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短編小説『言葉の樹』

 天国で、天使がせかせか働いている。背中の小さな羽根を細かくはためかせてすばしっこく飛び回る。

 天使の仕事は、地球の生き物を数えたり、増やしたり減らしたりもするし、幸不幸の量もコントロールする。

 天国には「言葉の樹」という大樹が生えている。その樹を観察するのも天使の仕事である。言葉の樹は、地球にある国ごとに生えていて、その国で交わされる言葉によって育ち方が異なる。
 言葉の樹の最大の特徴は、葉が言葉になっていることだ。葉が文字になっていて、風に揺れているのだ。

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