MilesReimagined表紙半分

【Vol.4】トランペットにエフェクトをかけると言うこと ー 類家心平さんに話を聞いた理由 for『MILES:Reimagined』

『MILES : REIMAGINED 2010年代のマイルス・デイヴィス・ガイド』https://www.shinko-music.co.jp/item/pid1643178/

基本的に僕が監修する本は自分が疑問に思うこと、知りたいことを「今、この人が話してくれたらリスナーの頭にすーっと入るだろうな」と思う人に解説してもらおうと思ってやっている。僕自身が説明したいというよりはリスナーの側に立って、リスナーとしての自分が読みたいものを作るという感じだろうか。

そう考えた時に、マイルスの本はあっても、意外とマイルスのトランペットの演奏について書かれた、すごくわかりやすいものが少ない気がしていた。なかでも、あんなにワウがワウがと言われているのに彼のワウ=エフェクトに関する言及が足りないかなと思っていた。もちろん、管楽器や機材系の専門誌にはそういう記事もあったのかもしれないが、なかなかリスナーにまでは届かない。

そこで真っ先に思い付いたのが、今、エフェクトを駆使してジャズをやっていて、そのサウンドがマイルスの音楽とも通じるところがある日本のトランぺットのトップランナーに話を聞くことだった。

まぁ、誰がどう考えても、そんな存在は類家心平さんを置いて他にはいない。

類家さんがトランペットのエフェクトについて語るインタビュー、絶対みんな読みたいに違いない!と思いついたら、テンションが上がってしまい、すぐにレーベルにオファーしてしまった。

※ちなみに類家さんはジャズ以外のリスナーに向けてもわかりやすく面白く話してくれる人だと確信したのはこのインタビューがきっかけ

類家心平、ロイ・ハーグローヴの影響力を語る➡ http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/9835

とはいえ、マイルスの音楽を解説してもらうだけでは面白くないし、今、2016年にそれだけやってもあまり意味がない。せっかく類家さんに話を聞けるんだったら、マイルスを起点に《トランペットにエフェクトをかけてジャズをやること》ということを深く掘り下げたいなと思った。エフェクトをかけるということはどういうことなのか、エフェクトをかけるとき、演奏者は何を考えていて、演奏はどう変わるのか。そんな話の中から、《類家心平とはどんなトランぺッターか》ということが浮き上がってきたらいいなとも思った。

今の機材でトランペットにエフェクトをかけている人がどういうことを考えて音楽をやっているかということが見えてくれば、そこから見えてくるマイルスのエフェクトを使ったプレイの本質みたいなこともあるだろう。ここではマイルス以降のトランペットとエフェクトの関係を広く押さえた内容になっていて、完全にJazz The New Chapterとも繋がっている。これはエフェクトを研究し続けている類家さんだからこそ語ることができたものだと思う。トランぺッターだからこそ見えてくる海外の同時代のトランぺッターの話も多い。

結果的にめちゃくちゃおもろい記事になった。類家さんにしか語れないトランペット論でもある。一時間、ひたすらマイルスとエフェクトとトランペットについて質問攻めにした甲斐があったというもの。というか、類家さん、非常にめんどくさい取材を快く引き受けていただいて、ありがとうございました。

このインタビューを読んでから、類家心平さんの新作『UNDA』を聴くと、これまでと違った聴き方ができるかもしれない。是非、彼のトランペットの演奏のディテールにも焦点を当てて聴いてもらえたらと思う。

さらに言えば、これまでに彼が参加してきた様々な作品を聴いてみてほしい。そこからマイルスを聴くヒントもたくさん見つかるはず。坪口昌恭さんとのこれの動画とかおススメ。エフェクト使いまくり。インタビュー読んでからだとこの演奏も見え方が変わります。面白い。

『MILES : REIMAGINED 2010年代のマイルス・デイヴィス・ガイド』https://www.shinko-music.co.jp/item/pid1643178/






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