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【創作小説】峠の庵 恩返しー番外編②ー

今までのお話は、このマガジンに収録されています⬇

夏まつり……盆のまつりも兼ねている、その村のまつりでは、ご先祖さまのご霊体もごっそりとやってくる。

霊媒たぬきの親子のところでは、その前から(1年中ですが……)峠の庵の親父さんと女将さんの霊がうろうろしていました。

が、たぬきの親子と離れ離れになりたくないばかりにその親父さんと女将さんはいるので、それは、まったく無害なのでした。

親父さんと女将さんの霊は少なからずたぬきの親子に執着を遺しています。

霊界からは、シャナリシャナリと、村の人たちのご先祖さまが、ナスやキュウリの馬に乗ってやってきます。

辺りには、人魂がフラフラ……。

たぬきの親子と、親父さんと女将さんの霊、そして、それを囲む心温かな村人たちの住む、心豊かな山の中腹の村へとやってきます。

シャナリシャナリ……。
人魂フラフラ……。

あと、2、3日で、着きますかね……?

峠の庵では、女将さんの霊の憑いたお母さんたぬきと、幽霊になった女将さんが楽しそうに話をしていました。

「あらねぇ、私の元旦那、たぬきなんですけど、化けられなかったんですよ……! 」
「え!? たぬきのお母さんの旦那さんは、化けられなかったんですか!? それでは、たぬきに生まれた甲斐が……」
「そうなんですよ! だから、たぬきのほかの連中に茶化されて茶化されて……」
「あらあらまぁまぁ……! 」
「んなもんだから、私をお嫁に貰うとき……」
「お嫁に貰うとき……」
聞いている、女将さんは、唾をごくん……。恋愛や結婚の話は美味しそうです!
「私の父に『宿題』を与えられたんです!! 」
「まぁ!やっぱり!! 」
「近くの村の、一番のべっぴんさんに化けてごらん、と言われたんですが……」
「はい、人間の? 」
「はい、人間の。うちのが、化けようと色々やっているときに……」
「はい」
「ちょうど、そのべっぴんさんが通り掛かって!! 」
「なんと!! 」
「うちの父がそれを旦那さんと間違えて見事! 合格!! 」
「おおお〜!! 」
「そんなことが、あったんですよ」
と、昔々の恋愛話に花を咲かせていました。

その様子を横目で見ていた庵の親父さんの霊は、横に人魂をチラチラと揺らしながら、
「おい、坊主……」
と、ポツリと語りかけ、
「なぁに? 爺ちゃん……」
と言う、孫のような子狸に、
「はよ、寝ろ」
と言うのでした。


            つづく

トップ画像は、ゆかさくらさんの
   「十五夜うたごえのラクガキ集」
    です✨ありがとうございます⭐🍀


©2024.3.18.山田えみこ

つづきは、こちら⬇





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