ミスチルの『未来』が鬼のように泣ける話

 
 ミスチルの『未来』という曲がある。ポカリスエットのCM曲として使われ、ベスト盤にも入っている、ミスチルの名曲だ。こんなこと言ったら世の中のガチミスチルファンからにわかだと叫ばれそうだが、私はこの曲がミスチルの中で1番心に刺さった。こんなに共感できるそして勇気が出る曲はない。
 しかし、この曲の良さを感じたのは、実は最近だったりする。というよりも、ミスチルの曲自体大人になってからとてつもなく刺さる。親の影響で中学生ぐらいからミスチルをよく聞いてたが、その時はいい歌詞だなぁぐらいで別に心には刺さらなかった。しかし、年齢を重ねるにつれ、その歌詞の意味がだんだんわかるようになってきた。『HANABI』なんて、100回ぐらい聞いてきたのに、この年になって改めて聞いたら、恐ろしく良い曲に感じた。
 この『未来』に関してもそうだ。この曲は就活時によく聞いていた。別の記事で私の就活(というよりも自分語りだか)について書いているが、就活中に聞いたら涙止まらなかった。そんな、鬼泣ける曲『未来』について、歌詞を見ながら語っていこう。



1番Aメロ
名前もない路上で   ヒッチハイクしている 
膝を抱えて待ってる

ここは荒れ果てていて 人の気配はないし
誰もここを通らないや

進入禁止だって あらゆるもの拒絶して
追い払ったのは僕だから

誰も迎えに来ない ちゃんと分かってるって
だけどもう少し待ってたい

未来/Mr.Children 

  ここでは、「名前のない路上」、つまりまだ何者にもなってない主人公の人生が行き詰まり、立ち止まってる様子を表している。しかし、誰も助けや迎えは来ない。それは自分が他人を拒絶し続けたから。自分1人でなんとかする、そう思って自分勝手に生きてきたから。だけど、そんな自分をいつか誰か助けてくれる、見つけてくれる、という微かな希望を抱いている様子が描かれてる。

 他人を拒絶しながらも、どこかで誰かに気づいてもらいたい、そんな歌詞が共感できる。私も基本自分にしか興味がなく、他人と関わるのは得意ではないが、ただ他人が気になる、孤独になるのが怖い、そんな性格の私にとってこの歌詞はとても心に響いた。
 そして、この1番Aメロが今後の歌詞の伏線になっている。詳しくは後々説明するが、この歌詞を頭に入れると、この後の歌詞がとても奥深く感じる。


1番Bメロ
生きてる理由なんてない
だけど死にたくもない
こうして今日をやり過ごしてる

未来/Mr.Children 

 この『未来』において、最も核心を突かれた歌詞だ。
私を含め、世の中の若者はこういう人が多いのではないか。普段はあまり意識していなくても、ふと自分が何のために生きているのか考えてみると、意外と明確な理由なんて浮かばないのだ。かといって死にたい理由もないという矛盾を抱えて多くの人は今日も生きているのだ。
 

1番サビ
生まれたての僕らの前にはただ 果てしない未来があって
それを信じてれば 何も恐れずにいられた
そして今僕の目の前に横たわる 先の知れた未来を
信じたくなくて 目を閉じて過ごしている 

未来/Mr.Children 

  就活中にこんなことをよく考えていた。大学時代、いやそれ以前にもっと自分の理想や憧れの未来に向かって歩んでいたらどうなっていたのだろうか。もともと、当たり前の人生を送りたくないという思いも少なからずあったわけで、例えばバンドであったり、芸人や映画監督など、人と違う人生を歩むことに憧れがあった。しかし、今こうして就活をして、普通の企業に入り、定年まで働く、そんなわかり切った、当たり前の未来が目の前にあるのが少し嫌だった。そんなとき、この歌詞がまんまそれでとても共感できた。
 この『未来』のサビでは、「自分の描いた未来」と「自分の今の現状」との対比がうまくされている。このより理想と現実のギャップが強調されている。

