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【#セミナーレポート】CXが高い企業は、なぜEX(従業員体験)を大事にするのか?~リクルートエージェントの場合~

2020年9月29日、PLAID主催のオンラインイベント「Experience Live Out」が開催されました。

イベントのテーマは、CX(顧客体験)・DX(デジタル・トランスフォーメーション/開発者体験)・EX(従業員体験)。

今回、私たちEmotion Techは、EX(従業員体験)セッションで、
クライアントである株式会社リクルートキャリアのエージェント事業本部顧客ロイヤルティ推進部のお二人をお招きし、CXとEXに対する向き合い方をたっぷりと伺いました。
モデレーターは、Emotion Tech HR事業責任者の須藤です。

リモートワークが浸透し、働き方がガラッと変わった今、従業員体験を把握し、より働きやすく、従業員とのベストな関係性を築いていくことの重要性をリクルートキャリアの具体的な事例を通してご紹介します。

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Guest Speaker
株式会社リクルートキャリア
 
エージェント事業本部 顧客ロイヤルティ推進部 マネジャー 
  安食 健太郎 さま
 エージェント事業本部 顧客ロイヤルティ推進部 リーダー
  富井 眞理 さま

パネル調査結果に衝撃を受け、顧客価値向上に向き合うスイッチが入った

須藤:
具体的に御社でのCX、EXの取り組みはどのようにはじまりましたか?

富井氏:
まず最初に取り組みはじめたのはクライアント企業の顧客体験 、CXの方からです。本腰を入れ始めたのは、今から5年程前に行ったパネル調査がきっかけでした。

当時弊社では、人材紹介の事業が急成長していた頃で、市場もサービスも拡大し続けていました。そのような忙しい時期だったこともあって、サービス品質が低下しているのではないか、という懸念がありました。

もともと、いわゆるシンプルな「お客様満足度調査」は実施していたのですが、調査結果からは課題まで見えてこず‥。
当時の担当者が有識者に色々と相談を仰いでいたところ、外部のパネルによるNPS調査をしてみたら?と助言をいただき、客観的な現在地を把握するために外部パネル調査をはじめて実施しました。

ちなみにその時の調査結果が、こちらです。

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富井氏:
このグラフの左側の棒線グラフは弊社内で実施した調査、
右の3つがパネル調査の結果です。
これを見て、衝撃を受けました。

須藤:
結構、違いがありますね。

富井氏:
はい。
弊社内で取っていた調査は、お客様がサービスを利用した直後に回答いただいたということもあり、一定の偏りがあったとはいえ、ここまで結果が違うものか…、と。

客観的に判断された結果ということで、真摯に受け止めました。
「本気で顧客価値に向き合わねば」と、思った瞬間でしたね。


CXに取り組む意味を議論。同じことを言い続け、確認し続ける。


須藤:
この調査結果を受けてからは、具体的に社内ではどのような対応をしましたか。

安食氏:
CXに取り組むことが、お客様にとってどんな価値になるのか?それは事業計画にどのように繋がるのか?経営陣でしっかりと認識を揃える為の議論を、半年続けました。
これは一体何のためにやるのか?という部分が揃わず、表面的な打ち手が先行しても、失敗すると考えたからです。

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富井氏:議論の中で、推進していく上での大方針もいくつか決めたのですが、その中に大切に「同じことを言い続ける」と「確認し続ける」ということがありました。

富井氏:
まず「同じことを言い続ける」というのは、顧客価値を上げる為にサービス全体を進化させ続けるのだということを、いついかなる時も事業本部全体へのメッセージとして絶対に曲げない、ということを指します。もともと、我々の事業本部のスローガンに「一番大切な人におすすめするサービスを目指す」というキーワードがあって、これを改めて事業本部全員全社で共通認識化していく為にも、とにかくメッセージを曲げないことが重要だと考えていました。
四半期ごとに1度開催される事業本部全員が集う社員総会の場では(KPIや業績の話から始まっていたのが通例でしたが)最初に顧客価値の現在地の確認からスタートする運用に変えました

また、「確認し続ける」ですが、例えば週次で開催される役員会議で、お客様の最新の生の声を共有し、意見交換をすることから会がはじまるようになりました。リアルな顧客の最新の状態を把握し確認し続ける、ということです。

このような活動を2年ほど続けて、徐々に社内でのCXに対する認知形成がなされていきました。

そしてちょうどそのタイミングで、
Emotion Techさんのサービスを利用しはじめました。

Emotion Techさんでは、CXとEXに特化したアンケート調査やリアルタイム分析が出来るクラウドサービスを提供されているのですが、中でもこのカスタマージャーニーマップは、有意義に社内で活用しています。

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このカスタマージャーニーマップでは、「具体的にどの体験がお客様の推奨度に影響を与えるか」という顧客体験が、マーケティングでよく使うジャーニーマップのように可視化されるため、改善のしどころが分かりやすく見えるんです。現場の組織長も納得感を持って使っています。

より良いCX向上のため、EX向上に着手。


須藤:
御社の従業員体験(EX)の取り組みについて教えてください。

安食氏:
クライアント企業の顧客価値の向上の取り組みを推進していく中で、現場の従業員みんなの声を大切にしながら取り組みを進めたいと考え、この頃から本格的に従業員体験(EX)にも 着手をはじめました。

