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【これこそあるべき実写化の姿】実写版『十角館の殺人』

角島へいらっしゃった皆さん、ご機嫌よう。 先日ついに配信が開始された、実写版『十角館の殺人』はすでにご覧になっただろうか? 原作の知名度は高いが、再現が難しいという事情から何十年も映像化を見送られ続けてきた本作が、満を持して実写ドラマ化するという事で一時期話題になったのは記憶に新しい。 実際に私も「あそことかどう再現するつもりなんだ?」と色々と適当な予想を並べ立てたりもした。 前回記事※ネタバレ注意! 今回は、その予想も踏まえた上でつらつらと感想を綴っていこうと思う。

    • 【月光ゲーム】感想と推理供養

      有栖川有栖のデビュー作である月光ゲームを読みました。 同著者の作品は、双頭の悪魔だけ読んだことがありましたが、トリックの奇抜さや意外な真相よりも、論理的な解決に重点を置いたクイーンリスペクトの作風が個人的に好みだったので、本作も期待を込めて手に取りました。 読んだ感想としては、期待通りに読みたいものが読めたという感じです。 ただ、正直なところ双頭の悪魔には及ばないなとも思いました。(まあデビュー作と代表作の比較なので仕方がないですが) とはいえ、殺害現場周辺の些細な違

      • 第一回十角館の殺人の実写化方法予想会

        2023年末、日本を震撼させる衝撃の情報が発表された。 まさかの十角館が実写化するとのことだ。 「映像化不可能」とされてきた小説が実写映画として公開された例は実は結構ある。 ※イニシエーションラブとかハサミ男とか だが、その中でもある種の聖域と化していた十角館の殺人が満を辞して映像化とは、なんと感慨深いことだろうか。 とはいえ、このご時世に『実写化』というワードはどうしても身構えてしまう。前科が多すぎるせいだ。キャストが例のあの人とかだったらもう、ね…… キャストが

        • 鬱映画の金字塔「ウィッシュ」

          世間では100周年記念アニメーションのおまけの90分扱いでお馴染みのウィッシュを、年も明けたということで映画館で見てきた。 ネガティブな感想がやたらと目立っており、私としてはもはやクソ映画を見に行く気持ちで映画館へと足を運んだわけだが、正直そこまで悪くなかった。むしろかなり良かった。 家族を失うという辛い過去さえ糧にして、血の滲むような努力の果てに身に付けた力でたった一代で多くの民に囲まれた豊かな国を建国した王が、偶然自分と同等の力を手にした女によるクーデターをきっかけに

        【これこそあるべき実写化の姿】実写版『十角館の殺人』

          そろそろ2023年に読んだ本でランキングつけようか

          2023年も最早虫の息だ。 この時期にやることといえば、『今年の○○ランキング』以外ないだろう。 レコード大賞しかり、流行語大賞しかり、この一年を振り返っていくという意味でもランキング付けは欠かせない。 そこで私は「今年って何やったっけな」と思いを巡らせた結果、割と本読んだなと思ったので、ここに今年の名著ベスト10を発表しようと思う。 あらかじめ言っておくと、今年刊行された本はほぼ読んでない。 というのも、私がちゃんと本を読みはじめたのがまさに今年からだからだ。 そのため

          そろそろ2023年に読んだ本でランキングつけようか

          Aqoursのオススメ楽曲で打線

          異次元フェスを間近に控えor経て、初めてAqoursに触れる方もいるでしょう。(いてほしい) そこで、今回は私の独断と偏見でAqoursのオススメの曲を打線形式で紹介しますので「曲がいっぱいあるんだけど何聞けばいい?」という方は参考にしてみてください。 このような紹介の場合ランキング形式が一般的ではありますが、数字による優劣をあまりつけたくないのと、そもそも自分の中で順位が明確に定まっていないので、あえて打線という形式をとらせていただきます。 「それなら箇条書きにおすす

          Aqoursのオススメ楽曲で打線

          2023年も終わりそうなので「コズミック・ジョーカー」を評価したい

          私がミステリーを読み始めてからそろそろ一年くらいだろうか。 基本的に電車での移動中にしか本を読まないので読書量が少なく、現時点では有名作品でも未読のものが多い。クリスティは「アクロイド」と「そして誰もいなくなった」の二作しか手をつけていないし、三大奇書についても「黒死館殺人事件」は未通過だ。 そのため、識者からは「もっと他に読むべき作品があるだろう」とお叱りを受けてしまうかもしれないが、幼少期から邪道を歩む陰のサブカルオタクとしては、この作品は避けては通れないイニシエーショ

          2023年も終わりそうなので「コズミック・ジョーカー」を評価したい

          映画「都会のトム&ソーヤ」の文句が言いたい

          「実写化決定!」が原作ファンにとって死刑宣告も同然と認識されるのはもはや珍しいことではない。 その最たる原因の一つは、漫画の中の非現実的な世界を実写で再現するのが非常に困難だからだろう。 したがって、原作があまりにもファンタジーすぎなければ実写化でも大丈夫だろう、そう高を括っていた私の脳天に一撃を喰らわせたのが「都会のトム&ソーヤ」だ。 結論から言って、シンプルに面白くなかったので、上映時間の90分ちょいで代わりに原作を読むべきだ。 個人的に納得がいかなかった点として

          映画「都会のトム&ソーヤ」の文句が言いたい

          【暫定今年一番面白かった】双頭の悪魔の感想

          去年くらいに初めて十角館を読み、例の衝撃を受けて以来ミステリを読み漁るようになった。 その後に占星術で脳を揺さぶられてからは、物理・叙述を問わず、トリック重視の読者となっていた私を、ロジック重視派閥へと引き入れるきっかけとなった作品がこれだ。 本作の最大の特徴はなんと言っても、作中に合計で三回も挟まれる「読者への挑戦」である。 冷静に情報を処理し、演繹的思考を用いることで特定の人物を犯人として指摘することが可能。しかもそれが三回。3倍面白いのは自明である。 館シリーズの

          【暫定今年一番面白かった】双頭の悪魔の感想

          ドグラ・マグラとの闘い〜三度の敗北を越えて〜

          諸君は『ドグラ・マグラ』なる奇怪なタイトルの文学作品をご存知だろうか。 俗に言う日本三大奇書の一つであり、「読むと精神に異常をきたす」と言う触れ込みで、そこそこ有名な小説である。 この作品が「読むと精神に異常をきたす」とまで言われている所以は、おそらくその圧倒的な読みにくさによるものではないかと思う。 途中で挿入される論文や、ある事件に関する供述調書などが約半分を占めるうえに、文体の古さもあってとにかくコイツらが厄介だ。 挫折した読者の大半はこのボスラッシュが原因だろう。

          ドグラ・マグラとの闘い〜三度の敗北を越えて〜

          我が生誕と暦の序列

          3月15日 長い長い20世紀も着実に終わりへと近づきつつあったその日、私は誕生した。 普段の生活の中で誕生日として扱っているその日が、果たして正確に私の誕生日であるかどうかについては諸説ある。 なぜそのような事が起こりうるのか? 答えは単純明快、おおよそ7時間の時差が発生しているためである。 取り立てて秘密にしていたわけではないが、実は私の出生地は日本ではなくドイツなのだ。ただし、滞在期間中は乳幼児で学齢期に満たなかったため、帰国子女の定義からは外れる。 そういっ

          我が生誕と暦の序列