2番Aメロ
女が運転する 車が止まって
「乗せてあげる」と言った

僕は感謝を告げて 車のドアを開いて
助手席に座って また礼を言う

しばらく走ると僕は 硬いシートに
居心地が悪くなって

女の話に相槌打つのも嫌になって
眠ったふりした

未来/Mr.Children 

 2番になると、今度は「人生」から「恋愛」へとテーマが移る。
2番のAメロではそんな主人公ととある女性の恋愛を比喩的に描いている。
他人を拒絶していた主人公に手を差し伸べてくれた女性。彼らは恋に落ち、ともに「名前のない路上」、つまり人生を歩んでいくことになった。しかし、倦怠期というものが訪れる。関係がぎくしゃくし始め、女性の相手をするのも面倒になってしまった。そこには「愛」というものはもはやなかった。
 ここでは、恋愛における出会いから別れを上手く表している。

2番Bメロ
僕らは予定通りの
コースを走ってきた
少なくとも今日まで

未来/Mr.Children 

 「予定通りのコース」とは、恐らく、出会って、付き合い、そして結婚して、そのうち子供ができて、幸せな家庭を作るという、良い人生のスタンダードな流れのことであり、主人公たちもその流れに沿って歩んできたつもりだった。しかし、今では関係は悪化し、別れの予感を感じている。

2番サビ
出会った日の僕らの前にはただ
美しい予感があって
それを信じたまま 甘い恋をしていられた
そして今 音もたてず忍び寄る
この別れの予感を
信じたくなくて 光を探している

 ここでも、「自分の描いた未来」と「自分の今の現状」のギャップを描いている。「音もたてず忍び寄る」というところからも、主人公は気づかないうちに、別れが近づいてきてしまったのだろう。そんな状況を信じたくなくてなんとか光、解決策を模索している様子が描かれている。


ラストサビ①
生まれたての僕らの前にはただ
果てしない未来があって
それを信じてれば 何も恐れずにいられた
そして今僕の目の前に横たわる
先の知れた未来を
信じたくなくて すこしだけあがいてみる

 そして、ラストサビに入る。今まで歌詞を見ると、主人公が理想と現実のギャップに苦しんでる様子が描かれてきたが、最後のサビになると、少しだけニュアンスが変わってくる。どちらかというと、応援ソング的なニュアンスになるのである。
 ラストサビは途中までは1番サビと同じなのだが、唯一異なるところは、「先の知れた未来を信じたくなくて」目を閉じて逃げるのではなく、少しだけ抵抗しようとする、戦おうとする点である。つまり、主人公が未来を何とかして変えようとするのである。

ラストサビ②
いつかこの僕の目の前に横たわる
先の知れた未来を
変えてみせると この胸に刻みつけるよ
自分を信じたなら ほら未来が動き出す
ヒッチハイクをしてる 僕を迎えに行こう

 先ほどのサビのように、自分の未来を変えると覚悟した主人公。しかし、どうやって未来を変えるのか。それは、「自分を信じること」である。これが、この曲で一番伝えたいメッセージだと思う。今まで主人公が信じてきたものは、憧れの「未来」や美しい「予感」であった。しかし、それらはただ理想や直観であって、確実なものじゃない。それよりも、今確実に存在する自分を信じる事が大切であると伝えている。そしたら、未来が動き出すのだ。ヒッチハイクしている、立ち止まってる自分を迎えに行くのは他の誰でもない、自分自身だったのだ。
 何かに挑戦する時、未来や予感を信じて期待するのではなく、自分を信じるのだ。「自分を信じたなら未来が動き出す」という歌詞にとても勇気をもらった。


 てなわけで、ミスチルの『未来』の歌詞について、解釈を含め書いてきた。ミスチルの曲は、このようにちゃんと現実を突き付けながらも、希望を見出すような曲が多い気がする。もし機会があれば、他の曲についても書いていきたい。

ではまた

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