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球磨川リバイバルトレイル 2023 完走記 前編

 毎年少しでも良いので未経験の世界を覗いてみたい!とここ数年で思うようになってきた。今年はまずは参加したことがない100マイルトレイルレースに挑みたくなり、球磨川リバイバルトレイルへ参戦を決めた。ガッツリの100マイルトレイルレースはUTMF2022以来であり少し緊張もあったが、初めて九州のトレイルを走れるのが純粋に楽しみだったし、飛行機に乗れることにもワクワクしていた。そんな参戦記を残していきたい。

 球磨川リバイバルトレイルは今年で2回目の大会。2020年7月に発生した豪雨災害の元凶となった球磨川の、源流から河口までを見届けるトレイルジャーニーを通して、人と自然の関わりを見つめ直し、被災地の復興を後押しする、というコンセプトを掲げていて、それに共感したのも参加を決めた点の1つであった。まだ復興の最中という事もあり、使用できる道路や林道に変更があり、昨年に比べてトレイル率が上がり、かつ167km 9400m D+というなかなかなハードスペックとなった。コースとは対照的に、スタート会場はとてものどかで、牧歌的な雰囲気が気持ちよく、バックヤードワールドチャンピオンシップに一緒に参戦したたみさんと、散歩してコースの下見などをして過ごす。

参加賞が豪華だった

 スタートは朝5時のため前泊。水上村が2000円分を支援してくれたお陰もあり、1泊夕食付きで5000円とかなり安かった。さらに宿泊した”おのや”の女将さんがとても良い人で、食事は美味しいしお酒も振舞ってくれたし、朝は会場まで送迎までしてくれるという至れり尽くせり状態。本当にありがとうございました。そしてpentapetalaというトレイルシューズブランドの方とも知り合えたり、同じ部屋の人が隣の市に住んでいて盛り上がったりと、リラックスした感じで本番当日を迎えられた。

おのやの入り口、温泉は激熱だったが泉質が良く気持ちよかった

 当日は2時40分に起き、テーピング等の準備を済ませ3時45分ごろスタート会場近くの体育館へ到着。そこで朝食を振舞って頂きのんびり食べる。その最中に、トキミンゴのちーちゃんや、広島に住むバックヤード 2022 島根で優勝した前田さん、バックヤードワールドチャンピオンシップで一緒に走ったジュンさん、チー100チームメイトの荒舩さんなど、会いたかった方々に次々にお会いすることができ、あまり緊張感なくスタートを迎える事ができた。ちなみにIBUKIはスタートラインに並ぶ直前に渡された。

今回のコース (公式HPより)
今回のコース (公式HPより) 多分W2の位置が実際はもう少し手前だった。

スタート~W1旧古屋敷小学校跡 12km  

 事前に立てた目標はサブ30時間。そのため、28時間~31時間のプランを作り、その間で通過していければいいかなと考えていた。最初の区間は峠走に近いと聞いていたので、なるべくリズムよく走ろうと決めていた。出走者は210人程度なので、焦らず前から15列目くらいにたみさんと並びスタート。そのままたみさんと少し並走し、その後走っている途中で、チー100チームメイトのガチオさんや矢野さんと会い話す事ができた。やっぱり自分がハットを被っていた事で気付けたとのこと。もうハットスタイルはやめられそうもない。林道がしばらく続くが会話できる位の余裕度を持ってほぼ走る。それが終わってすぐに下りになるかと思いきや、結構スリッピーなアップダウンが続くトレイルパートもあり、無理はせずラクに進んだ。その後の下りトレイルパートは気持ちよく走って下りたが、最後に滑って尻もちをつき、若干テンションが下がったところでロードに出て、下りを走ったところでW1に到着。

作ったタイムテーブル。時間の幅を持たせて、その中に入ればいいかなくらいの目安で使う。
早かったらペースを落とすが、遅れても気にしないことが重要。

W1~A1不土野峠 9km  (累積22km)

 早速トイレへ行き、尻もちをついた際に汚れた手を洗って出発。すぐに洗えて運が良かった。このパートもある程度までは峠走と分かっていたので、ひたすらリズムを意識し、心拍を上げ切らない程度のペースで走り続ける。この区間で、持って行っていたタイムテーブル表をなくしたと思い込み、毎回携帯で確認することになった。(実際はボトルの下に押し込まれていて、ゴール後に気付く)大体標高750mくらいまで登ったあたりで、路面が変わり歩きに変えて登るようになり、しばらく進んだところでA1に到着。

