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■選ばれない黄色いローター


■売れるものと残るもの


ローターの色違いを売ってみると、
ダントツで黄色が残る。

ピンクにはかなわない。

黄色が売れない理由は一つではないと思う。
でも、とにかく売れ残る。

黄色といえば、
戦隊ものでもひょうきん者なキャラだし、
「いい色だけど本命じゃないかも」みたいな、いい人止まり感はある。

可愛いとか爽やかとか、
ピタリとくるキャッチコピーがないとダメなのか?

そうなると、私の人生ずっと黄色のローターと同じだ。

なかなか選ばれない。

特に恋愛や性行為に興味を持ち始めた頃。
私は音楽やバンドが好きで、よくライブハウスやクラブに行っていた。

特に日本のガレージロックやガレージパンクが好きだった。
十八歳くらいの頃は、追っかけもしていた。

当時、黒髪おかっぱでハンチングを被り、よくラバーソウルを履いていた。

見た目からして少数派。
で、基本一人行動。

中2のときに初めて観た清志郎も、今はなきメスカリンドライブのライブも一人で行った。
私の中で、ロックスターはアイドル。

目があったその一瞬で、なんとか自分の熱い愛を伝えられれば、
と重い奥二重の目力を懸命に鍛えていた。


■売れても残っても

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専門学校時代は、寮で出会った仲良しの友達と、東京にライブを観に行くようになった。
その頃くらいから、あわよくば、みたいなことを考え始めた。

「あわよくば、メンバーとヤりたい」

バンドやアイドルに熱中しているとき、一度は考えるだろう。
転んだ目の前に憧れのアイドルがいて「大丈夫?今からウチで手当てしようか?」的な夢物語を。

それと同じ。

もしくはそれ以下。
だって、ボーカルと、とかじゃなくてメンバー誰でもいいんだもの。

とにかく、おぼこい黄色ローター娘は、ひとまず憧れのバンドメンバーの誰かしらの、
箸やズボン下の棒にひっかかるために奮闘した。

メンバーが経営するお店に昼間行ってみたり、ビールを差し入れに持っていったり、
打ち上げに無理矢理参加させてもらったり。

でも、顔を覚えてもらっても、結果は惨敗。

「君、面白いねえ」

これで終わる。

考えてみると、黄色ローターも100人に1人くらいの割合で売れてはいる。

ピンクが1ヶ月で完売するのと比べると、黄色は半年くらいかかる。
5ヶ月の差だ。

ということは、あと5倍「売れる努力」をすれば、イケる!
そう思って、ひいきのバンド数を増やしてみたが、出費がかさむだけ。

変な動きをしてみたり、自作のギャグを言ってみたりしても、
色っぽい方向にはいかない。

「面白い!」「楽しいねえ」と言われて終わる。

これだけ同じ終わり方をすれば、いも娘なりにも学習する。

方向性が違ったのだ。

その後、私の動きが変わった。

ライブが終わった後、打ち上げや路上でわちゃわちゃやっている時間に、
お持ち帰りをされる子をじっと観察してみた。

そうすると、選ばれる人の共通項がわかってきた。

・整っている
・控えめ
・謎がある

特段「美人!」というわけでもないが、整っているのだ。
全体的に。
そして、はしゃがない。
控えめなのだ、しぐさが。

さらにこれがポイント。
どこか「謎」があるのだ。

自虐やお笑いの要素は一切なく、物静かだから、もっと知りたいと思う。
これは、女の私でも同じだった。

魅力的だ。
裸が見たい。

ビールをいくら差し入れしても、
佇んでいるだけで惹かれる人にはかなわないのだ。

それ以降、私はライブの後は女友達と2人でお茶して帰った。

そして大抵電車の中で、
「私が男だったら、あんたを選ぶ」という慰めの会話を繰り広げていた。

でもさ、奇跡的に選ばれてヤレてたとしても、
電車の中では「結局ヤルだけかあ」とか言って、グチってるんだろうなあ。


一度でいいから、ヤッた後のグチ、言ってみたかったなあ。

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