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アフターそしてウィズコロナ

この度の新型コロナウイルスがわれわれに突きつけていることは何なのでしょうか。

まずは、思考と行動のスピードのスローダウンがあるでしょう。現在の世界は、特に経営学では顕著ですが、アメリカのハイスピートに合わせようとして不具合が生じているように見えます。それぞれの国にはそれぞれのペースがあります。置かれている社会や経済の状況や、積み重ねてきた歴史や育まれてきた文化はそれぞれです。それにもかかわらず、熟考無しに、ただ模倣するのは愚の骨頂です。日本企業の多くもここまで、アメリカに倣って来ました。

今まさに物理的にもロックダウン(都市封鎖)で外出が禁止され、内側を見つめる好機が訪れています。内側を見つめることのひとつの到達点として、マクロ的には「人類のあり方は、このままでいいのか」があります。ここでいう「あり方」は、社会、地域、環境、経済、仕事、健康、学業、家庭など広範囲に及びます。

その中でも、特に経済面の危機が露呈しています。これ以上ロックダウンが続き、経済活動が停止したままとなった場合、どうやって生活の糧を得ていくのだろうかという不安を抱えている人も大勢いることと思われます。私のクライアントの中で耳に入ってくる情報だけでも、ある大手製造業は、中国からの部品の輸入がストップ、調達困難なため1ヶ月製造ラインを止めています。それに伴って他の日本の部品メーカーへの発注もストップしました。部品メーカーの多くは中小企業で、売上が数ヶ月無くなることはそのまま倒産につながりかねません。また、インバウンド効果で繁盛していたホテルは休業を余儀なくされ、首都圏を中心に数十店舗を展開する飲食チェーンは、売上が90%ダウンしています。

特に対面を主とし、労働集約的なビジネスモデルは如実に危機に陥っています。ここまで全世界に及ぶ、経済活動の停止もしくは停滞は、ビジネスモデル云々に関わらず、影響の大小はあるにしても、ほとんど全ての企業へダメージを与えています。

大きく捉えると、これまでの経済活動は、「あれが欲しい、これも欲しい」という、欲を基点として、「消費」につなげ、購買者は「専有」し、満足するという図式でした。ところが、仏教思想でも示されているように、専有した「満足」は、一時だけでやがて満足の原因が「不満」へと変化していきます。これは3つある苦のうち、その不満が次の消費へと向かわせるというサイクルです。なぜ満足が不満に転化するのかといえば、それは「欲」があるからです。仏教ではこれを、喉が乾いた人が水を求めるが如くに例えて、「渇愛」といいます。好ましい対象に対する愛着であり、好ましくない対象に対する嫌悪の両方をいう、強い執着のことです。

一方で、これからの経済活動はどうでしょうか。強い執着としての欲を原動力にしたサイクルが許されるのでしょうか。ミクロに目を向け、自分という存在を深く掘り下げ、「自分を社会に還元するにはどうしたら良いのか」、「生きていることの意味や意義は何なのか」、「地球資源を次世代へ引き継ぐにはどうしたら良いのか」を問い直したとき何が生まれるのでしょうか。欲を基点とした経済活動はもう限界であることは自明の理でしょう。

例えば、CNNは、2020年3月24日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて何百万人もの米国人が在宅勤務に切り替え、学校や公共の場も閉鎖される中で、大気汚染が改善された、衛星画像が映し出している様子を報道しました。

衛星画像は3月の最初の3週に撮影されたもので、前年同時期に比べて米国上空の二酸化窒素の量が減ったことを示していた。米環境保護局によると、大気中の二酸化窒素は主に燃料を燃やすことによって発生し、自動車やトラック、バス、発電所などから排出される。ウイルス感染拡大防止のために外出禁止などの厳重な対策を打ち出したカリフォルニア州では特に、二酸化窒素の濃度が目に見えて低下していた。新型ウイルスの影響が大きいワシントン州西部のシアトル周辺でも、過去数週間の二酸化窒素の濃度は大幅に減少した。二酸化窒素の変化を表す画像は、デカルト研究所が加工した衛星画像を使ってCNNが作成した。大気汚染の改善については、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)の衛星画像でも、中国が打ち出した厳重な対策のおかげで二酸化窒素の排出量が激減したことが示されていた。米スタンフォード大学の研究者は、このおかげで5万~7万5000人が早死にリスクから救われた可能性があると指摘している。NASAの研究者は「特定の出来事のためにこれほど広い範囲で激減が見られたのは初めて」と述べ、「全米で多くの都市が、ウイルスの感染拡大を最小限に抑える対策を講じているので、驚きはない」と話している(https://www.cnn.co.jp/usa/35151251.html 2020年4月12日検索)

次なる経済活動のパラダイムはどのようになるのでしょうか。それは、欲ではなく、「慈悲」を基点として、消費ではなく「支援」し、専有ではなく「共有」し、一時の満足ではなく「知足(=もう既に満たさているという実感)」へと転換していくことが求められるでしょう。これは精神論やきれいごとをならべているのではなく、パラダイムシフトの時であるという主張です。コロナが収まったら、元に戻すということではなく、不可逆的な変化を迎えているということです。コロナウイルスは、人類へのウェイクアップコールであると捉えるべきでしょう。併せて変化の加速器でもあるでしょう。

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私自身、2月からここまでの約3ヶ月間、多くのプロジェクトが延期や中止となりました。この先の見通しが着いておらず、高台の安全地帯から見物しているわけではありません。転換には多くの痛みもあるでしょう。不慣れな状況での戸惑いもあるでしょう。しかし、新しい時代の幕開けに、人類の進化と喜びの萌芽を感じることも確かです。ビジネスモデルの転換も必要でしょう。どうやって支援と共有をマネタイズしていくのか工夫も必要でしょう。

そして、何より重要なのは、世界観であり根本思想の問い直しであり、深化であることを肝に銘じて、探究を続けたいと思っています。

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