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没後50年鏑木清方展(東京国立近代美術館)

国立近代美術館で開催中の「没後50年 鏑木清方展」に行ってきた。東京展は5月8日(日)まで。その後京都巡回。日時予約制だが、当日券も出している。但し、混雑時には待たされる可能性大。わたしが行ったときには、当日券は1時間後の時間からしか入れないようだった。ゴールデンウィークは毎日21時まで開館しているので、うんと遅い時間に行くのが吉かもしれない。

それなりに人は入っているが、予約制だとそんなにぎゅうぎゅうに人は入らないので、快適に観覧(コロナ禍一番ありがたいのは美術展で押し合いへし合いにならないことかも)。鏑木清方展は東京と京都で開催で、京都は発表順時系列で並べて展示だが、東京は3テーマに分けて、イメージ毎の展示。第1章「生活を描く」特集1「東京」(東京の地名が入ったタイトルの絵を集めている)、第2章「物語を描く」(歌舞伎や文楽や樋口一葉の小説をイメージした絵)特集2「歌舞伎」、第3章「ちいさく描く」(複製しやすい小ぶりの作品を集めてあった)。日本画は傷みやすいので展示替えが多く、見られなかった作品も多数(絵葉書売り場で、これ知らない、という絵が多数)。京都展だけに出展される作品も12点位ある模様。
テーマ別展示だと、時代が飛び飛びなので、並んだ絵の画風がかなり違ったりしてちょっと違和感はあった。でも、何作もあった「娘道成寺」の清姫の絵とか、樋口一葉『たけくらべ』の美登利とかは、時代を超えてまとめて見られてよかったから、まぁこれはこれであり。
途中で、鏑木清方がラジオ番組のインタビューを受けた録音に絵画作品を重ねた映像が放映されていて、自分が描きたいと思ったものしか描かない。戦時中でも美人画を描いていた、という話をしていて、確かに、時流を感じさせる作品は殆どなかった。そもそも、女性をテーマにした絵が圧倒的に多く(しかし三遊亭円朝の肖像画は重要文化財だったよ)(泉鏡花と鏑木清方本人を描いた絵とかもあった)、病弱で遠出すら殆どしなかった清方が、兵隊とか戦争の絵を描くというのはあまり現実的ではないかもしれない。
上流階級をモデルにした絵もあったが(歌舞伎座の桟敷席とか)、市井の人を描いた絵も多く、生活感あふれる小道具を盛り込んだ絵が多かったが、その中で戦争とか権威とかそういうものを象徴する絵は全くなかった。着物の絵柄の美しさが印象的で、ちりめんとか絞り染めとか、細かい模様が入った着物をじっと見る。地味な色合いの着物に、鮮やかな襦袢が取り合わせてあったり。また、最近の画家なので(没後50年だけどね)、どの絵も表装が実に美しい。絵を眺めた後は、周囲の裂を堪能した。逆に、雛人形と五月人形(桃太郎だった)の絵は、描表装(通常であれば裂で表装される部分が絵になっている、江戸琳派でよく使われていた表装)になっていて、それも絵のテーマに合った美しい装になっていて、眼福であった。
鎌倉に鏑木清方の美術館があるらしいので、行ってみたいな、と思った。

常設展も一通り見て回る。展示替えがあっても、名作揃いなので、いつ見に行っても愉しい。部屋ごとに色々テーマを決めて展示してあって、国立近代美術館開館当時のコレクション、とか、子どもをテーマにした作品、とか、花見をテーマにした部屋とか、どれも面白かった。常設展は、一部の撮影禁止作品以外は撮影自由なので、多くの人が写真を撮っていた。
そんな中に、伊東深水が描いた鏑木清方像もあった。

伊東深水『清方先生寿像』1951年

歌舞伎や文楽の知識があったらもっと楽しめたかも、と思ったり。でも、この時代の美人画をもっと見てみたいなと思った。伊東深水もだし、上村松園とか。
必ずしも綺麗な人ばかりではないが、しゅっとした人たちが美しい服を身にまとい、生活していることを感じられる鏑木清方の絵に心を洗われた思い。

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