従業員向けに実施した調査結果には「既存の業務が忙し過ぎて、新しいことが始められない」という声が沢山含まれていました。

この結果を受け、まずは、健康経営の推進、
労働時間の削減に着手することになりました。

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具体的には、みんなによりイキイキと働いてもらえるよう、四半期の労働時間の上限はもちろん、月間の労働時間にも健康経営のための上限を設けました。こうすることで、日々の労働時間の波を平準化することが出来ます。

CX-EXの取り組み浸透のための
キャッチフレーズを作成

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富井氏:
ここまでお伝えしたCXーEXの取り組みをより社内に浸透させるため、
キャッチフレーズも作りました。
顧客価値の向上と働き方改革の推進ということで、
「GO FAR GO HAPPY~遠くに行くなら楽しくいこう、共に~」
としました。

安食氏:
GO FARは、「サービス品質を上げ、より遠いところに至る」、GO HAPPY は、「従業員がイキイキと働きながら」ということで、どちらか一つということではなくその両方が大事なんだ、という想いが込められています。

ちなみにこの真ん中にいるキャラクターはFARとHAPPYを掛け合わせて
「FAPPY(ファッピー)」と呼ばれています(笑)

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須藤:
こういう親しみやすいキャラクターの存在は、
とても波及効果が高くて良いですよね。

富井氏:
はい(笑)CXやEXに関する資料にも、
このファッピーちゃんがよく使われるようになりましたね(笑)

従業員調査結果を受け
仮想大学「AGENT COLLEGE」を始動


須藤:
その他、EX向上の取り組みは、どのようなことをしてきましたか?

安食氏:
EX調査の結果、「成長実感の有無」がEX向上に特に重要であることが分かりました。業務以外でも、学びの機会が欲しい。学ぶだけではなく、自分も講師として何か有益な情報を皆に発信したい。そんな声がとても多かったのです。

これがきっかけで、事業本部の中に仮想大学「AGENT COLLEGE」を立ち上げました。これまで100講座ほどが立ち上がり、毎月2~3回のペースで開催されています。

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富井氏:
現在は、コロナの影響でオンライン上で実施していますが、オンラインの恩恵を受け、参加率がぐんとあがって、今では毎回 100-200名くらいの人が参加している状況です。

須藤:
これが従業員の方の声から生まれてくる、というのがすごいですね。

安食氏:
社内サーベイ を用いた可視化も大事なのですが、何より大事なのは、
みんなからの声に対して、どのようなメッセージをフィードバック出来るのか、ということまで最初に考えて設計することだと思います。
聞くだけで終わってしまうと、逆にエンゲージメントを下げかねないということもあります。

須藤:
おっしゃる通りですね。
受け取った声をきちんと反映する、ということは、本当に大事ですね。
声をとりっぱなしでは、逆に不満がたまるのは、注意しなくてならないポイントとも言えますね。

従業員エンゲージメントの向上で、社内で流通する情報の質が向上し、CXが向上

須藤:
EXの影響で、CXに良い効果があったというような話はありますか?

富井氏:
はい、あります。
従業員エンゲージメントがどんどん良い状態になっていくと、社内で交わされる情報の質が明らかに上がると思います。顧客価値に対する感度があがった、という感じでしょうか。

安食氏:
実際、リクルートエージェントのクライアント企業のNPSは、直近4年くらい右肩上がりでして、5年前に衝撃を受けたあのパネル調査も、取り組みから3年程でかなり改善しました。改善数値にも現れてきていますね。
これはまさに、EXとの相乗効果の結果かな、と実感しています。

役員会議で「よりよい従業員体験」について毎週議論

須藤:
その他、何か従業員体験向上のための、
お取組みをされていらっしゃることはありますか?

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安食氏:
社内サーベイで取得しているeNPSと向き合い施策を考える、ということは大事ですが「よりよい従業員体験とは何か」ということについて議論を続ける時間も大切にしています。
直近の3年は、働く皆さんのミッションや、キャリア、それらを踏まえてどんなメッセージができるのか?ということについても、役員会議で毎週議論をしています。


須藤:

大きなテーマも議論していらっしゃるのですね。しかも、毎週とは…!

RCA流、CXEX施策のポイント

須藤:
それでは最後に、CXとEXを回していく上で、重要なポイントを教えてください。

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安食氏:
こちらは私たちリクルートキャリアの人材観ですが、特にこの一行目にある「人は誰もがかけがえのない持ち味を持ち」という部分を大切にしながら、取り組みを進めています。
CXやEXを進めると、状態が可視化され、可視化が進むと課題が見えてきますが、見えてきた課題に対する打ち手や答えは、現場のみんなの中に既にあると考えています。
そして、誰もが個性を尊重されて、かけがえのない持ち味を軸にしながら、可視化された課題を解決することができる、だから、私達は現状を丁寧に正しく可視化することだけにこだわる、答えは皆さんの中にあるので、可視化をすれば最適化は自ずと進んでいく。
このような、人材観に沿った姿勢で取り組みを進めて行くことが大切だと考えています。

富井氏:
私たちは「ボトムアップにこだわる」ということも、大切にしています。
お客様に対して、良質なサービスを提供するのは、事業本部にいる従業員一人ひとりなので、
私たちは、従業員と共に考え悩み、うまく情報を提供していくことが大事だと考えています。

どのような環境におかれても、ベストな良い形になるのはどうしたら良いのかを環境の変化と共にアジャストし続けていくことが大事かな、と思っています。

須藤:
皆さま、貴重なお話をありがとうございました!

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