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(サッカー)2023.10.28_J1_FC東京×サンフレッチェ広島@味スタ


introduction

カレンダーは10月最終週に入り、秋が深まってくる時期。例年ならばそろそろコートを羽織る日が増えてくるタイミングだが、今年は昼間に気温が20℃台中盤まで上がる日も多く、冬の気配がちっとも見えてこない。今日の東京もまさにそんな一日で、午前中から強い日差しが降り注ぎ、日向であれば下手すれば半袖でも良いのではないかというくらいだ。そんな中、シーズン佳境を迎えるJ1リーグは第31節の試合を消化する。我らがFC東京はホーム・味スタにサンフレッチェ広島を迎えての一戦だ。

9月からホームゲーム3試合にわたり続いてきたクラブ設立25周年記念試合は、この試合が最後。今日は6月の横浜F・マリノス戦に続き今季2度目の「青赤ストリート」が開催され、試合前の飛田給駅前は歩行者天国となった。自分は相変わらずのキックオフ20分前到着を狙って現地に向かったため恩恵はほとんど得られなかったが(笑)、観客数は30,981人となかなかの入り。今日は毎年恒例のテディベアデーだったが、来場が遅かったこともあり、当選はおろか、抽選券を受け取ることすらできなかった。味スタに通い始めて20年が経つが、未だにこのテディベアをゲットできた経験が無い。

東京は現在勝点「39」で10位。前節はアウェイで横浜FCに0-1で敗れ、9位の川崎フロンターレとの勝点差が離された一方、後続順位のチームとの勝点差がじわじわと詰まってきた。J1残留は既に決まっているので、順位を落としたところで特に大きな影響はないのだろうが、これ以上ランクを落とすのはさすがに「見栄え」が良くない。また、現時点で到達可能な最高勝点は「51」であり、これ以上勝点を落とすと目安の50ポイントへの到達は不可能となる。難しいチーム状態ではあるが、ここはなんとか踏ん張りたいところだ。今日は前節出場停止だった仲川に加えて松木もスタメンに名を連ね、俵積田を切り札としてベンチに置ける状況。長友は依然としてベンチ外だが、どのような試合展開でもある程度は対応可能な18人を揃えてのスタートとなった。

対する広島は現在勝点「48」で5位。昨季からチームを率いるスキッベ監督の指揮2年目のシーズンであり、チームとしては成熟の時期も間近。夏の中断期間明け以降は5勝2分2敗の良いペースで勝点を積み上げている。リーグタイトルの可能性は消滅してしまったが、上位の勝点差は詰まっており、更に上の順位を目指せる状況だ。スタメンは前節のセレッソ大阪戦(0-0のドロー)から2人が変更となっているが、今季の広島におけるコアなメンバーはほぼほぼスタメンに入っており、ぱっと見では「いつもどおり」という印象だ。

1st half

前半は立ち上がりから広島のチャンスが続く展開となる。まずは7分、左CKにゴール正面の佐々木が頭で合わせるが、これは枠の上。9分にはカウンターからの縦パスに抜け出した加藤がドリブルでゴール前まで持ち込み、PA内左のやや狭い角度からフィニッシュに持ち込むが、野澤が反応してセーブ。12分には高いDFラインの裏を川村に抜け出され、フィニッシュまでは持ち込ませないものの、こぼれ球を拾われて再び加藤にシュートを許す。いずれもブロックに入ってピンチとはならないが、妙に守備が軽く、相手に簡単に撃たせ過ぎている。

東京は仲川が高い位置からボールをチェックしに行き、ある程度は効いているように見えるが、広島も長いパスを使ってプレスを無効化しながら攻撃。22分にはGK・大迫からのフィードをエゼキエウが収めてサイドへ展開し、東が中にカットインしてシュートへ持ち込むが、幸いにも野澤の正面。25分には中央付近でボールを受けた川村が力強いドリブルで前に持ち出し、左サイドの東へ展開。東がすぐさまアーリークロスを入れると、裏のスペースに入ってきた加藤がダイビングヘッド。しかしこれも野澤がワンハンドで枠外に掻き出すスーパーセーブ。広島の鮮やかな速攻が出た場面だったが、野澤の度重なるファインプレーでゴールを割らせない。

37分、東京は右サイドに開いた渡邊がボックス内に走りこんだディエゴへボールを渡し、ディエゴがハーフスペースから中へ折り返す。するとそこにフリーで詰めてきたバングーナガンデがダイレクトでパワーシュート。これはもらった!と思った場面だったが、シュートはクロスバーに跳ね返されてゴールならず。東京にとってはこの試合最初の決定的なチャンスだったが、仕留めることができない。

