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2023 032:ジョン・バティステを観た+(5,000字)

ジョン・バティステの初来日公演は衝撃的なものだった。歌やピアノのうまさは言うまでもないが、ピアニカを弾き、タンバリンを叩き、ギターを弾き、サックスを吹き、観客を驚かせたし、何度も客席に降りてきてはピアニカを奏でながら、もしくは歌いながら、ニューオーリンズのジャズ・フューネラルのように会場を歩き回り、観客とコミュニケーションをとっていた。会場全体がジョン・バティステを間近で感じることができたはずだ。

前回のインタビューでバティステは彼が掲げるソーシャル・ミュージックというコンセプトについて、こんな話をしていた。

ジョン・バティステ:世界中のあらゆる文化において、音楽が“娯楽のためのもの”になる以前は、ある目的を持っていたとされている。音楽は昔から常に、そのコミュニティの一員となるために、そして年長者から下の世代へと人間の知恵を受け継ぐための手段として使われてきたんだ。儀式、精神的修行、ドラムサークルといった集団での音楽演奏。どれも形は違えど、音楽を通じて人と人が繋がるためのものだ

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/39978

ジョン・バティステ:ソーシャル・ミュージックはヒューマニズム(人間主義)とアクティビズム(行動主義)の要素、すなわちパフォーマンスとライブ体験と結びついている

https://rollingstonejapan.com/articles/detail/39978

あのライブは彼が考える音楽のあり方をそのまま体現したものだったのだろう。彼はどれだか「音楽」というものを信じているのか、同時に「音楽という体験」にこだわっているのかを強烈に感じさせられた。

それ以外にもう一つ気付いたことがある。

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