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(サッカー)2024.3.2_J1_FC東京×サンフレッチェ広島@味スタ


introduction

2024年最初の現地観戦は、我らがFC東京のJ1リーグ・ホーム開幕戦。例年であれば1月か2月に手近な所でバスケ観戦などして「観戦初め」とするところだが、今年は色々あって3月まで現地観戦から遠ざかっていた。そんなわけなので、京王線に乗って飛田給で電車を降りても、なんだか地に足が付かないような気分(笑)。新シーズンの期待感に心を躍らせるというよりは、昨年の続きを観に来ているかのようなテンションだ。しかし改札口を出たところには新エンブレムの描かれた大きな横断幕が掛かっており、新たなクラブの歴史が始まったことを利用客に教えてくれている。

春の足音が聞こえてくる季節とはいえ、気温の変化が激しいこの時期。果たして本日は、気温10度という中での試合だ。防寒対策を講じてきたとはいえ、久しぶりの現地観戦なので寒さは身にしみる。味スタに到着し、いざ入場というところで、今季からQRコードに移行した年間チケットをJリーグチケットから表示できずに苦戦。クラブスタッフの方に尋ねると、どうやら最近リリースされた東京の公式アプリからでないと表示できないようだ。JリーグチケットのQR発券に慣れすぎて、年間チケットの表示方法すら確認していなかった自分の怠慢ぶりには恥じ入るばかり。クラブスタッフの方に深くお礼をして入場。少し時間は掛かったが、どうにか「いつもの」指定席につくことができた。本日の対戦相手はサンフレッチェ広島。遠方のチーム相手ではあるが、ビジター席は半分弱程度の開放で、下層スタンドはほぼ満席。入場者数も32,274人を記録し、まずまずの出足である。

今季の東京は、昨季途中に指揮官の座に就いたクラモフスキー監督にとって2年目のシーズン。1月に行われた新体制発表では明確な順位目標は打ち出されなかったものの、少なくともリーグ11位に沈んだ昨季以上の成績は求められる。また、今季は同じ都内を本拠地とするFC町田ゼルビアと東京ヴェルディが揃ってJ2からJ1に昇格。成績面だけでなく、スポンサーの増強などの営業面で着々と積み上げを図ってきたこの2つのライバルチームより上の成績を残すことも、また今季の重要な命題といえるだろう。

開幕戦となった2月23日の前節、東京はアウェイでセレッソ大阪と対戦。常に先行を許す難しい展開となった東京だが、今季鹿島アントラーズから期限付き移籍で加わった荒木の2ゴールの活躍により、辛くも2-2のドローに持ち込んでいる。今節は、前節からスタメンを2人入れ替え。前節、19歳にして開幕スタメンを勝ち取ったCBの土肥がメンバー外となり、森重がスタメン。また俵積田はベンチスタートとなり、ドイツのウニオンベルリンから期限付き移籍で加わった遠藤が初スタメンでのデビューとなる。

対戦相手のサンフレッチェ広島は、スキッベ監督の就任3年目のシーズン。昨季はリーグ3位の好成績を収め、種蒔きからいよいよ収穫の時期を迎えようとしている重要なシーズンだ。更に今季は新スタジアムのエディオンピースウイング広島へのホームスタジアム移転も行われ、開幕戦は新たな「ホーム」に浦和レッズを迎えて2-0と完勝。大きな自信を持って今節のアウェイ戦に臨んでくることが予想される。スタメンは案の定、その開幕戦と同じ11人をチョイスしてきた。

1st half

東京のスタートのシステムは昨季までと同じ4-2-1-3(実質4-2-3-1)。攻撃ではトップ下に荒木が入り、3トップはディエゴを頂点に、両ウイングを仲川と遠藤が務める、予想どおりのラインナップだ。対する広島も開幕戦と同じ3-4-2-1の並び。シャドウの位置には今季湘南ベルマーレから移籍してきた大橋がいて、立ち位置は1トップのソティリウとほぼ同じラインにいる。開幕戦で2ゴールを挙げたこの点取り屋をいかに抑えるかがポイントになる。

試合の立ち上がりは両者ボールを保持しても無理に攻めたてることはなく、様子見の空気が漂うゆったりとした入り。しかし時間が経つにつれて少しずつアウェイチームがボールを握るようになる。最初のチャンスは時計がだいぶ経っての19分。広島は左サイドでの攻守交代から裏のスペースに出たボールにシャドウの加藤が抜け出し、単独でアタッキングゾーンにボールを運ぶと、帰陣した東京の守備を切り返しで剥がしてフィニッシュ。これはゴール前に詰めていた大橋に当たって枠外に逸れるラッキーな形となるが、ここから両チームのギアが一段上がる。