39分、広島は左サイドの東がボックス内にパスを送り込み、ニアに走りこんだエゼキエウが合わせるが、またしても野澤がセーブ。前半だけで何点防いでいるのか分からないくらいの活躍ぶりだ。結局これが前半最後のビッグチャンスとなり、0-0のまま前半終了。互いに攻める場面はありながら、より多くのシュートへ持っていくことができているのはアウェイチームの方だ。東京としては苦しい内容だが、それでもスコアレスで耐えることができたのは大きい。後半に流れを持ってくることはできるだろうか。

2nd half

均衡が崩れたのは、後半が始まって間もない47分。広島が左サイドから中に入れたボールのこぼれをクリアしようとしたバングーナガンデの鼻先で右WBの中野が先に触り、ボックス内に送り込む。するとこれをゴールほぼ正面で待っていた加藤がトラップ。ボールをキープしたまま素早く反転してマークについていた森重と入れ替わり、すかさずシュートをゴールに叩き込んで0-1。なかなかチャンスを生かせていなかった広島があっさりと先制に成功する。後半に切り替えて臨みたかった東京は、いきなり出鼻を挫かれた形だ。

しかし東京もどうにか盛り返す。61分、東京は松木のパスを受けて左のハーフスペースに侵入したアダイウトンが速いクロス。中に詰める選手がおらず、この決定機は生かせないが、続く62分に原川のスルーパスからアダイウトンが左のハーフスペースまで持ち込み、クロスを中に送り込む。するとニアで荒木がカットしたボールがゴールに転がり込み、オウンゴールで1-1。繰り返しのハーフスペース攻略から東京がタイスコアに戻す。オウンゴールとはなったが、クロスに対して中央に仲川が詰めており、どのみち1点になったであろう場面だった。

この後は両チーム共にオープンな攻防が続き、どちらに1点が入ってもおかしくない展開に。64分にディエゴがドリブルでボックス内に持ち込みシュートを放てば、65分には広島も中盤からの縦パスを受けて最終ラインの裏を取った加藤がファーサイドを狙ってふわりと浮かせたシュート。これは僅かにゴールの左に外れ、危うく失点を逃れる。この時間帯が勝負と見たか、東京は72分にアダイウトンを下げて俵積田を投入。スペースのある状況で勝負を決めたい。

しかし、エアポケットが待っていたのはその直後だった。75分、東京は自陣で広島のミスパスをインターセプトした原川がダイレクトで縦に付けようとしたパスを再び広島がカット。ここからショートカウンターが発動。中野からのパスを受けた満田がドウグラスとのワンツーで最終ラインの裏を取り、シュートをニアに流し込んで1-2。東京にとってここからというタイミングで広島が勝ち越しに成功する。

よもやの勝ち越しを許した東京は攻勢を強める。78分にはディエゴが単独でゴール正面にシュートコースを作り、フィニッシュまで持ち込むが、惜しくもGKの正面。直後の79分にはそのディエゴを下げ、熊田を1トップに。前節ほとんど時間を与えられなかった熊田にとってはアピールのチャンスだ。その熊田は下がり目の位置でパスを受けて捌く役割を担い、リズムを作る。チームとしてもロングボールを使ってボックス内に早めに入れ、なんとしても1点を取りに行く姿勢は見える。

後半ATに入った直後の左CKを得た東京は、ゴール正面に入ってきたボールをエンリケがヘディングで合わせるが、強く叩きつけたシュートはバウンドして枠の上に外れてしまい、この決定機もゴールならず。スタンドからは大きな嘆息が漏れる。この後も攻め続けた東京だが、自陣での繋ぎの中でトラップミスを奪われかけた仲川がボールを取り戻そうとしたスライディングが相手選手の足にもろに入ってしまい、仲川は一発退場。これがこの試合最後のハイライトとなった。このまま1-2で試合終了となり、広島が逃げ切りに成功。東京は前節に続き2連敗となり、ゴール裏からは不満を表すブーイングが飛んでいた。

impressions

両チームの状況の違いから来る「勢いの差」を感じる試合だった。試合展開自体は東京が勝ってもおかしくないものだったように感じたし、実際、4月に行われたアウェイでの試合では広島が先制しながらも東京が逆転勝利しているが、同じような敗戦を二度繰り返すほど上位チームは甘くない。広島とはここ近年相性は悪くなく、公式戦で広島に最後に敗れたのは4年前の2019年8月だったが、本日はそれ以来、8試合ぶりとなる敗戦。要所をきっちり押さえられて勝点3を献上してしまったところに、チームとしてのバイオリズムの低下、いわば「勝負弱さ」を感じずにはいられない。

