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味噌を舐める

以前、大正生まれの義父が、

「夏の炎天下での作業のときは、味噌を舐めながらやったもんや」

と話していたことを、ふと思い出す。

今は熱中症予防に「塩を舐める」だけど、昔は「味噌」だったみたい。

アルミの弁当箱の中身は、ごはんと小さな焼めざし、そして味噌を少し。味噌をおかずにしてごはんを食べたそうな…。そして、作業の時の塩分補給に、残した味噌を舐めていたそう。

義父は幼い頃に母を亡くし、子供時代から貧乏でとても苦労をした人だ。この味噌の話は、昭和初期から戦時中の話だったと思う。

昔は、味噌は各家庭で手作りされていたから、家にある味噌をご飯の上に少しのっけて、それを持っていったんだろう。

昔の味噌は、今現在、スーパーで売っているような味噌とは違い、塩気が強く効いたしょっぱい味噌。

それを舐めて、水を飲んで、汗だくになって野良仕事をしたそうな…。

今年は酷暑で暑い夏。

義父が少年だったころは味噌だったけど、今を生きる私は塩を舐めている。

今日は、義母がデイサービスに行っている間に、母屋の掃除をした。

汗だくになって一部屋ずつ掃除をして、シーツやタオルケットも洗濯して外に干し、くたくたになったところで塩を舐めた。

私が舐めている塩は、沖縄の塩。

沖縄では塩のことを「マース」と言うらしい。ミネラルたっぷりの旨味のある塩だ。

一つまみの塩を舌に乗せて、じっくり味わって麦茶を飲む。

麦茶の香ばしさと塩の旨味が溶け合って、身体を潤していく。

塩が美味しく感じるってことは、私の身体はかなり疲れているのかもしれない。

酷暑だから、身体も参るよねぇ・・・。

◇◇

塩を舐めながら、先ほどの義父の話を思い出した。

今頃、義父はお浄土で「そっち(下界)は暑そうやなぁ」と言って笑い、私の様子を見下ろしているかもしれない。

ねぇねぇ、そちらの世界(浄土)にも夏はあるの?

そちらの夏は、こっち(下界)と比べて暑いの?涼しいの?

爺ちゃん(義父)が出てきてくれたら、ちょっと聞いてみよう。

…なんてことをふと思いながら、私はグイッと麦茶を飲み干した。


真夏の強い日差しが、ジリジリと窓辺を照り付けていた。


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