【創作小説】山田家嫁姑ソラの虹③
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みつ義弟さんの急死で、姑は、私たちに同居を頼んできた。
独居では、不安らしい。
私たちが自分の家に帰ると、夜中、トイレに起きたときに大異変が起きていた。
(ポタポタ……、ポタポタ……)
「きゃー!! 」
私は、夜中にも関わらず、大きな悲鳴をあげていた。
天井から水が滴り落ちている。
ここは、木造アパート、1階の2DKである。
夜中の11時にトイレに起きて、戸を開けると、トイレの天井から、水が滴り落ちているのである。
(ポタポタ……、ポタポタ……)
呆然と、私はそこに立ち尽くす。
これが、私たち夫婦の義理の母のところへの引越しの決定打になった。
× × ×
レンタカーを借りて、元のアパートから、姑のマンションへと往復すること数十回。
夫は、合計500km以上の道のりを運転して、私たちの荷物を運んだ。
引越し料金を節約しようとしたのだが、あまり節約にもならなかった。
レンタカー代だけでも、10万円近くかかり、ガソリン代などもあったから。
引越し屋に頼んでも、そのくらいはしただろう。
私は、パートを辞めるまでの1ヶ月間の整理勤務を終えて、夫と引越し作業に追われたが、
このアパートに引っ越してきてからの6年間で、思ったより荷物は増えていた。
そのアパートに引っ越す前は、とりあえずの1ルームで、そんなに荷物はなかったのに。
ソラを見ると、初秋の虹がかかっていた。
× × ×
姑との同居が始まった。
ある朝、起きると私たちの荷物が、勝手に開けられている。
(姑……)
そのくらいでは、怒らない神経の太い私であったが、
ある日、ちょっとおしゃんな4つのコースターが無くなって、
探してもなかなか出てこない。
夜になって、姑の枕元を見てみたら、コースターが、4つ山積みになっていた。
それを見つけて台所に持っていくと、姑は、
小さく(チッ)と、舌打ちをした。
私は、とりあえず知らん振りをした。
つづく
©2024.4.4.山田えみこ
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