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詩) 都市の夜

   都市の夜

強風に吹き飛ばされ
また
氷に閉じ込められ
この荒野は乾ききっている

反射する何ものもなく
黒々とした大地が続き
わずかに
空には星が瞬く

呟きなどない―――
沈黙から
一足飛びに
叫びへと追い詰められるのだ

かつてここに
都市というものがあった、という
そこにも夜はあったのか?
それは知らない

多くの人間を擁し
繁栄を謳歌した、とか
何がその都市というものを滅ぼしたのか
それは知らない

煌々と輝くネオンのことを
聞いたことがある
そこにも星はあったのか?
それは知らない

気をつけなければ・・・
罠の臭いがする
夜の間洞窟に潜んでいる僅かな人間でも
この精巧な罠を作れるほどに、まだ手強いのだ

おお、月が出る
一気に大地が青く光る
地平線から昇る月の
目に見えるほどに速いこと!

見晴るかす彼方に大きな窪地が見える
まるで亀が砂の上に引っくり返った後のようだ
なんと美しい円形をしていることか
これも人間たちの創造物なのか

いつかまた
あの者たちの繁栄がやって来るのだろうか
やっかいなことだ
今のうちに根絶やしにできないものか

それとも、
人間の飼いならしている家畜を食らうのも
この厳しい寒さの中で餌を探し回るよりは
よほどましか・・・

          (2004.1.17)

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