"50 Best Jazz Albums of 2018" by Jazz The New Chapter (with Playlist)

Jazz The New Chapter監修者 柳樂光隆が選んだ2018年のジャズの年間ベストです。

1 Kamasi Washington - Heaven and Earth
2 Brad Mehldau - After Bach
3 Ambrose Akinmusire - Origami Harvest
4 Rafiq Bhatia - Breaking English
5 Antonio Sanchez - Lines in The Sand
6 Julian Lage - Modern Lore
7 Makaya Mccraven - Universal Beings
8 Marcus Strickland - People of The Sun
9 Ben Wendel - Seasons
10 Nels Cline 4 - Currents, Constellations

11 Cecile Mclorin Salvant - The Window
12 Mark Turner & Ethan Iverson - Temporary Kings
13 Edward Simon - Sorrows and Triumphs
14 Miho Hazama - Dancer in Nowhere
15 Louis Cole - Time
16 Mary Halvorson - The Maid With the Flaxen Hair: A Tribute to Johnny Smith
17 James Francies - Flight
18 Braxton Cook - No Doubt
19 Sons of Kemet - Your Queen is Reptile
20 John Hollenbeck Large Ensemble - All Can Work

21 Miguel Zenon - Yo Soy La Tradicion
22 R+R=NOW — Collagically Speaking
23 Javier Santiago - Phoenix
24 Shai Maestro - The Dream Thief
25 Richard Spaven - Real Time
26 Chris Dave & The Drumhedz - Chris Dave & The Drumhedz
27 Sam Gendel & Sam Wilkes - Music for Saxofone & Bass Guitar
28 Tigran Hamasyan - Gyumri
29 Wolfgang Muthspiel - Where The River Goes
30 Amaro Freitas - Rasif

31 Andrew Cyrille / Wadada Leo Smith / Bill Frisell - Lebroba
32 Myra Melford's Snowy Egret - The Other Side of Air
33 Now vs Now - The Buffering Cocoon
34 Owen Broder - Heritage
35 Marquis Hill - Modern Flows Vol.2
36 Aaron Parks - Little Big
37 Miho Hazama / Metropole Orchestra - The Monk: Live At Bimhuis
38 Stu Mindeman - Woven Threads
39 Luciana Souza - The Book of Longing
40 Mast - Thelonious Sphere Monk

41 Nyeusi & Justin Brown - Nyeusi
42 Rudy Royston - Flatbed Buggy
43 Eric Harland - 13th Floor
44 Shinya Fukumori - For 2 Akis
45 Don Byron & Aruan Ortiz - Random Dances and (A)tonalities
46 Noam Wiesenberg - Roads Diverge
47 Elio Villafranca - Cinque
48 Daniel Santiago - Union
49 Sam Wilkes - Wilkes
50 Walter Smith ⅲ - TWIO

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■総評はReal Soundに書きました。
ロバート・グラスパーが打ち立てたものの先へ
  https://realsound.jp/2018/12/post-300716.html

■Playlist作りました。

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※Jazz The New Chapter読者のための2018年のジャズ以外のジャンルのおすすめ50曲(プレイリスト付き)も選びました。併せてどうぞ。

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■雑記

今年に入ってからコンテンポラリーとかバレエとかダンスの動画を見るようになった。

これは「仕事で原稿を頼まれてダンスを勉強しなきゃいけなくなった」とかではなく、身体を動かすことで表現するということについてなんとなく関心が出てきたから、なんとなく見るようになったら、ちょっとだけハマってしまったのだった。

それには一応、きっかけがあって、以前、挾間美帆がNYシティーバレエのプリンシパルのアシュリー・バウダーと仕事をするときのことを話してくれたことがあって、その時に挾間美帆自身もバレエをやっていたことについての話してくれたことが頭に残っていたこと。そして、JTNC5用にやったマリア・シュナイダーへの取材で彼女が自分の音楽にはバレエやダンスとの関係があると思う(※マリアの曲にはダンスをイメージさせる曲名がついてるものがいくつもある)と話をしてくれたこと。そういったことが頭に残っていたこともあって、YouTubeで適当にバレエとか、コンテンポラリーダンスとか検索して出てきた動画を見ていた。

何となくいろいろと見ていると、素人なりに上手い人や、上手いを超えた異常に上手い人のすごさが少しだけ見えてきたりもする。人間が身体の動きだけで何かを表現する際のダイナミックさやスピードやジャンプの高さ、スムースさ、リズム感や動機具合などなど、いろいろあるけど、最終的にはそのあらゆる動作の精度のグリッドの細かさみたいなところに行くんではないかと思った。

その腕の動きの先にある指の動き、更にその先にある指先の先の爪の先まで、どこまでそのダンサーの意図が届き、その意図の通りに動かせることで、そのやろうとしている表現が行き届いているかどうかみたいなことの精度の話なのかなと思った。

