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映画「君たちはどう生きるか」


闇夜に響き渡る空襲警報の「サイレン」。
その語源はギリシア語の「セイレーン」。
あの徐々に高まる周波数は不気味で、人々の不安を掻き立てます。

映画「君たちはどう生きるか」。
闇の中で鳴り響くこのサイレンから始まる冒頭のシーンから、私は打ちのめされてしまいました。

どこまでも拡がる不思議な世界

傑作とは、意識の中に鮮やかな残像が残る作品。消えないどころか、無限に蠢き続けるのは怪作です。
7月14日に公開が始まった映画『君たちはどう生きるか』は、前者でもあり後者でもある。
そう感じる不思議な作品です。
観終わったあとも、ずっと意識の奥底で、あの奇妙な世界がひたひたと拡がり続けています。感じるのは、毒の様に意識を蝕む暗さではなく、記憶が揺らめき伸びてゆくような、とても不思議な感覚です。

そして一つになる

映画は冒頭から最後まで、異世界へと誘う無音のセイレーンが鳴り響きます。
その見えない音色に惹かれて彷徨えば、心の中の痛みや悲しみや苦しみが、慈しみと共に優しく蘇ります。
そしてエンドロールと共に流れる主題歌「地球儀」(米津玄師)。
映画と現実、そして自分自身の気持ちを一つに結び、素敵な余韻を残しながら幕が閉じます。

映画「君たちはどう生きるか」。
そんな形容し難い感覚がいつまでも残る、神話のような異作です。
宮崎駿氏、そしてこの作品制作に携われた全ての人に、心より感謝を込めて。ありがとう。

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