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神仏まざりて蛇と皮

神仏まざりて蛇と皮

 熱が出ると決まって仏の夢を見る。それは蛇であり神様であり伯母である。
 伯母は今では点鬼簿の中にいて、私はもう声を思い出せない。顔も思い出せない。匂いも思い出せない。ただ薄い皮の骨ばった指だけを思い出せるのであって、熱に魘されて夢にみるのは、その死んでいる人間のような、やけにつるりとした指だけなのだった。
 寺の門のそばで、私は伯母のその指に手を包まれながら、蛇であり神であり仏であるそれを見た。

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あかるい水影こうかん殺人

あかるい水影こうかん殺人

 殺してしまえるのなら殺してしまいたいと言われたので、殺してくれるのならば殺されてもいいと答えたら本当に殺されてしまった。十六歳か十七歳の夏。死んでいるのでそれからどうなったかは知らない。わたしは沢山のことを忘れている。

 はじめて訪れた高校のはじめて入った更衣室で、なにがしかの消毒の匂いがしていた。先輩の首には髪がからまっていて、なぜ髪を伸ばしたのだろうと私は薄っすらと考えていた。答えは知って

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