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エッセイって面白い?

人があまりにつまらない!と言ったものは、かえって気になることがある。

最近エッセイに興味を持ち始めた。
宮下奈都さんの『神さまたちが遊ぶ庭』を読んでからだ。
北海道のトムラウシという山の集落に一年間移住体験をした際の話だ。
ご本人はもちろん、登場人物たちが生き生きと描かれている。
特に子どもたちの会話がにやにやさせられる。

この本の中で、こんな話があった。
移住した話をしたところ「田舎での生活は、エッセイや小説のネタに困らないでしょう?」と言われたそうだ。著者はそれは根本的に間違っている、と言う。
「エッセイや小説のために人生があるわけではない。」
そう考えて、内心少し憤ったようだ。
人によっては仕事こそが人生、という人もいるだろう。
しかしそうではなく、仕事は人生の一部ではあるものの、仕事のために北海道に行ったわけでもない。エッセイや小説は、生きている自分の中から生まれるから、関連はしているけれど順序が違う、ということだと思う。
その人の考え方がありのまま出てくるところがエッセイの魅力だと感じた。そして、違う考え方があっても「それでいいのだ」と思えるのだ。

そもそも小説と勘違いして読み始めたのがこのエッセイなのだが、自分の価値観を揺さぶってくれた良い出会いだった。『緑の庭で寝ころんで』という、彼女の別のエッセイを読んでいる中、この文章を書いている。書きたい!とも思わせてくれるのだ。

私はエッセイが嫌いだった。
中学のころ、スレイヤーズやオーフェンというライトノベルが好きだった。当時は知らなかったが、ライトノベルの黎明期だったようだ。
それらの本を探しつつ本屋をぶらついていたら、五木寛之さんの『みみずくの宙返り』という本を見つけた。鳥も好きだった私はタイトルにひかれたのだ。さて、購入して読んでみると「なんだこれ?イメージと違った。大した事件もない。なんも面白くない!これをエッセイと言うらしい。くそつまらん!」と断じてしまった(五木寛之さんやこの本を好きな方、申し訳ありません。)。正直、内容は全く覚えていないのだけれど、エッセイはつまらないというレッテルを貼ってしまった。

私が、レッテルを貼った『みみずくの宙返り』を今また読みたいと思い始めた。
人があまりにつまらない!と言ったものはかえって気になるものだ。今の私は本当にエッセイを楽しめるのか?中学のころの私の感覚を追いかけながら試してみたい。

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