こんな林道が続いた(もちろん歩き)

A1~W2銚子傘 3km (累積25km)

 次のW2までは距離がないのがわかっていたので、水の補給はせず。ありがたいことに、おにぎりやおやきが1つ1つラップにくるまれていたので、それを1つずつ手に持ってさっさと出発。最初は林道で少ししたら尾根伝いに上ると記憶していたが、林道を気持ちよく走っていたら下り基調になり始める。違和感を覚えたので止まってマーキングを確認するも、前後に見当たらないため引き返し、何とかルート復帰することができ安堵した。やはりウルトラトレイルは、少しの違和感を大切に扱う事が重要だと改めて思えた。自分の後ろを走っていてロストに巻き込んでしまった長谷山さんと、少し話しながら進む事になる。初100マイルとの事だったが、登りでの呼吸の余裕度が高く強さを感じられた。(最終的には自分より45分早く6位でフィニッシュ!)話したり、A1でもらった食料を食べながら進んだお陰もあり、あっという間にW2に到着。

W2~A2高塚山登山口 18km (累積43km)

 この先が長いと覚悟していたので、水をきちんと補給し出発。長谷山さんはやっぱり登りが強く、銚子傘の手前の登りで置いていかれた。まだ、無理をするポイントではないと言い聞かせ追うのをやめた感じ。その銚子傘前後から尾根が広めになり、踏跡もほとんどないためマーキングをかなり探しながら進む事になる。九州脊梁と呼ばれる山域だそうで、関東では見たことがないような植生や山の雰囲気で、思わずきょろきょろしながら進んでいた。
ここはとても静かな山域で、いつかまたのんびり登りに来たいと思えた。

この中でのマーキング探しはなかなかハードだった

踏み固められていないルートで、かつ枯れ枝や倒木も多いため、傾斜以上に脚の力を使わされて進んでいた。そのため、白鳥山から先は周りのペースに合わせるのはやめて、少しセーブするようにした。踏跡がほぼなく、単独走になるとマーキングを探しながら進む必要性が出てくるが、脚のもちを考えたら仕方ないと判断。ただ、なんとなく遠くに先行していた2-3人の背中が見えたりもしたので、悪い判断ではなかったと思う。しかも、その前後で仲間から連絡があり、13位との事。後半上げるタイプの自分のとしては前過ぎるのでちょうど良かった。しばらく大小さまざまなアップダウンを繰り返し、ようやくA2へのピストンすれ違いパートに突入する。前田さんやチー100チームメイトの直樹君とすれ違いざまエール交換ができて元気が出たが、一方でこのアップダウンをまた戻ってこなければいけないのかという感覚も出る。そこはA2のジビエバーガーを食べに行く事に集中することで脳をだまし、淡々と進みA2へ到着。

白鳥山からの眺めはサイコーだった
残雪もあったが、気温も高めで風がなく暖かい気候だった

A2~W3梶原地区 13㎞ (累積56km)

 エイドで水とアクエリを補給する。結構暑かったのでアイスがありがたかった。そしてジビエ餃子も食べ、ジビエバーガーとおにぎりは手に持って早々にエイドを出発。多分3人くらい抜いた。直後に、たみさんやスパルタンレース日本代表の尾藤さんとすれ違い元気を貰う。その後も、矢野さん、荒舩さん、ジュンさん、ガチオさんと立て続けにすれ違い、エール交換ができ良い気分転換になったが、確実に登りの脚は削られている感が出てきた。やはり100マイルは一筋縄ではいかないなって思いながら進んでいると、長谷山さんに追い付かれ、あれこれ話しながら進む事が出来て気が紛れ、何とかピストン区間を終える。そこからは下り基調だが、当然何度も登り返しが来るため、登りのポイントで長谷山さんに前に行って貰い、単独走となる。結構気温が高く汗をかいていたが、少し雲が出てきて助かった。その後も淡々と進んでいたが、1人に抜かされロードに出てW3に到着。

ガチオさんに撮って貰った、単純なので人に会うと嬉しいみたい!w

W3~A3高野体育館 11km (累積67km)

