「あれ、これ」って、一体なに?

ネットのニュースを見ていた。

テレワークが続いている中、オンライン社員研修についての記事で、こんな言葉があった。

「『あれ、これ』など抽象的な言い回しは通用せず、自然とコミュニケーションスキルが向上していると思う」。

気になる。

画面越しであれば、行間を読むことが難しくなるんだ(?

・あいまいな日本語?あいまいな中国語?

「あいまいな日本語」っていう言葉がよく耳に入ると思う。

それは、日本語にあいまいな表現が多いということを指す。

異文化間コミュニケーションにおいて、これは「ハイコンテクスト」と称する。

研究データ(私のじゃない)によると、日本語の「ハイコンテクスト」の度合いが世界で最も高いそうである。

(ちなみに最も低いのはドイツ語みたい)

中国語は決して「ローコンテクスト」ではなく、どちらかというと「ハイコンテクスト」の領域に属する。

もちろん、中国語にも、「これ、あれ」だけで会話が成り立つことが多い。

(中国語で指示代名詞は英語のようにthisとthatのみ。ちなみに日本語の「それ」と「あれ」は日本語学習者にとって使い分けが難しいそうである)

・通訳することになると?

筆者の研究分野である、中国での日系企業をフィールドとして例を挙げてみよう。

研究(私のじゃない)によると、日本人上司が中国人部下に指示を出す時に、あいまい表現によるコミュニケーション摩擦/ギャップが生じやすいという。

例えば、「それ、やっといてね」。

「それって何?ピンと来ない」「なんか、重要な仕事じゃないかな」

と思う人が多いようだ。

こんな時に通訳者がどうするであろう。

研究(今度は私のだ)によると、「発話者に確認する」および「自分の経験に基づき、推測して伝える」という2種の行動が最も多いことが、調査で分かった。

どちらにしても、一般的に思われる通訳者の役割から逸脱している。

・通訳者はどこまでできるのか?

これを答えるのは極めて難しい。

信頼関係を維持するために、期待された役割を呈示することが一番。

しかし、発話の真意を汲み取って伝える際、期待された役割から逸脱する行為が多くの場合には起きるでしょう。

実際、通訳する過程はブラックボックスだが、こうしたジレンマに遭遇することがめずらしくない。

どう対処すべきか、という単純なマニュアルはない。結局、状況依存的で、通訳者自分で判断しなければならない。

その判断に責任を負って、批判されても「こう思ったからこう訳した」と堂々と説明できるように。

「ただ通訳しただけです」と言うのが責任逃避だけだと思う。


こんなふうに、つぶやいたが、

まだまだ研究は続く。






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