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授業時間5分短縮について

文部科学省で小中学校の授業時間を5分短縮する方向で検討を始めるようです。

どうやら記事にしているのは1社だけなので、奈須正裕先生に近い人が投げ込んだアドバルーン記事かな、と勘ぐりました。

でも、X(旧twitter)を見ていて、5分短縮よりも気になったことがありました。


あなた、記事読んでないでしょ

Xを見ていて気づいたのが、5分短縮が働き方改革や負担軽減(児童生徒も教師も)に結びつくと思っている書き込みが結構多いことです。
それも、ネット上でそこそこ知名度がある方まで。

例えば
・児童生徒が早く帰れる
・給食の時間を長くしよう
・授業準備の時間が確保できる
・短縮した時間に部活動や会議を入れたら意味がない

でも、記事を読むと、

一方、年間の授業時間数は変えない方向だ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3616439d95d3495966422eadf459f868909e7749

そしてさらに、

 背景には、子どもの学力や教育環境の地域間格差が広がっていることがある。各校が画一的な授業を横並びで実施しているだけでは対応が難しく、裁量拡大によって学校現場の創意工夫を促す狙いがある。思考力育成を目指した探究活動や、基礎学力定着のためのドリル学習など各校がそれぞれの実情に応じて指導に生かすことを文科省は期待する。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3616439d95d3495966422eadf459f868909e7749

つまり、

・授業時間を5分短縮する工夫をしなさい。
・浮いた85時間を使って新しいことを学校裁量でやりなさい。

ということで、むしろ負担が増えることを言っています。
教師の情報リテラシーのレベルに疑問を持たれかねません。
まさか、記事を読んでいても理解できていない、とは思いたくないですが。

5分短縮について

肢体不自由の特別支援学校にいると、トイレ介助や移動で授業の開始や終了の時間が5分程度食い込むことが日常茶飯事です。
また、以前病院内の学校にいたときも、病棟内の移動や医療的処置の都合で授業時間が短くなることがよくありました。

時代の最先端にいたのか(笑)

自分が思うところを書いてみます。

授業内容の精選

病弱の学校にいたとき、よく校内研究で出てきた課題が「授業内容の精選」でした。
自分は中学部で理科を教えていたので、「退院日が決まっていて授業があと1回しかできない。まだやっていない実験がいくつもある。どれを選ぶか。」という究極の選択をする場面が何度もありました。
自分の判断でやらなかった実験が高校入試で出たら申し訳ないなと不安になっていました。
他の先生方も、未学習部分が多い場合にどの部分を扱うか(扱わないか)の取捨選択に悩んでいました。

毎日授業ができるならそこまでの切迫性はありませんが、「ここは授業内で説明しなくてもワークでわかるか。」「ここはつまずきやすいからゆっくり説明するか。」などの軽重を判断していく必要は出て来るかなと思います。
それは今でもやっているか・・・。

効率化

5分短縮なら、効率的に教えていく工夫もしていきます。

・自作プリント

自分は「準ずる」では、教科書をもとに自作プリントを作って、それを基に授業を進めています。
障がい種別が病弱でも肢体不自由でも効率化を考えざるを得なかったので、教科が理科でも情報でも、自作プリントの使用を続けてきました。
良くも悪くも自分の授業スタイルになっています。

用語を書く欄、自分の意見を書く欄などがすでに印刷されているので、生徒は今やるべきことがすぐにわかるようになっています。
この方法で、確かに速く進めることができるのですが、「まとめる力が身につかない」と指摘されたことがありました。
最近はClassroom経由で課題をやる機会も多いので、これはこれでいいのかなと思っています。
今怖いのは、事務から紙を節約するようにと言われることです。

・スライド

教師用指導書に付属するデジタル板書(PowerPointスライド)を使って教師が一方的に説明すれば、授業を進めるのは速そうですが、それでは手抜きな気がしますし、生徒は受動的になってしまいます。

・片付けを教師がやる

中学部で理科を教えている時には、時間を短縮すると片付けの時間が確保できないという問題がありました。
よく放課後や空き時間に実験の片付けをやっていたことを思い出します。
片付けながら、「ベッドサイドでも実験をやってよかったなぁ」「登校して火を使った実験ができてよかったなぁ」などと振り返っていたのが懐かしいのですが、本来は生徒が片付けまでやって終わらなくてはいけないと思います。

・生徒の活動時間を削る

情報で時間を短縮するときには、生徒が課題に取り組む時間を削っている気がします。
時間だから、と生徒の活動を打ち切るのは断腸の思いがあります。
5分短縮だと、そのような場面が増えるのかなと思います。
教師が説明したい気持ちを抑えて、生徒が使える時間を確保しないといけないなと思います。
生徒も時間を意識するようになるなら、良いのかもしれませんが。

・反転学習

反転学習ができれば、授業時間を効率的に使えるなと思いますが、体調で難しかったり、寄宿舎にインターネット環境が無かったりするので実施できていません。
英語などは保護者も学生時代に学習しているので、予習をする習慣が身についている生徒がいると思いますが、情報で予習をしてもらうには、教科の重要性を認識してもらうところから始めないといけないなと思います。

効率化のアイデア、文科省から事例集が出るんでしょうかね。

文部科学省の意図は?

実際にはこれから中教審で議論していくのでしょうが、本当に5分短縮するのなら、その意図が末端の教師まで正確に伝わるようにしていかないと、浮いた時間が文科省の意図と違う使われ方をしてしまうのではないかと思います。

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