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保護者同士の付き合いが始まると思うと気が重い。

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。
今回のテーマは「 #私のキライな人 」です。

息子が生まれ、10ヶ月経った。彼は順調に成長していて、幸いなことに発達や病気の心配は今のところ特にない。目下、心配なのはむしろ自分たちの方だ。近い将来、保護者同士の付き合いが始まると思うと気が重い

保護者同士の付き合いが怖い

我が家は夫婦ともども人付き合いが苦手で、とくに嫌いな人と接すると日常生活に支障が出るレベルだ。これまではそういう付き合いを避ければよかったけれど、保護者同士の付き合いとなるとそうもいかない。

極端な話、「同級生の田中くんのお母さんとウマが合わないから、転校してもらえるか?」なんて頼むことになってしまう。これじゃ子どもがあまりに不憫だ。

なんとかならないものかと調べてみると、我々と似た状況の相談者に対して、和尚さんが人付き合いの極意を説く動画がすぐに見つかった。再生数は17万回。どうやら同じ悩みを抱える人は少なくないようだ。

相談者は、来年小学校にあがる子どもをもつ女性で、ママ友との付き合いに不安を感じているらしい。

「子どもへの影響を考えると、気の進まない付き合いもしたほうがいいのかと悩んでいます」うむ、まさにそれが悩みどころなのだ。

すると和尚さんは、「人付き合いのコツは“和して同ぜず”ですよ」と答える。

人付き合いのコツは「和して同ぜず」

和して同ぜずとは、孔子が説いた教えのひとつで、

「立派な人は他人と仲良くするけど安易に同調はせず、つまらない人は安易に同調するけど仲良くはしない」

という話である。

たとえば立派な人は、飲み会に誘われたらとりあえず参加してみる。これが仲よくする(和する)ということ。しかし人の噂話や陰口など、自分の気分が悪くなるような話に乗っかったりはしない。これが安易に同調しない(同ぜず)ということ。

一方つまらない人は、そういう場に参加せず(あるいは参加しても本音では語らず)、狭いコミュニティで人の噂話や陰口ばかり話し合っている。

うーん。こうして聞くと、そりゃあ「和して同ぜず」な人付き合いがしたいところだ。しかし、「誘われたらとりあえず参加する」というのがすでになかなか難しい。

なにせ、話をする前から「この人と仲良くしなきゃいけないの……?」と顔をしかめたくなる機会が多いのだ。

こんな人とも仲良くするの?①

たとえば、私たち家族が住まうアパートに、敷地内でタバコを吸う夫婦がいる。

今どき共用のスペースで人目もはばからずにタバコを吸うとは、ずいぶん気合が入っている。初めて目の当たりにしたときは、煙たがるよりも前に面食らってしまった。

挨拶すると、返事は思いのほか愛想よい。しかし肝心のタバコについては気にしていない様子で、悪びれず吸い続けている。ときには、そのまま歩きタバコでどこかへ行ってしまうことさえある。

やりとりをするたび、頭がクラクラして、ここは本当に日本かと疑いたくなってしまう。いっそ日本語が通じないほうが納得できたかも。

そのお宅にはたくさんの子どもがいて、一番下の子はまだベビーカーを使う年齢のようだ。つまり我が子と同級生になる可能性もゼロではない。

場合によっては、こんな人たちとも和さねばならぬのですか孔子よ。

こんな人とも仲良くするの?②

また、近所の育児用品店に買い出しに行ったときにはこんな人とも遭遇した。

私が子ども用のおもちゃを物色していると、

「勝手に離れないの!」

遠くから女性の声が聞こえた。声量こそ大きかったが、怒っているというよりも、呆れて、うんざりするような声色。声の主は、ゆったりしたアースカラーのワンピースを着た母親と思しき人。他にも何やら言っていたようだが、距離があって聞き取れない。

母親から少し離れたところに、3歳くらいの女の子がいる。足取りは危なげなく、母親の制止の声も聞かずこちらの方へずんずん歩いてくる。

おやおや大丈夫かしらと思いつつ、あまりじろじろ見るのもなんだなと、おもちゃの物色を再開したところで、

「連れてかれちゃうよ!」

という言葉がはっきりと聞こえた。

おいおいそりゃあんまりだ。本当に娘の身を案じての言葉なら何も言うまい。その日、私は男一人で育児用品店にいたので、敏感な人であれば多少警戒するだろう。昨今はおかしな事件が多いので、その心理は理解できる。

しかしその母親は、あろうことか「娘に言うことを聞かせるために適当な嘘で脅した」のだ。彼女が本当に娘の誘拐を警戒しているわけでないことは、声のトーンや行動から明らかだった。全く焦っていなかったし、「連れてかれちゃうよ」と言いながら、その視線は両手にもったままの子供服に注がれていたのである。

こんな人とも和さねばならないのかと思うと、気が滅入ってしまう。

同じないのは簡単だが、和せる自信がない

そんなわけで、同じないのは簡単だが、和せる自信が全くない。まだまだ先の心配なのに、「あ、この人無理だ」という保護者を見かけるたび、なんだかげんなりしてしまう。

こうなったら腹を決めねばなるまい。

すまん息子よ、いざとなったら転校してくれ。

文:市川円
編集:アカヨシロウ


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