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★ねこらむ★世界で着目される猫飼育の『健康効果』

こんにちは。2匹の愛猫と暮らす中で、猫のことをより深く理解したいとねこ検定を受けることにしました。
今回は東京農業大学 農学部動物化学科 動物行動学研究室の永澤巧さんが猫検定公式ガイドブックで語られている「猫飼育の健康効果」についてまとめます。


ペットを飼育することは飼い主に多様な健康効果をもたらすことが知られています。

■健康効果の例

◎アメリカで4万2,038人を対象に行った「ペットオーナーと心血管疾患の関係に関する調査」によると、犬や猫を飼育することで高血圧症のリスクが低下することが分かっています。

◎別の同様の調査でも猫の飼育は人の代表的な死因にも挙げられる心血管疾患(心筋梗塞など)や脳卒中のリスクを低減する効果があることが明らかになっています。

◎日本では首都大学東京の星旦二氏が2017年当時、高齢者2万551人を対象に大規模な追跡調査を実施、犬や猫を飼育する人は2年後の生存率が高い、すなわち長生きであることを明らかにしました。
※「ペットをただ飼育している」場合はその健康効果は得られず、「世話をよくしている」という意識を持つほど健康になるようです。

■猫が健康にもたらす効果のメカニズム

(1)猫の存在・コミュニケーション

◎2016年にイギリスで発表された「猫との接触が人間の健康に及ぼす効果」の研究によると、猫と10分間いつも通り過ごすだけで、心拍数・血圧が低下するといったストレス低減効果が生じることが分かりました。
さらに飼育年数が長く、猫に対する愛着が高い人ほど顕著であったと言います。

◎アメリカのカレン・アレン(KarenAllen)博士の研究チームは「犬や猫の飼い主に意図的にストレスを与える(暗算をする・氷水に手を入れる)」という実験を行いました。
実験時の条件は「飼い主一人きり」「配偶者と一緒」「ペットと一緒」「配偶者と絵っとと一緒」の4つが設定されましたが、「ペットと一緒」の条件が最も血圧・心拍数の増加が小さく、そこからの回復も早かったと言います。
猫がそばにいるだけでもストレスが減少しているようです。

◎猫は有事の際にも家族の支えになります。2011年の東日本大震災の被災者216名を対象に日本獣医生命科学大学の田中亜紀氏などが行ったインタビュー調査によると、非飼育者と比べて犬や猫を飼育している人は震災から4.4年後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の数値が小さくなるという報告がありました。
20年にパンデミックを起こした新型コロナウィルス感染症に関連した研究報告でもポーランドやオランダをはじめとする25の国と地域の猫の飼い主324名を対象にしたアンケート調査で約75%の回禍答者がコロナ禍において猫がいることで心理的緊張が和らぐ利点が生じると述べています。

(2)猫と人が結んでいる特別な「社会的関係性」

◎オランダに住む猫の飼い主1,803人に行ったアンケート調査によると猫をただのペットと捉えている人は14%にとどまり、52%が家族、27%が子供、7%が友人とみなしていることがわかりました。
日本でも多くの飼い主がペットではなく人と同様の存在だと認識していると考えられます。

◎アメリカはマイアミ大学のアレン・マッコーネル(Allen R.McConnell)教授の研究チームが150名のペット飼育者に行った調査によると、「ペットは家族の一員である」と認識している飼い主程、幸福感が高いことがわかりました。また、飼い主にとって猫は「社会的支援」をもたらす存在であることも明らかになっています。

◎猫と結ぶ社会的関係性の形成にはオキシトシンという物質が関わっています。オキシトシンは9つのアミノ酸から構成されるペプチドホルモンであり、他社との社会的なかかわりを促進する役割を持っていると言われています。
アメリカのネバダ大学が行った研究によると、猫と15分間コミュニケーションを取った際、「撫でる時間」が多いほど、飼い主の唾液中オキシトシン濃度が上昇することが明らかになっています。

(3)猫がもたらす「社会的触媒作用」

人間は他社と円滑にコミュニケーションをとって、ストレスなく日常生活を送る必要があります。猫の飼育が社会生活を円滑に過ごすための社会的スキルが磨かれることにつながるようです。

◎猫をはじめとする動物は人同士の関係性を円滑にする機能「社会的触媒作用」をもたらす存在であると考えられています。
カナダで58組の夫婦を対象に実施された「ペットと飼い主との共感性に関する研究」によると、犬や猫などのペットを飼育する場合に、夫婦の関係性が良好になることが知られています。
ペットが人の「共感能力」を高めているということです。

◎18年にシカゴ大学で9~19歳の青少年432名に実施したアンケート調査によると、ペットを大切にするといったポジティブな態度を示す子供ほど、共感能力が高く非行に走る割合も低いそうです。

■高齢者の猫飼育は脳の活性化をもたらす

◎16年にアメリカの研究チームが報告した「高齢のペット所有者と非ペット所有者のうつ病、全身性炎症の違い」に関する論文によると、猫と暮らしている60歳以上の高齢者は前頭前野(認知症の一つの要因は前頭前野の衰え)の機能の一つである「実行機能」を評価するテスト(時計描画検査)の成績が良いことが分かりました。

◎日本でもメカニズムとして考えられている前頭前野の活性化について研究が行われており、麻布大学の宮地一樹特任教授などの報告によると、猫の鳴き声は中立的な音(電車の音)と比較して、人の前頭前野を強く活性化することが分かっています。
さらに20年に東京農業大学(永澤巧氏など)が29名を対象に行った実験では猫に餌をあげたり、撫でたりといった日常的なコミュニケーションを行った際にも、前頭前野を活性化することが判明しました。

■期待されるアレルギー疾患予防

アレルギー疾患の一つである喘息はペットの飼育が原因となるとネガティブな影響を報告する一方、リスクを下げるという研究もあります。

◎18年にデンマークの研究チームは喘息にかかりやすい遺伝的素因(17q21遺伝子座領域の変異体)を持つ377名の小児を12年間にわたって追跡調査した結果、生まれた時から猫と一緒に暮らしている小児は喘息を発症する割合が低いことが明らかになっています。
また、小児が寝るベッドに潜在する猫のアレルゲン(Fel d 1)が2倍になるごとに、喘息のリスクが17%減少すると推計しています。

■ゴロゴロ音のもたらすストレス低減効果

猫は人から撫でられた際や🍚を要求するときに発生するゴロゴロという音(purr)も人を癒す効果があると考えられています。

◎19年に筑波大学の研究チームが21名の参加者を対象に行った実験では、参加者の安静時の心拍数を計測した後、ストレスを与える課題を実施して心拍数を意図的に高めた後、ゴロゴロ音を聞かせると安静時よりも心拍数が低下していたそうです。

<次回>


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