チャンスはなおも広島に続く。23分、広島は左サイドでの組み立てからのクロスに、ボックス内でフリーとなった加藤が胸トラップからボレーシュート。至近距離でフィニッシュを許すピンチとなったが、これは波多野がストップ。今季、V・ファーレン長崎への期限付き移籍から復帰した守護神がゴールを割らせない。

34分、東京は中盤でのプレスで相手からボールを奪った原川が起点となりカウンターが発動。ディエゴ、遠藤を経由してアタッキングゾーンまで運び、最後は荒木が相手を背負いながらも反転してフィニッシュへ持ち込む。38分には右サイドを攻め上がった仲川がオーバーラップした長友にボールを渡し、長友の折り返しに対してゴール前がスクランブルとなるが、あと少しのところで押し込むことができず。

前半の終盤にかけては再び広島が攻勢をかけ、東京側のコートでボールを支配。東京は回収したボールをポゼッションしたいが、広島の素早いプレスを中心としたファーストディフェンスに対して早い段階で刈り取られ、やや一方的な展開に。しかしどうにか決定機だけは作らせず、0-0のまま前半終了。そこまで悪い内容ではなかったが、最終ラインを高く設定すれば裏を返されるリスクがあり、低く設定すればビルドアップしようとしても後ろが重い、というジレンマが見え隠れする45分だった。まずはボールを握れる時間帯を辛抱強く待ちたい。

2nd half

後半に入ると、東京にも縦の推進力が少しずつ出てくる。最初のチャンスは50分。右サイドでボールを受けたディエゴが単独でドリブルを開始し、相手マーカーをかわしてボックス内に侵入。最後のマーカーを切り返しでかわそうとするが、ピッチに足を滑らせてしまいフィニッシュには持ち込めない。しかしディエゴが作った初めての「らしい」チャンスだ。54分には中央で受けた荒木が反転して入れ替わり、この流れからバングーナガンデがフィニッシュ。ゴール前の場面を増やしていく。

しかし広島もここから攻勢。63分、中盤底の満田からソティリウへの縦の楔のパスを起点に右サイドへ展開すると、中に入れたボールのこぼれを満田がミドルシュート。ゴール右隅の際どいコースを突くフィニッシュだったが、波多野がなんとか掻き出してCKに逃れる。後半最初のピンチだった。

続く右CK、ゴール前の密集に入れたボールを東京がどうにか跳ね返したかに見えたが、プレーが切れたところでVARが介入し、オンフィールドレビュー。ビジョンには空中戦の競り合いの中でディエゴの手にボールが当たる映像が流れ、ホーム側スタンドからはどよめきが起きる。福島主審の判定はPK。キッカーの大橋がゴールど真ん中に強烈なシュートを叩き込み、0-1。大橋の2試合連続弾により広島が先手を取る。

東京のベンチはすかさず動く。遠藤を下げて左WGにジャジャ、ディエゴを下げてボランチに小泉を投入し、松木をトップ下、荒木を3トップの頂点にそれぞれスライド。荒木の1トップは全く予期していなかったので、少し驚きの配置転換だ。

しかしこの交代はすぐさま実を結ぶ。71分、東京は右サイドでボールを持った長友が仲川にボールわ渡してから猛スプリントでオーバーラップ。相手を引き付けた仲川がリターンのスルーパスを出し、長友がハーフスペースでフリーになる。速い折り返しをニアポストで荒木が受けると、マーカーを背負いながら振り向きざまにシュート。これがゴールマウスのニア上を射抜く。荒木の完璧な個人技により、東京がすぐさま1-1のタイスコアに戻す。

追い付いた勢いで一気に逆転へ持っていきたい東京だが、ここで「切れない」のが広島。すぐさまポゼッションを奪い返すと、77分、広島の波状攻撃からサイドの折り返しを森重がクリアした際、森重の足が大橋の足を払うような形となってVARが介入し、この日2度めのオンフィールドレビュー。またしてもPKか・・・と心配しながら判定を見守るが、これはファウルではないと判定されたようでお咎めなし。ほっと胸を撫でおろす。

すると今度は84分、東京は左サイド裏のスペースに出たボールを俵積田が回収。得意のドリブルで速攻を仕掛ける。俵積田がボックスに侵入しようとしたところで広島の荒木に倒され、福島主審はPKの判定。試合終盤での逆転のチャンスにスタンドは更に盛り上がる。しかし松木がペナルティースポットにボールをセットしたところで再びVARのチェックが入り、今度はオンリーレビューの末に判定変更。俵積田のファウルを受けた箇所はPA外だったようだ。スタンドからは不満を示すブーイングが飛び、東京の選手たちも納得いかない様子だが、遠目に見ても際どい判定だったので、映像上そうだったのであれば致し方ない。