広島は東京のバックライン近辺に生まれるスペースを執拗に突く狙いが顕著だった。シャドーの位置でスタメンに入った加藤とエゼキエウはドリブルでの持ち運びからゴール前への顔出しなど、ボールの保持・非保持に関わらず空いたスペースで動き回ることで東京の守備を混乱させていたし、周囲の味方選手もそれを理解してサポートしていたように感じる。特に存在感を放っていたのはやはり加藤だ。今夏の移籍市場でセレッソ大阪から移籍し、ユース時代に所属した古巣へ戻ってきた選手だが、移籍前よりも更にアタッカーとしての脅威が増しているように感じた。広島の攻撃陣は外国籍選手も多くポジション争いは激しいと思うが、その中でスタメンで出られているのも納得のいくパフォーマンスだった。

東京は前節の守備の課題を生かせなかったのが最大の敗因だ。失点の場面に限らず、自陣でスペースを与えすぎた。森重は俊敏性で勝る相手を捕まえきれなかった。今日に関しては1失点目の加藤に反転を許した場面がそうだ。年齢的な部分もあるので仕方が無いが、かといって味方がそれをカバーできているわけでもない。エンリケは森重の相方としては一番手なのだろうが、前への意識が強すぎるのか、DFラインにギャップを生んでその後方を突かれることがある。何より問題なのは、この課題が昨日今日で露見したわけではないということだ。前節の横浜戦の失点は、1トップの選手にボールを収められてから、中盤を追い越して裏のスペースへ飛び出したボランチの選手にパスを通されてフィニッシュを許す形だったが(マルセロヒアン→井上)、今節も似たような形で失点してしまっている(ドウグラス→満田)。同じような失点を繰り返していては、勝つことは難しい。

攻撃に関しては、そんなに悪いとは思わなかった。仲川は高い位置からプレスをかけて相手に制約をかけられるのはもちろん、攻撃でも出し手と受け手の両方で多く顔を出してくれるので、リズムは作りやすかった。後半は先制を許したが、アダイウトンがサイドに張り付きにならず、ハーフスペースへ入っていく動きができており、これが同点弾に繋がった。再度勝ち越しを許した終盤も、出しどころに迷うことなく割り切った攻撃ができていたし、熊田も前節よりは時間を与えられた中で良いポストプレーを見せていた。結果は出なかったが、前節ほどストレスの溜まる内容ではなかったのも確かだ。悔やまれるのは、2失点目の端緒となった原川のパスミスだろう。相手のパスミスをダイレクトで縦に出そうとしたのが裏目に出た形だが、そこまで攻め急ぐような局面ではなかったように見えた。プレー選択の的確さについては課題といえそうだ。

今節の敗戦により、東京の残り試合での最大到達勝点は「48」となり、目安の勝点50は勿論、昨季のリーグ戦最終勝点「49」を下回ることが確定。順位でもアルビレックス新潟に抜かれて11位に後退した。毎節のように出てくるチームの課題を消化しきれないまま、シーズンも残り3試合。停滞を感じるシーズンの行く末がどうなるのか、不安は募る。試合後には来季から使用されるクラブの新しいエンブレムが発表されたが、その決定の過程に納得の行かないファンは多いようで、ピッチ上でスピーチをした川岸社長には先ほどの選手たち以上に厳しいブーイングが浴びせられた。個人的にエンブレムのアップデートにはポジティブな気持ちでいるが、こういう形になってしまったのは残念だ。ピッチ内外でクラブの目指す未来が間違っていないとしても、今目の前に横たわる現実とは確実にギャップがあり、それに違和感や不満を持つ人が少なくないのだろうと感じる光景だった。

来週末はルヴァンカップの決勝が行われる関係でリーグ戦は休みとなり、次節は2週間後。東京は今節順位の入れ替わった新潟とアウェイで対戦することになる。残り3試合、何を目標に戦うのかは分からないが、このまま漫然とシーズンを終えて良いはずはない。次節は仲川とエンリケが出場停止となり台所事情が苦しくなるが、難しい状況だからこその新しい発見があることを期待したい。

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