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ワインブックレビュー 『毎日のワイン手帳』

ワインブックレビュー
『毎日のワイン手帳』
講談社プラスアルファ新書

田崎真也 著
講談社
2000/7/1 253p  940円(税別)

今から20年以上前の2000年発行です。
1970年以降に日本に、ワインブームが起こりました。
1964年に東京オリンピックがあり、1970年に大阪万博があり、外国産ワインの輸入の自由化がされました。
そして、1972年に第1次ワインブームが起きました。
サントリーが「金曜日はワインを買う日」。
マンズワインが「夫婦でワイン」などのキャッチフレーズで、一般家庭へのワインの普及が進みました。
1978年には第2次ワインブーム。
サントリーレゼルブに代表される1000円ワインが発売され、人気を博しました。
1981年には第3次ワインブーム。
大容量の一升瓶ワインがブームになり、ワインが日常的に消費されるようになりました。
1987〜1990年の第4次ワインブーム。
バブル時代になり、ボジョレー・ヌーボーがもてはやされ、円高が進んだこともあり、高級ワインの消費も増えました。
1994年には第5次ワインブーム。
メルシャンの「ボンマルシェ」やサントリーの「デリカメゾン」など、バブル崩壊の影響もあり、500円前後のワインが人気となりました。1997〜1998年には、第6次ワインブーム。
赤ワインブームがおきました。
これはフランス人は、肉類をたくさん食べる割には、健康な人が多いのはどうしてか?
それは赤ワインを飲んでいるせいでは無いのか?
その原因はなんだろう?赤ワインに多いポリフェノールのおかげでは無いのか。
そのポリフェノールは、抗酸化作用や血圧降下、殺菌効果、抗がん作用などの健康作用があり、そのせいで健康な人が多いのでは無いのか?という学説が広まり、猫も杓子も赤ワインを飲むという状況になりました。

ワインの消費量も1988年から1998年の10年で、3倍近くになりワインを毎日飲むというのが、特別では無くなった時代でした。
その赤ワインブームがおさまった後に、出版されたのがこの本です。
著者の田崎真也さんが、1995年に国際ソムリエ連盟主催の「第8回世界最優秀ソムリエコンクール」で、日本人として初めて優勝しました。
この時期は日本にワインが、根付いてきた時代でしたねぇ。

いまではワインを飲む時に、どんな料理にしょうかを考えるは、普通になっていますが、この当時はそうでもありませんでした。
ペアリングと言う事が多いですが、この当時はワインと料理を合わせるのを、マリアージュと言ってました。
実際のマリアージュと同じく、上手くいかない事も多かったようです。
今ほど料理との相性を考えなかったり、ワイン自体の経験値が少ない人が、多かったからでしょう。
なので、このワインと料理をどう合わせるべきかを紹介した本は、当時はとても有益だったよなぁと思います。
ワタシも参考にしてました。

『毎日のワイン手帳』の目次としては
●自分のワイン手帳を作る・・・選び方のコツのコツ
●失敗しない一本を選ぶ・・・あなたがソムリエ
・デート篇
・ホームパーティ篇
・アウトドア篇
・季節篇
●喜んでもらえる一本を選ぶ・・・お祝い、記念日、贈答編
・お祝い、記念日編
・贈答篇
●料理をグンと美味しくする一本・・・料理とワインの微妙な関係
・肉料理篇
・魚介料理篇
・中華料理篇
・パスタ篇
・日常のお惣菜篇
●おすすめ&注目のワイン30篇
●ワインの簡単基礎知識

料理やシチューションに合わせたQuestionがあり、田崎さんがAnswerで答える形式で書かれています。
例題をあげると
Question
すき焼きにワインはピンときませんが、合うワインがあれば教えてください。
田崎さんのAnswerは
すき焼きというと、特有の甘味のある割り下ですね。それに肉の他にネギやエノキダケなど、やや土の香りのする食材を使います。この条件によく合うのはピノ・ノワール種やメルロー種のワインです・・・と言ったように、質問にあったワインを紹介していく形式になっております。
今ほど情報もなく、ワインのことを知りたいという意欲のある読者も多かったのだろうなぁ。
Questionの数は46問。それに対し、選んだワインは768本。
ここで選んだワインは、すべてこれまで田崎さんが飲んできたもので、その1本1本に、テイスティングコメントと、造り手や産地などのデータもつけられている労作です。
今では、このようにキチンと作られた本は、少なくなってきていますよねぇ。
売れるかだけ考えられて、初心者向けの本が粗製乱造されているのが、今のワイン関係の本のの状況ですから。
この本に出てくる日本ワインは「グレイス甲州樽貯蔵」、「シャトー・メルシャン信州桔梗ヶ原メルロー」、「ルバイヤート甲州シュル・リー」の3本だけです。
まだ日本ワインが、まだ認知されていなかった時期ですよね。
1980年〜2000年の頃は、まだ日本ワインは、マズくて飲めないとか、甘口のワインが多いとか、値段が高いとか(今もそう言うイメージあるけど)で、ワイン好きには敬遠されていたけれども、今なら日本ワインで、この様な有益な本がつくれる気がします。
誰か作ってくれないかなぁ。
オマエがつくれ!と言われそうだが。
あとワインのデータには、値段(希望小売価格)も明記しており、現在と2000年では、どれだけ値段が推移しているのかが分かって、オモシロイです。
ちなみに当時の5大シャトーのお値段はシャトー・ラフィット・ロスシルド97は33,000円、シャトー・マルゴー97は35,000円、シャトー・ラトゥール95は50,000円、シャトー・オー・ブリオン93は35,000円、シャトー・ムートン・ロスシルド97は46,000円でした。(すべて税抜)
今ではもう飲めないワインばかりですが、この頃は買えたよなぁ。
希望小売価格より実際に買う時は、安かったしなぁ。

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