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完全復刻 超展開バレエマンガ まりもの星

谷ゆき子って知ってますか? 昭和40年代に活躍していた漫画家ですが、当時単行本とかは出ておらず、雑誌連載で一世を風靡した後は、なんだか忘れ去られていたようです。当時の漫画を立東舎という出版社で刊行したところ、話題になって、わたしが使っている生協の読書カタログでも紹介されていて、これは!!、と思って買いました。ちなみに谷さんは1999年に亡くなっていて、没後20年近くたってからのブームである。

わたしと同世代の人ならきっと誰もが知っているバレエマンガ。小学館の学習雑誌に連載されていました。
昭和42年4月に小学校に入学した人から昭和49年に小学校に入学した人までが、ストライクゾーンらしい。「ドラえもん」同様、複数の学習雑誌に同時並行で連載されていた模様。発表順に「白鳥の星」「バレエ星」「さよなら星」「かあさん星」「まりもの星」「バレリーナの星」「ママの星」「アマリリスの星」とあって、立東舎ではまず『バレエ星』を刊行し、それなりに話題になったので、この『まりもの星』が今回単行本になったらしい。ってか、当時大ブームだったのに、これが発表から40年以上を経ての初単行本。それも、原画が殆ど残っておらず、当時の雑誌からスキャンした画像を補正して製版しているそうだ。おかげで、コマの外の「谷ゆき子先生におたよりを出そう」というメッセージとか「何月号につづく」とか、当時の連載漫画の感じを思い出させてくれる。
そして、この「まりもの星」はまさに、わたしがリアルタイムで読んでいた話だったので、懐かしさで涙ちょちょ切れそうである。谷ゆき子のバレエマンガは、主人公の名前が必ず花の名前で(「まりもの星」ではなでしこちゃん、妹がれんげちゃん。他の作品ではすずらんちゃんとかすみれちゃんとかひまわりちゃんとか)、当時の主流だった〇子(〇に入るのは主に人名に使用される意味がわかりにくい漢字)という名前を持つ身にはおしゃれで可愛い!、と感じられたものであった。
各回の表紙には必ず「かなしいバレエまんが」とサブタイトルのように入っているのも笑える。「まりもの星」は「小学一年生」の1月号から連載が始まり(つまり小学校入学時点ではまだ連載はしていなかったのね)「小学二年生」「小学三年生」とずっと話が続き、「小学四年生」の8月号で完結している。つまり全32回! わたし、たぶん、毎月毎月は買ってもらってはいなかったと思うが、でも相当読んだと思う。記憶喪失になっていなくなってしまったお母さんと、もう少しで会えそう、というところですれ違って会えなかったり、顔を合わせても全く思い出してもらえなかったり。なのにバレエの練習をしていると、突然バレリーナの舞台衣装(大体白鳥の湖デフォルトの衣装)を着たおかあさんがどこからともなく現れるのだ。
流石超展開。帯に「すべてが想像の斜め上!」と書かれている(笑)。当時、複数の学習雑誌で並行して連載をもっていたので、各回のページ数は20ページない位だが、その間にあっと驚く展開がどんどん続く。当時、雑誌を買ってくると、真剣に飛びつくように読み、すぐに「この先はどうなるのだろう」とやきもきした気持ちが鮮やかに蘇ってきた。
トウシューズの中に画びょうが!、とか、目に星、とか、みんな、谷ゆき子の漫画だったなぁ、と懐かしく思い出す。そして今読むと大笑い。哀しい気持ちになったとき、是非ページをめくってほしい。こんな凄いものを40年以上忘れていたとは。
たぶん作者は描いていて本当に楽しかったんだろうなぁ、と思う。かなしいバレエまんがなのに、作者の幸福感が溢れている。一部残っている原画(残っていたのはたまたま編集部が別の漫画家に返却してしまって埋もれていたから、という事情も凄い。本人はじゃんじゃん処分しちゃっていたのね)を今見ると、殆ど修正の跡もなく、すごい画力だったようである。
巻末に収録されている「まぼろしの少女シリーズ」というもう少し短い作品も、それぞれに怪しくて今読むと笑える話ばかり。
時事的な話題は殆どないのだが、なでしこちゃんに意地悪するおばさん(娘がなでしこちゃんに役を取られそうになったので、お金の力でなでしこちゃんとその先生を追いおとした)が、別のバレエスタジオに移ったなでしこちゃんたちの動静を探るために教室の別の生徒をなでしこちゃんのスタジオに潜入させようとするときに、スパイにさせられる、と驚く少女に、おばさんが「スパイだなんて、人ぎきの悪い。情報収集ざんすよ。ルバングの小野田さんのようにね」というセリフを吐くのだが、ここだけめっちゃ時代感が。

何しろ雑誌からそのまま製版しているので、読者のおたよりとかもそのまま出ていて、当時の少女たちの興奮が伝わってくる。また、埋め草ページに、サンスター文具から出ていた谷ゆき子図柄の筆箱や鉛筆けずりの写真が紹介されていたり、谷ゆき子先生の「スタイル画入門」というページが採録されていたり、てんこ盛り。

北海道のまりもの生息する沼の近くに住んでいたおかあさん、沼のほとりにトウシューズを脱ぎ捨て行方不明になって、それからどうやって生きていたの? 記憶喪失なのに、いつもきちんとした身なりをして、一体どこでどうやって生活していたの? なでしこちゃんとれんげちゃんが2人だけでモーターボートに乗って(小学生にモーターボート運転させんなよ!)渦に巻き込まれたとき、なんでバレリーナ姿で渦の中から現れるの?  何もかもが今読むと謎すぎ。当時の小学生たちはこれをマジで受け止めていたのか(いやわたしは受け止めてました)。
あー誰かと語り合いたいよ! 皆さん読んでみて!!

ちなみに今Wikipedia見たら、「まりもの星」の後、第三弾として「さよなら星」も刊行されてました!

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