その指先の細やかな動きでどんなニュアンスを表現して、どんな余韻をどの程度残すのか、もしくは残さないのか、みたいなことが可能なくらいに極限まで身体をコントロール出来ている人のダンスは単純に美しくて、見ていて面白い。

そんなことを考えていた時に、挾間美帆が『Dancer in Nowhere』をリリースした。マリア・シュナイダーがアメリカの雄大な自然の中の風景を描写していると例えるのなら、挾間美帆の都市ならではの人工的に構築された風景を描くような独特のサウンドスケープがある印象があった。ただ、新作では僕は景色があまり浮かんでこなくて、人間のモーションが見えるような音楽だと思いながら聴いていた。それは録音方法を変えたりしたことで個々の楽器の音がクリアに録れていることやミックスの工夫などエンジニアとの共同作業にも由来するのだろうが、それだけでなく書かれた楽曲の中で個々の楽器の音が際立っていて、そのそれぞれの楽器の音がそれぞれに踊っていたり、もしくはそれらが組み合わさって一つの肉体を形成しているように手や足、もしくは指の動きが頭の中に浮かび上がるような気がしたりして、躍動的で生々しい音楽だと僕は感じた。

そもそも楽器奏者の動きにはひとつ必理由があるし、その動きそのもので観客を魅了することもある。マーク・ジュリアナやリチャード・スペイヴンのようなマシーナリーなビートを叩くための所作もあれば、ブライアン・ブレイドのような静から動へのチェンジをダイナミックな動作と共に見せてくれるドラマーもいる。常時指先の繊細なコントロールで聴かせているイメージのジュリアン・ラージがロックンロールやヒルビリーみたいな旋律をギターで奏でる時にはチャック・ベリーみたいなオーヴァーアクションを見せてくれることもある。

そうやってその演奏動作がサウンドに作用しているものはもちろんだし、その演奏が動作や何らかの動的な映像を喚起するような音楽が僕は好きだから、いつもこういうことを考えているのかもしれない。僕はきっと優れたダンサーが激しいダンスの中でも手や足の指先の動作をコントロールしていることで見せてくれるある種のエレガンスがもつ美しさのように、その楽器の一音一音のコントロールによる音の動きの繊細さが宿すものを聴いているのかもしれないと思う。

それぞれの音楽にはその音楽にふさわしいコントロールの仕方やエレガンスがある。ジュリアン・ラージ・トリオのメンバーとして来日していたケニー・ウォルセンのドラムは大げさな荒々しさの中にもあの音楽にふさわしい優雅さを湛えていて、実に美しくて、僕はうっとりながら、時々爆笑したりしていた。

最近は、音楽を聴いていると、即興とか、ソロとか、みたいなことよりも、そんなモーションと結びついた演奏の美しさみたいなものに意識が行くようになった。どんなフレーズかどうかだけではなく、そのフレーズがどんなモーションによって奏でられているのか、を考えている。

楽器の演奏がうまい人というか、楽器の演奏が美しい人、みたいなことを考えて、どんどん個々の演奏に耳が向くようになっているとも言えるのかもしれない。アントニオ・サンチェス、アンブローズ・アキンムシーレ、ベン・ウェンデル、セシル・マクロリン・サルヴァントなどなど、今年の年間ベストにはそういう僕の志向が反映されている気がする。

それは去年出した『Jazz The New Chapter 4』でのピアノ特集や『100年のジャズを聴く』でのピアノで考えるジャズ史的な話から繋がるものをコンピレーションという形ででピアノをコンセプトにして選曲したように、「楽器」と「演奏」にフォーカスしてきたこととも繋がっている。

いつもアンサンブルや歴史について書いているつもりが、どうやら僕は個を聴いていたんだなと思うし、僕が書いてきたアンサンブルも歴史も結局は個の優れた演奏の集積によって生まれたものなんだろうなとも。

ダンスへのわずかな関心は音楽を聴いたときに喚起させられるイメージをずいぶん拡張してくれたと思うし、それが音楽の聴き方を少し変えてくれた気がして、それはきっと自分の文章も変えてんだろうなと思う。そこにはきっとここ2年ほど続けている日課のランニング(『DISCO vol.2』掲載 「音楽と走る」参照 ⇒ LINK)が自分の肉体への意識を変えたし、身体への関心が増したのもあるんだろうなとも。生活や習慣が変える文章もあるんだろう。

おそらく、僕(と『Jazz The New Chapter』)は(聴き手が)踊りたくなるようなグルーヴだけではなく、(演奏者が)踊るように奏でている光景が見えてくるようなグルーヴをこれからも追っていく気がする。


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柳樂光隆

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