカッドが組めていない(そもそも組める陣容に無い?)のが問題と感じた。

今日の試合を終えて東京は勝点を「40」に乗せたが、勝点で新潟を追い越すことはできず、11位どまり。9位の川崎との勝点差を詰めることができず、年間順位でボトムハーフに終わる見込みはますます高まった。例え成績が良くなくてもサッカーの内容に希望を見いだせるのであれば救いはあるが、実際のところは、シーズン途中での監督交代でそれまでの積み上げがリセットされ、クラモフスキー監督体制になって勝点はそこそこ取れるようになったものの、やりたいサッカーが定まっていない(ように見える)のが現状だ。今日に関してはアウェイでのドローなので、悪い結果ではない。しかし、決して満足のいく試合だったともいえない。「内容は悪かったが、アウェイでドローだからOK」という評価が成立するのは、シーズンの序盤や、数値目標に向けて詰めの計算ができる段階に限った話だからである。

個人的には、久しぶりに新幹線を使ってのアウェイ現地観戦となり、遠征気分を味わうことができた。試合自体は微妙な結果に終わったが、アウェイは行き帰りの過程も含めて全てを楽しめるかが重要で、日帰りで往復できる範囲の中では楽しめた方ではないかと思っている。試合後は長居せずに席を立ち、シャトルバスに早めに乗り込んだため、新潟駅にも思ったよりは早く戻ってこれた。コンビニで調達した缶ビールとつまみを戦利品にして、また遠征をしたいなあ・・・と願いつつ、東京行きの「とき」に乗り込んだ。

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