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(206) 3等分

プールでの水泳を終えて、腹ぺこで朝子が家に帰ってみると、知らない      おばさんとママが、お茶を飲んでいました。

朝子があいさつをすると、

「しつけがいいのね」と、その人が感心したように言いました。

ママは朝子にクッキーの小箱を渡して言いました。
「お土産にいただいたのよ。お部屋で頂きなさい」

たっぷり入れた紅茶のマグカップも、渡してくれました。機嫌のいい証拠 です。
両手に提げて、部屋を出ようとして、朝子ははっとして言い足しました。

「おみやげ、ありがとうございます」

子ども部屋で口いっぱいにクッキーを詰めこみ、紅茶をがぶ飲みして、やっとお腹が落ち着きました。紅茶をもっとのみたいな。リビングに近づくと、あの人の声がしました。

「さっきのお菓子、分けて上げなくていいの?うちの子なんか、戦後のことだったから、砂糖まで隠してたし、おやつは必ず4人に分け与えたものよ」

するとママが誇らしそうに言いました。

「うちはいつも一人占めしないで、自分たちで3等分しますわ。それだけは取り柄なんです」


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朝子は口を押えて、そっと引き返しました。
忘れていました。空腹のために。
残りは2枚だけ。

弟たちの机の上に、一枚ずつ置いて、朝子は首をすくめました。


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