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毎日読書メモ(203)『おばちゃんたちのいるところWhere The Wild Ladies Are』(松田青子)

今年の収穫のひとつは、松田青子という作家を知ることが出来たこと。と言いつつ、『女が死ぬ』、『スタッキング可能』に続き『おばちゃんたちのいるところWhere The Wild Ladies Are』(中公文庫)が3冊目の松田青子。
短編集。タイトルは勿論、モーリス・センダックの名作絵本『かいじゅうたちのいるところ』(現代、”Where the Wild Things Are”、神宮輝夫訳、冨山房)からとられている。表題作の主人公、茂が自分の父親から貰ったこの絵本の中の「たべちゃいたいほど すきなんだ」というセリフが気になり、心の中で繰り返すシーンが出てくる。
短編集だが、それぞれ独立した物語かと思って読み進めていたら、途中で、あれ、この人前も出てきたね、という登場人物が出てくる。時代も場所も色々なのに、何かがつながっている。表題作は絵本の本歌取りのようだが、実際は落語「反魂香」の本歌取りで、他の作品も、落語や歌舞伎の枠組みを現在に持ってきて語っている物語が多い。その多くに出てくるのが幽霊で、この本の連作は全て、生きている人と死んでいる人の境目が曖昧になっているところで出会う人々の物語なのであった。
怨念とか、思い残しとかそういうのと別に、死者が生者を思いやっている様子が心を打つ。何をやっているのかわからない、おばちゃんたちの沢山いる不思議な会社、部長のクズハさん、神出鬼没の男性汀(てい)さんが魅力的。
2021年世界幻想文学大賞短編賞受賞! ロサンジェルス・タイムス主催のレイ・ブラッドベリ賞の最終候補になったほか、独立系出版社から刊行された本に贈られるファイアークラッカー賞を受賞。『TIME』誌の2020年ベスト10にも選出されていた、世界に開かれた日本の怪談をベースとした物語群。
来年は『自分で名付ける』(集英社)から読むよ<予告先発かい。

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