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毎日読書メモ(107)『銃・病原菌・鉄』(ジャレド・ダイアモンド)

ジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎 』(上下・倉骨彰訳、草思社文庫)を読んだ時に、本の内容を人に説明した控えが出てきた。

文明の進化の差は、人種の優劣に基づくものではなく、その人種が住んだ地球上の場所の地理的要因、植生、生育する動物等の環境的要因に基づくものである、という仮定に基づき、人類発生からの文明の進展、他大陸への進出・支配等を論じていて、自分が既に知っていると思っていたことにについて、新たな知見を得られた気がした。

ざっくりした解釈になるが、現在の世界で、ユーラシア発祥の人種が支配的になっているのは、ユーラシアの人間(白人)が人種的に優秀だったからではなく、そこに育っていた植物の種類(栄養価が高く、大量生産しやすいか)や棲息していた動物(家畜化がしやすいかしにくいか)、そして、出来上がった農業・畜産のノウハウが伝播しやすい地理的要因(アメリカやアフリカは縦長で、少しの移動でも気候帯が変わっていくので、同じ条件の食糧生産のノウハウが伝授されにくい)によるところが大きい。結果として、定住し、生産性をあげやすかった地域の人間が、集団生活→首長制にもとづく文明を構築していき、農業生産や畜産の中で、疫病への免疫もついていき、新大陸に進出した際に、彼らがもっていった病原菌で、免疫のない先住民が
大量死して、進出した住民がさらに支配性をあげていく、という構造の連続が、現代社会の構図を作った、というのが、この本の骨子。
中国は大変早い時期に中央集権化が進み、そのため結果として、一人の為政者の判断で文明の進展が止められてしまう事例がままあり、結果として、小国が割拠して、よりよいものを取り入れた地域が進展すると他の地域もそれに追随したヨーロッパの方が世界支配に近づいて行った、という見地も興味深かった。

直截的に未来への洞察的なものは書かれていないが、世界が平準化に進んでいると考えられるのであれば、今後の世界のリーダーがどこから生まれるかはわからない、ということにはなるのかな、という読後感を持った。(2013年12月)

ジャレド・ダイアモンド/ジェイムズ・A・ロビンソン他/小坂恵理『歴史は実験できるのか――自然実験が解き明かす人類史』の感想は、この中にあります。



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