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旧朝香宮邸を読み解くA to Z(東京都庭園美術館)

東京都庭園美術館は、1933(昭和8)年に朝香宮邸として建てられ、アール・デコ様式の建物を用いた美術館。庭も広くて気持ちいい。
朝香宮家は、久邇宮朝彦親王くにのみやあさひこしんのうの第8王子鳩彦やすひこ王が1906年(明治39年)に創立された宮家。訪れるたびに屋敷の広さ、調度の豪奢さに感銘を受けていたのだが、屋敷そのものをクローズアップした今回の展覧会で、改めてその金のかかり具合に驚く。久邇宮家とか書いていても、現在の皇族とどの程度近いのかもわからない(朝彦親王は昭和天皇の皇后香淳皇后の祖父なので、朝香宮鳩彦は大正天皇の従弟になるが、外戚だよね…)。鳩彦王は、皇位継承の可能性も視野に入れ、明治天皇第8皇女允子《のぶこ》内親王と結婚されているが、朝香宮家は1947(昭和22年に皇籍離脱、その際にこの邸宅を離れて熱海に移られているらしい。朝香宮は陸軍大将までつとめ、公職追放にもなっているのだが、熱海移転後も優雅な生活を送られたようで、当時の皇族どんだけ金持ち、って話である。
軍籍にあった1923(大正12)年、留学先のフランスで交通事故に遭い、長期療養を余儀なくされ、その際に允子妃も渡仏し、夫婦でアール・デコ様式に親しんだのが、朝香宮邸設計に活かされたらっしい。

前置きが長くなった。「旧朝香宮邸を読み解くA to Z」展、2024/2/17-2024/5/17 公式サイトで日時予約券を扱っているが、当日券の扱いもあり。祝日の昼間に行ったが、そんなに鬱陶しいほどの混雑はなし。絵画等の展示ではなく部屋を見るのが目的なので、視線が分散するのと、部屋ごとに情報カードが配布されていて、それを貰ってめいめい読みながら鑑賞するので、人が集中しない。撮影自由だが、大きな画角で人の写り込まない写真を撮るのは少し難しい場合がある。

ゲストアーティストとして、伊藤公象(土を素材とした陶作品のインスタレーション)と須田悦弘(朴の木で植物を彫り、それを展示室にそっとしのばせるインスタレーション)が作品を展示していて、須田悦弘好きなので、それを見るためだけでも来たかった展覧会だった。須田作品は全点新作。宝探しのように眺める(出展リストが入り口で配布されているので答え合わせは出来る)。

通常の展覧会時は床には絨毯敷いて保護しているので見られない寄せ木細工の床なども見どころ。壁紙の美しさも普段は気づかず通り過ぎていたが、90年前から使われていて今も見事なものが何室もあった。

東京都庭園美術館遠景。左上の3階部分は、今回初公開のウィンターガーデン(温室)。




入館してすぐの階段下化粧室に早速須田作品の「椿」
階段のガラスの椿のモチーフと合わせている。
玄関扉のルネ・ラリック。


香水塔の足元のタイルの割れ目に須田作品「雑草」。
これも香水塔の足元。こっちの「雑草」はすぐ気づいたが、タイルの隙間の雑草はミュージアムショップの絵葉書見てから慌てて確認しに戻るまで気づかなかった。悔しい。
アンリ・ラパンがデザインした磁器製オブジェ「香水塔」


2階ベランダのランプ
ラジエータカバーが魚モチーフ。
階段上。入り口の洗面所と同じ椿モチーフ。
大客室のランプ。
大広間。奥はラリックのガラス扉。


大食堂。
大食堂の天井照明は果物柄のガラスカバー。
大食堂の壁と扉。


2階階段室。
妃殿下寝室
妃殿下居間。
2階ベランダ。
書斎


北の間・伊藤公象インスタレーション。「土の襞」
北の間のタイルも渋い。


姫宮居間の須田作品「ユリ」
ラジエータカバーの百合模様とコーディネート。


金庫。右下の木の葉が須田作品「葉」
朴の木を削って作った葉っぱ。


ウィンタールームの排水溝。
ウィンタールームは定員9人。下の部屋で15分位行列して待った。


館外に出て、邸の右端の車寄せの前にある円窓を見る。
ガラス越しに須田作品「野菊」


新館に行く途中の屋外に伊藤作品「ブルーパールの襞」


庭園内の日本庭園に伊藤作品「多軟面体」


各コーナーの情報カード26枚集めて、新館のおさらい部屋でまとめて冊子にした。

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