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信じているものは何(20)

4時間

手術当日、私は、仕事を休ませてもらい、妹と共に
病院へ向かった。
父が、麻酔を受ける直前であり、少し話すことができた。

「お父ちゃん、待ってるで、何も心配せんとな」
妹も声をかけていた。

そうこうしているうちに父は眠りに陥った。

画像はイメージです 

手術は2時間で終わる予定でした。
ちょうど終わる時間に合わせて、親戚も
集まってきました。

しかし、予定の時間が過ぎても、終わる気配がなし
1時間が過ぎ、2時間が過ぎ、ようやく看護師から連絡があった。

「終わりました。まだ麻酔が効いてますので
 今晩には目が覚めます。」

そして、病室に向かう前に、手術室へ案内された。
医師が、今回の手術のことを説明してくれました。

「まずは、これを見てください。これが、今回
 摘出した腫瘍です。」

私は、衝撃的でした。
こんなにも摘出したのかと。。。

直腸につながる部分で腸と腫瘍がわかるように
説明してくれたので、大きさがよくわかりました。

医師曰くレントゲンで見たより奥に広がっていて
摘出箇所がどんどん広がっていったそうです。
さらに、昔、腸閉塞で手術した部分が癒着しており、
そこを剥がしながら行なったことも時間がかかった
要因だったそうです。

続けて医師はこう言いました。

「とりあえず、取り除き、ストーマ取り付けは
 うまく行きました。あとは、転移だけを
 注視していきましょう。」

「転移を気をつけながら」ですね。

私たち(妹と私)は、癌に効くキノコ(名前忘れた)や
野菜など、いろいろな情報をとり、父に勧めた。

術後一ヶ月が過ぎ、退院の予定日が決まった。
一応術後の経過も順調に過ぎていきました。

そして、退院日が決まり、父は退院した。
ストーマも上手く使えるようになりました。

ストーマとは(知らない人のために)

Photo ACより

病気や手術などで肛門周りを切除した患者が
お腹の横に腸を出し、袋を取り付け
排泄(大便)できるようにするものです。

そうして、父は入院で落ちた体力と健康のために
ウォーキングを始め、趣味の写真もやり始めた
あまり、遠出はまだできないので、近くの公園や
私のマラソン大会などに駆けつけてくれ、写真を
撮ってもらったりした。

転移という不安があったが、とりあえず気持ちは落ち着き
父の快復を喜んだ。

6ヶ月

じつは、最初の手術の際、医師の説明の中に
「このままだと、余命最短で6ヶ月です。」
と言われていた。
腫瘍が大きくなり、直腸を圧迫し便が通らなく
なるからだそうだ。

よって、私たちは手術を決断しました。
というより、手術以外の選択肢が無かったんです。

癌発覚してからというもの、あらゆる癌の本を読み、
免疫療法や食事療法や、東洋医学の漢方医学なども
いろいろ調べました。

でも、これらは、ならないような生活や食事、
マインドを整えましょうというものが多く、
罹患してからでは、(初期を除いて)あまり効果は期待できない
ものが多かった。(調べた限りでは)

そうこうしているうちに、一回めの精密検査の日が訪れ
一番転移が考えられる、肝臓をまず調べましょう
となりました。

無料の検査から、大手術、入院、検査といつしか
かかりつけの病院になっていた。

話が通じる家族が呼ばれる

日時だけ聞かされていた私は、すっかり当日だというのを
忘れていた。そして見知らぬ電話番号から電話がかかって
きた。

「もしもし、〇〇病院ですが、〇〇さんの携帯ですか?」
続けてこう言いました。
「ご家族の方でお話の通じる方にお越しいただきたい
 のですが、お兄様よろしいですか?」

一瞬、わからなかったが、すぐ理解した。

同時に妹にも電話が入っており、連絡が来た
「お兄ちゃん来れる?」

来れるも何も、いくに決まってるんだけど、
少し血の気が引く気がした。

でも、

「いや、話と言っても悪いことだけではないはずだ、
 そうだきっと前向きな話なんだろう」

そう言い聞かしていた。

そしてすぐに病院へ向かった。

なぜ、私が、「話が通じる家族」なのかというと、
両親は聴覚に障害を持っており、一般人との意思疎通が
スムーズに出来なかったというのが理由です。

父と家族同席で説明があるとのことだったが、
医師は予め、父親の同席は同意を得てくださいと
いうことなので父に聞きました。

即答で
「自分は聞きたい、どんな結果でも大丈夫」
と気丈に言った。

医師の話は次のとおりであった。
(レントゲンを見せられ)
その写真には白い点々がついた肝臓らしき形の
レントゲン写真だった。

「ご説明いたします。今、ご覧になっている
 レントゲンが、お父さんの肝臓です。
 ご覧のように、ここにたくさんの白い斑点
 のようなものが見えますね、おそらくこれは
 転移したがん細胞です」
続けて
「こちらでは、専門外になりますので、肝臓の専門の
 医師が勤務する病院をご紹介しますので、そちらの
 先生を訪ねてください。」

血の気が引くかと思ったが、既に電話の時点で
少し引いていたので覚悟ができていたのでしょう、
逆に前向きになった。

しかし父は、その逆で外に出て、涙を流していた。

そして、少し市内にある病院を紹介され
早速向かった。

・・・。

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