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私のお父さん。

「店を閉めようと思う」

突然の父の言葉。

なるべく 普段通りに聞いていたけど。
なんとも言えない、父の表情に

(いかん、泣いてしまう..)

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私の家は、金物店をやっています。

父は高校卒業後、進学を諦め
家のため妹弟のため
佐渡から東京に行き、住込で
働きに入ったのが、金物屋。

そこで、ゼロから全てを学び
独立して店を持ちました。
以来40年以上、
父と母で店をやってきました。

本当は、だいぶ前から気がかりでした。
すでに2人、80才をこえていまして。
昔のお得意様も仕事を辞めたり
来なくなったり。
大型のホームセンターの影響もあり
お店を開けていても、お客が来ない状態でした。

いつまで やるんだろう・・

もし、父に何かあったら
このお店、どうしたらいいんだろう・・

父を心配している?
いや、それ以上に、何かあった時の
自分を心配しているのだ。

最低だよ、アンタ

そんな後ろめたい葛藤もあり
その不安を口にすることが
できずにいました。

小さな頃から、私と父の関係は微妙で。
今でも父と話すのは、緊張します。

でも今なら、理解できます。
早くに父親を亡くし、父を知らない父は、
私に、どう接したらいいか分からない
愛情表現の不器用な人、なだけでした。

「このままズルズル続けていても きりがない。
ママも体ツラそうだし、
何かある前に
お前に迷惑かける前に
店を閉めようと思う」

金物屋
はじめは、やりたいことではなかったはず。
でも、ひたすら店を切り盛り
することだけに取組んできた父。

どんな気持ちで
自分の気持ちに踏ん切りつけたんだろう

そう。
どんなことがあったって
店だけは辞められない
そう思ってた。
だって、父にとって店は全てだったから。
まさか、自ら言い出すなんて思ってもいなかった。

先に言わせてしまって
ごめんなさい。
もしかして
私がそう思わせた?

思いきって言ってくれたのに
色々言えず
ごめんなさい。

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忘れられない日。

あれは、私が30も半ばを過ぎた頃。

一生言えないと思っていたことを
感情が抑えきれずに、爆発したことがあった。


「私を本当に望んで産んだのか⁈


いい年した娘が 号泣しながら訴える姿に
母は激怒し、父はうろたえた。

その翌日、父が呑みに行こうと。
二人で 呑みに行くなんて初めてのことで。

そこで父は、ポツリポツリと話し始めた。

私が、そんなことを思いながら
生きてきたことを、
想像もしていなかったこと。

娘を病気で失い、何もできなかったこと。

それから、父は、何が自分にできるのか?
その問いに、地域貢献という
答えを導き出したこと。

父は父で、娘を失った悲しみと
店のことばかりしていたことへの後悔と
稼ぐことでしか娘にしてあげれなかった懺悔と

お互いが、それそれに傷を抱えていた。

父の気持ちを初めて知った夜。

でもね、パパ。

私が死んでも 同じようにしてくれた?

ごめんね。これは言わないでおく。
でもね、どこまでいっても
決着のつかない感情を
持ってるのが私。

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父から店を閉めると言われたのが2月。
以来、私もなるべく商品整理に勤めてきました。
いよいよ今月で閉店。
その後、店舗を、どうするのか?
未だ、答えが出ていません。

父にどうしたいの?
と聞いた時、
「志半ばだけど」

この言葉に、不覚にも涙してしまいました。

私は、やっぱりこの人の娘だ。
80を越えても尚、前を見ようとする姿勢に
私も、父と同じように

一生現役で商いをしたい

亡くなった姉が一番で
父には認めてほしくて
母には愛してほしくて
寂しかっただけなのに

いつしか気持ちが歪んで
父の仕事なんて越えてやる
母の願いなんて叶えてやらない

そうすることでしか
自分の気持ちに折り合いがつかなくて。
今まで、ホントに迷惑と心配をかけて。
親だって人間なのに、ね。

そんな当たり前のことも気づかないで
自分の気持ちしか みようとしなかった。

ごめんね、パパ。

あと何年
一緒にいられるかわからないけど、って
そんなこと言わないで。

店舗のこと。
私、そろそろ覚悟決めなきゃ、ね。

パパ。
ありがとう。

これからも、それからも。
よろしくね。







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