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毎日読書メモ(220)『ポンペイ最後の日』(エドワード=ブルワー・リットン)

新聞に、特別展「ポンペイ」(東京国立博物館)の紹介記事が出ているのを眺めていたら、昔『ポンペイ最後の日』という小説を読んだことあったな、と思い出した。人に借りたのか図書館で読んだのか、1回しか読んでない(自分で持っている本なら複数回読んだと思うので)。ストーリーも何も覚えていないが、要するにヴェスヴィオ火山が噴火して街が急に滅亡しちゃうという結末ははっきりしている訳で。金の亡者みたいな登場人物が結構いて、色んなものの値段が作中で言及されていて、最後、火山の噴火に襲われたときに、それまでに出てきた金額とは比べものにならない位高額な金額を口にして、それだけあげるから助けてくれ、と叫んでもむなしく火山灰に飲まれた、といったシーンがあったことが記憶に残っている。
今読むとどんなもんだろうねぇ、と思い、図書館の蔵書管理システムを検索。特に子ども向けに書かれた話ではないが、日本では、児童書として刊行されたものが多いようだ。読みやすさ重視で、比較的最近刊行したものを選んで読む。エドワード=ブルワー・リットン作、岡田好惠訳、河口峰子絵『ポンペイ最後の日』(講談社青い鳥文庫)、2001年刊行。
元々の作品はもっと長いのを子ども向けの抄訳にしていて、おそらく昔読んだものも抄訳だったのだと思うが、かいつまみ方が違ったようで、自分の記憶にあった、色んなものの値段への言及が殆どなく、ちょっと印象が違った。話は結構複雑で、エジプト人の悪役の神官アーバセス、ギリシャ人の金持ちの青年グローカス、目の見えないどれいの女の子ニディアの3人がメインの登場人物だが、グローカスも、彼が恋に落ちるアイオンもあんまり魅力的なキャラでなく、アーバセスは骨の髄から悪役で、ニディアは目が見えないとは思えない機動力を発揮するが、どうも気持ちにねじ曲がったところがあって、でもキャラクター造型としては彼女が一番興味深かった。アイオンをめぐる恋のさやあて、アーバセスに陥れられて、闘技場でライオンと戦わされそうになるグローカス、この頃徐々に増えてきたキリスト教徒への、市民たちの不信感、切り口が色々ある小説。どれいには人権なんてない、というポリス的な街のなりたち、ローマ人もギリシア人もエジプト人もそれ以外の国の人も沢山入り混じっていて、裕福さと社会的な地位が必ずしも合致しない、複雑なコスモポリタンシティであったポンペイの街自体がこの小説の主役なのかもしれない。
また別バージョンも探してみるか...。
1959年に映画にもなっているが、登場人物の名前は重なっているが、相関図がかなり違っていて、筋立ても結構違う。
いずれにせよ、すべては火山灰の下に。

追記:会期末ぎりぎりに駆け込みでポンペイ展見てきた! 写真と感想はこちら

#読書 #読書感想文 #ポンペイ最後の日 #エドワード・ブルワー・リットン #ポンペイ #講談社青い鳥文庫

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