 アクエリを飲み、用意してくれていた被り水で顔を洗い、手ぬぐいも濡らして首周りを拭きかなりさっぱりできたし暑さ対策になった。どのエイドも優しいだけでなくランナー目線でできる事を考え用意してくれていて、本当に助かった。まずはひたすらロードを下っていったが、標高を下げると気温が上がっていく事が体感できた。ようやく川沿いに降りるがその後もロードが続き、登り以外は走り続けた。道路沿いを走っている時には、横を通り過ぎる車からも応援を頂き、励みを貰ってA3に到着。

A3~W4仰烏帽子山登山口 19km (累積86km)

 エイドで遂に我慢してきたコーラを解禁し、水を補給。やっぱり赤コーラの美味しさは不変だった。その後、着替えながら時計と携帯を充電しつつ、IBUKIへの充電を開始。補給食の入れ替えを行うが、ここまで持ってきたブラックサンダーとアスパラギンビスに手が伸びてなかったので、それらを置いてかわりに黒糖わらび餅とジェルを多めに持つ。時計の充電ケーブルも念のため持ち、ウェストライトを装着。さらにアミノ酸系ゼリーを飲み、エイドにあったおにぎりを両手に持って出発。またエイドで3人くらい抜いた。この区間は距離がありつつ直登もあり、時間がかかると思っていたがあまりエイドで食べなかったのに少し焦り、少し走った先に出てきた自販機でリアルゴールドを買って飲む。安定の美味しさに満足しつつ進み、登り始めたのでおにぎりを食べるが、1個半食べたところで急に気持ち悪さに近い胃腸のむかむか感が出始め、力が入りにくくなる。更に明るいのに眠気も出始め、直登区間をフラフラしながら登る事になってしまった。

ひたすら直登コースが続いた


理由をあれこれ考えていたが、色々なものを急に摂取したため血糖値が急上昇し、インシュリンショックが起きたのかもしれないと思えた。そのため、しばらく最小限の水のみを補給するようにし、落ち着くまで行けるペースで進む事にした。結果3人に抜かれる事になったが気にしている場合ではなく、仲間からの連絡で11位だと知り前を追いたかったが、何とか眠気を飛ばしつつ回復の兆しを待ち続けて進んでいた。結果、1~1時間半くらいで意識がはっきりし始めた。ちょうど登りから走れる区間に変わるタイミングだったので、タイムロスは最小限で済んだ気がして安堵した。そこからは下りと平地は走り、登りはマイペースで進む。そして暗くなり、ライトを点灯して進むがなかなか下りにならず、むしろ先行者のライトが山の上に見えて若干へこむなどのウルトラトレイルあるあるを体感。ようやく下り林道に入った後も、それはそれで長くてやっとの思いでW4に到着する。

W4~A4屋形多目的集会所 10㎞ (累積96km)

 A4までは距離がないため給水はせず、”俺は摂取す”がおいてあったので頂いてすぐに出発。地図で事前確認した限りは登りはロードか林道だったため、緩めの登りは走るつもりだったが、ほぼ走れるほどの斜度ではなかったので淡々と歩く。ただ、後ろの選手と距離が変わらなかったので、悪いペースじゃないから大丈夫と自分に言い聞かせ進み、下り基調になってからは走ってA4に到着。あっというまの区間だった。

A4~W5万江阿蘇神社 12km (累積108km)

 鶏汁にご飯を入れてもらう、これが美味しかった。これを食べるために、スタートしてから初めて椅子に座る。ここで前後していた3人と一緒になったので少し話し、さつま揚げを食べて出発。この区間の登りもロードか林道だったので、緩めの登りだけは少し走ってあとは歩いて進む。その中で少し集中力が途切れてきた感が出始めた。経験上、カフェインを入れると戻るケースが多いので、カフェインピル(トメルミン)を投入する。効くまで15-20分掛かるので、その時を待つイメージで淡々と進んでいるところで立て続けに3人に抜かれるが、気にせず回復を待つ。程なくして公園っぽいところに着き、ロードの下りを走り続けてW5に到着。ここでなんと10位だったが、そんなに余裕があるわけでもなく、ここから核心部が続くのでどうなるか不安感も結構あったが、自分を信じて進むしかないと決めつけていた。

実際はここからが苦しい戦いだった。長くなり過ぎたので後編へ続く→後編 


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