判定変更による直接FKのチャンスを生かせず、なおも逆転を狙う東京は後半ATにビッグチャンス。残り時間僅かとなったところで長友が右サイドを攻略し、アーリー気味の速いクロス。「誰か押し込んでくれ」というメッセージが乗った素晴らしい折り返しだが、ファーサイドに雪崩れ込んできた俵積田と荒木の2人が懸命に伸ばした足先をかすめ、ボールは流れていった。大きな悲鳴がスタンドを包み込み、ほどなくしてタイムアップのホイッスル。1-1で試合を終えた東京は、開幕から2戦連続のドローとなった。

impressions

どちらに勝敗が転んでもおかしくない、緊張感の高い試合だった。立ち上がりこそスローな展開だったが、広島が徐々にギアを上げてからは東京もそのリズムについていき、白熱した攻防が繰り広げられた。昨季の同カードでは東京が好調とは言い難かった時期(10月)の試合で、対照的に好調だった広島が勢いで押し切るような感じの結末だったが(1-2で広島が勝利)、今回の対戦では両チーム共に開幕戦で悪くない内容の結果を残してからの2戦目ということで、良いイメージで試合に臨むことができたことも大きいだろう。

広島は攻守において試合を主体的に進めていた印象。様子見の色濃い試合の立ち上がりで、なおかつアウェイ戦ということも考えればホームチームが先に動くのを待つ、という戦略をとることも充分に可能だったはずだが、試合の風向きが自分たちに吹いてきたと見るや、積極的に前に出てきた。特に前からプレスをかけにいく時間帯では東京を自陣内に閉じ込めさせ、常にゴールを奪う危険性を漂わせていた。スキッベ監督体制を長く続けていることもあり、チームの成熟度という点では明らかに一枚上手だった。

東京は決して優勢に試合を進められたわけではなかったが、自陣に引きすぎずに守ることができた。前半にたびたび裏の広大なスペースを明け渡しそうになる場面こそあったが、ある程度カバーはできていたし、後半の1失点も不運な側面があった。中盤からある程度圧力をかけられていたため、満田と川村の強烈なボランチコンビにそこまで大きな仕事をさせなかったのは大きなポイント。最少失点で切り抜けられたので、概ね合格点といえる試合内容だった。攻撃は自陣からビルドアップしようにも広島のプレスを前になかなか繋ぐことができず、ディエゴを孤立させてしまった。サイド攻撃に関しては、仲川と長友の右サイドのユニットは多くのチャンスを作っていたが、左サイドは俵積田の投入まであまりチャンスを作れず。遠藤が少し窮屈そうに見えたのが気になった。チームに組み込むまでには少し時間が掛かるかもしれない。

最もインパクトを残した選手は文句無しで荒木だろう。開幕戦でも2得点の活躍を見せてさっそく東京ファンのハートを掴んだ荒木だが、今日の味スタデビュー戦でも値千金の同点ゴールをゲットし、早くも3得点目。マーカーを背負いながらボールを収め、振り向きざまに半身抜け出してのフィニッシュワークは、技術力の高さを感じさせた。昨季の東京はトップ下を安定してこなせる選手がおらずに苦しんだ印象があるが、荒木は現時点ではトップ下として最も適任といえる存在だ。今後チームにフィットして、ますます相手にとって怖い存在になってもらいたい。

総合的には強豪相手のドローでまずまずの結果だったと言えるが、他方これで満足して良いわけでもない。今年のチームは年間の平均得点「1.3」が目指すべき指標のひとつとなっている。そういう意味では、終盤に惜しい場面があったとはいえ、複数得点を取れずに終わったのは課題といえるだろう。内容面では、正直なところ昨季から大きな変化があったようには見えず、良くも悪くも予想どおりという感じだったが、荒木のような個性ある選手が加わったことで変化の兆しも見て取れた。まだチームにフィットしているようには見えなかった遠藤や、メンバー外の続く高・小柏といった新加入選手を早い段階でチームに組み込めるか、注目していきたい。

来週末に行われる第3節は、ホーム・味スタの連戦となり、昨季のリーグ王者でもあるヴィッセル神戸を迎えての試合が予定されている。今節に続く強豪相手ではあるが、第4節以降もしばらく難しい相手が続くだけに、なるべく早い段階でシーズン初勝利を挙げられることを期待したい。


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